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数学月間流数学1

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数学月間SGK通信 [2018.02.06] No.205
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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私は,来週2月13~16日の京大,数理科学研究所の研究集会に参加します.4年前の研究集会のときは大雪でした.
京都でも大雪でしたが,こちらに帰ってきた夜は東京も大雪でした.今年も雪にならなければよいのですが,
なんだか悪い予感がします.この研究集会は公開ですからどなも聴講できます.
そのとき発表する内容からの抜粋を以下に転載します(省いた部分も機会があれば披露しましょう).
抜粋はしたものの,今回は長文が続きます.お読みいただけたら幸いです.
気分転換に,今年,子供たちが作る万華鏡の映像動画をリンクしておきます https://youtu.be/v9xVnCQ64Po

■数学月間流数学から教育数学への提言
私たちの数学月間は,社会が数学を知ると同時に,数学が社会を知る双方向活動であるべきだと思います.
数学研究会や同好会であれば,数学だけを論じればよいが,数学月間では数学が働きかける場に立ち数学を見ます.
抽象数学であってもそれが使われる場(対象)と連携した数学の話ならば,数学周辺の人々の共感を得ることでしょう.
数学周辺から数学をとらえる必要があるのだが,数学者はその必要性を感じていないし,
数学周辺に付随したものに気を散らすことは好まない.しかし,歴史的にも数学の発生起源は,
科学技術や社会課題にあり,その数学概念の発見にも現場の科学者たちが寄与しています.
現在でも種々分野の実験結果や法則の中に新しい数学の萌芽があるに違いありません.
教育数学においても,数学の作用する場(対象)からの数学概念の導入が望ましいと考えます.
■今年から始めた数学月間勉強会の目指すもの
(1)米国MAMは,今年から,「数学及び統計学月間」MSAM(Maths and Statistics Awareness Month)となりました.
統計学が強調されたのです.複雑系,画像識別,ビッグデータ解析,レイティングやランキングの予測などが
主要テーマとして登場するようになった背景には,圧倒的なコンピュータ利用と人工知能AIの発展があります.
現代は,衛星からスマートフォンまで大小のソースから,データがリアルタイムで集められます.
予測解析法の革新が期待でき,数学,コンピュータ・サイエンス,データ科学,統計学には実り多い時期です.
Google, Yahoo, Amazon, Facebook, Twitter等々で,私たちのさまざまな情報が蓄積され,
携帯電話も私たちの位置情報を送信しています.嫌なことですが,スノーデンの告発で明らかになったように,
個人情報,個人メールを含むあらゆる通信情報が,米国NSAにより収集(collect it all)され,
進歩したAI技術で検索や解析ができる監視社会になりました.それはともあれ,検索,解析,予測での数学の役割は重要です.
データ解析の基本は評価関数に対する最小二乗法にあり,例えば,材料中の化学状態分布図を得るには,
単成分のスペクトルを基底に1次結合を作り,最小二乗法で混合状態のスペクトルを決定(特異値分解を使う)します.
大規模行列であるがランク落ちのため不定解となる画像の推定は,至る所スパースな解という条件下で最小二乗法に持ち込み,
少ない観測点数でサンプリング定理を超越する驚くほど高解像の解が得られています.
天文学や医用画像などで適用され,MRI撮影の高速化にも寄与しています.実際,画像は大部分の領域でだらだら変化し,
急峻な変化する箇所は少ない(スパース)ので,このような圧縮センシングや画像圧縮jpgが成功しています.
離散数学はコンピュータと相性が良いわけですが,教育数学においても重要性が高いと思います.