ブログ

地震の発生確率

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数学月間SGK通信 [2016.07.19] No.124
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■「30年以内に震度6弱以上の地震が起こる確率は,横浜市が78%で最も高く,九州では大分市が54%」などと言われていました.
あくまでも確率ですから,いつ地震が起きるかはわかりません.熊本の方が先に大地震が起きてしまいましたね.
このような確率はどのようにして出たものでしょうか?
震度(揺れ方)6弱といっても,震源が浅い場合もありますから,
震度が大きいものが必ずしも巨大地震(マグニチュードMが大きい)とは限りません.

■地上の被害は震度(揺れの程度)に比例します.
地下の岩盤には色々な原因で歪が蓄積していき,岩盤の耐えられる歪の限界を超えると,
岩盤がポッキリ折れて地震が発生するというイメージです.
岩盤が強靭なほど溜め込める歪エネルギーの限界は大きく,限界まで溜め込んだ岩盤が地震で放出するエネルギーは大きい
(地震のエネルギーの対数がマグニチュードM).
地震は破壊現象なので,限度まで歪を蓄えた岩盤がいつどこで破壊するかを予知することは不可能だが,
破壊が始まってからの前駆現象を少しでも早く観測することは可能です.

■日本の地震の発生メカニズムを調べると,大雑把に言って2つのタイプがあります.
1.海溝型(海洋プレート沈み込み境界)
Mは大きい巨大地震で,頻度分布は数十年~100年.
2.内陸型(陸側プレート内)
震源は地下5~20kmと浅い.Mは小さいが震源が浅いので,直上の被害は大きい.頻度分布は数百年ー数十万年.
日本で起きた最近の大地震は,内陸型です.
海溝型の地震は,1923年の関東地震以降起きていません.心配されている東海地震や南海トラフ地震は海溝型です.

■地層に残る地震の記録や,古文書の記録を調べると,日本の各地で,数多くの地震が繰り返し起こっていることがわかります.
この地震発生の繰り返し周期はどうなのか,地震発生の予測のために,経過年に対する地震頻度の分布を作ります.
過去の地震記録はどのような分布と合うでしょうか.地震は破壊現象なので発生確率はランダム(その時はポアソン分布)
が予想されます.沈み込むプレートに引き込まれた陸地が時折り弾性反発するモデルは,Brown酔歩時間の分布(BPT)が予想されます.

全国を250kmのメッシュに切り,その地に影響を与える活断層起因の地震やプレート境界起因の地震で,
地表の震度が6弱以上となる地震について発生確率を算出します.
メッシュに切った各地の30年以内の震度6弱以上の地震発生確率を着色した地図が以下のサイトにあります:
http://www.j-shis.bosai.go.jp/map/

■ここで用いられる地震の発生確率の定義では,分布密度関数を積分した全面積が確率1とします.
現時点は分布密度関数内のどこかですが,現時点から分布密度関数の0となる将来時点までの積分値に対する,
現時点から30年先の時点までの積分値の比の値が30年以内にその地震が発生する確率となります.
現時点がどこか(過去の最新活動時期が不明)わからない場合には,地震の発生が「ポアソン過程」に従うとします.

地震は繰り返し発生しますが,正確な周期があるわけではありません.
今日地震が起こらなければ,明日地震が起こる確率は、今日より高くなる
今日より明日,明日より明後日と大地震がやってくる確率はどんどん高まって行きます.

(注)地震のマグニチュードMとその発生確率は,べき乗測が成り立つことが知られています.
被害の大きい巨大地震(Mの大きいもの)も,発生数は少ないですが必ず起こり,その時の被害は甚大です.
上で,議論して来たのは,時間(年)の経過に対するある大きさ(震度8弱)をもたらす地震の発生確率に関するもので,
べき乗測と混乱しないでください.

■さて,地図にある日本の活断層の話に移りましょう.
赤い線は活断層です.関東地方では,高崎-熊谷-深谷の西側を流れる荒川に沿いに走り,荒川は江戸区で東京湾に注ぐ.
断層地帯の荒川上流は長瀞など風光明美な処です.富士山側の活断層は,諏訪-甲府-富士山の西側を富士川沿いに走り,
駿河湾に至ります.活断層は繰り返し地震を起こしており注意が必要です.

ーーーーーーーーーー
7月22日から数学月間が始まります.暑い日が予想されますが皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか
お近くの数学イベントにご参加ください.
◆数学月間懇話会(第12回)
日時:7月22日,14:00~17;00(開場13:30)
場所:東大駒場キャンバス,数理科学研究科・002号教室
1.数学者って,どんな顔をしてる?
  亀井哲治郎・河野裕昭(亀書房・写真家)
2.世論調査は正しいか
  松原望(東京大学名誉教授,聖学院大学)
3.がん登録の可能性
  田渕 健(都立駒込病院・東京都がん登録室)
参加費無料.直接会場にお出で下さい.
例年,暑い最中です,教室には冷房がありますが,
近くに水飲み場や販売機はありません.水筒を持参されることをお勧めします.
17:30より構内カフェテリア(イタリアントマト)にて懇親会(めいめい払い)
問い合わせ先:sgktani@gmail.com(日本数学協会,数学月間の会)
◆三鷹ネットワーク大学 国際基督教大学寄付講座
題目:数学の夕べ 「関係性の数学 - カテゴリー(圏)論入門」
日時:7月22日(金)19:00?20:30  
https://www.kouza.mitaka-univ.org/kouza/B1651000
場所:三鷹ネットワーク大学    (東京都三鷹市下連雀3-24-3 三鷹駅前協同ビル3階)
◆ICUオープンキャンパスでのモデル授業
題目:シンメトリー ? 多項式で楽しむ
講師:清水勇二
日時:8月13日(土) 12:05?12:50 および 15:05?15:50
  (同じ講義を2回します。)
場所:国際基督教大学 理学館2F 220 教室
(東京都三鷹市大沢 3-10-2)
◆とっとりサイエンスワールド
7/31(米子),8/21(鳥取),9/11(倉吉)