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トランス脂肪酸の話

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数学月間SGK通信 [2015.08.04] No.075
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今回は,数学らしくないと思うかもしれません.立体異性体の話です.
これは,右手と左手のように互いに鏡像となる分子の立体構造が関係しています.
この記事は,日刊ベリタに掲載(7/30)したものです.
暑さ厳しい夏です.健康に悪い油やマーガリンの取り過ぎに注意しましょう.

米食品医薬品局(FDA)は16日,食用油などに含まれ,肥満や心臓病との関連が指摘される
トランス脂肪酸を,2018年6月までに食品添加物から全廃すると発表しました.
日本でもトランス脂肪酸の低減をうたっている企業が出始めました.
トランス脂肪酸は,マーガリンやクッキーを焼くのに使うショートニングオイルなどに
含まれているそうです.トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やすと言われています.
また,アトピーなどにも悪影響がありそうです.

脂肪酸のシス型とトランス型の分子構造について簡単にまとめておきます.
以下のサイトが参考になります:
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8

脂肪酸は,炭素原子が鎖状に並び,最後の炭素に=OとーOHが付いた分子です.
つまり,  CーCーCー・・・・ーCOOH    =は二重結合,-は一重結合  
Hを省略せずに詳細に書くと
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/08/16882908/img_0_m?1438241054

この例は,背骨となっている炭素原子の鎖は,すべて一重結合でできているので,
すべての結合手がふさがっており飽和脂肪酸と呼ばれます.
不飽和脂肪酸と言うのは,炭素原子の鎖の何ヶ所かに二重結合のあるものです.
二重結合でつながれた両側の炭素は回転できませんから(裏返しにできない)
シス型(左図)とトランス型(右図)の構造の区別ができます.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/08/16882908/img_1_m?1438241054

天然にある不飽和脂肪酸は,ほとんどシス型です(わずかな例外はあります).
不飽和脂肪酸は酸化などで劣化しやすいし,大豆等の植物油の不飽和脂肪酸は常温で液体なので,
固体状にするため水素Hを付加してを飽和脂肪酸に変えることが工場で行われます.
このときトランス型の不飽和脂肪酸も生じ混ざるそうです.

(注)よく知られた不飽和脂肪酸の例
炭素の数18個で二重結合1個はオレイン酸,二重結合2個はリノール酸,
炭素の数22個で二重結合6個はドコサヘキサエン酸(DHA).

■なぜシス型脂肪酸は安全な栄養で,トランス型脂肪酸は害があるのか
シス型,トランス型のような立体構造に差異があるものを“立体異性体”といいます.
炭素原子からは4本の結合手(二重結合ならそのうちの2つを使う)が出ていて,
それぞれの手に結合する原子が入れ替わると立体的に異なる構造になります.
右手と左手のように互いに鏡像である異性体も,この立体異性体の仲間です.例えば,
味の素はグルタミン酸ですが,立体異性体の右型と左型があり,
左型には旨みがあるが右型にはありません.これはおそらく,
人間のアミノ酸が左型であることに関係ありそうです.
不飽和脂肪酸の場合も,天然にあるものがほとんどシス型であることが
シス型が相性の良い理由と思われます.
サリドマイドでは,立体異性体の一方が副作用のない薬であるのに,他方には催奇性があった.
まるでジギルとハイドだが,このような大きな性質の違いがある理由はわからない.