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ささいな事故が雪崩をつくる--複雑系(大規模停電,原発事故)の特性

「複雑系とは何か」は,別項で取り上げるとして,大規模送電網や原発は複雑系です.
2011年7月の数学月間懇話会(第7回)では,これも取り上げました.2011年4月の米国MAMのテーマも「複雑系」でした.
何らかのささいな原因(多分,樹木が送電線に触れスパーク)により,局所的停電が起きた.→送電網の残りの部分に過剰負荷がかかり,健全だった部分の電線が切れる.→あっという間に,次々と送電網全体に停電が拡がる.
日本の原発事故も、引き金は地震・津波だったかも知れませんが,小さな事故が雪崩となり大きな事故を生むという複雑系の特性があります.引き金は,地震・津波だけではありません.組織やエージェントを含め、何処に発端があるか予測できません.
複雑系は,<バタフライ・エフェクト>が起こり得る世界です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

送電網ネットワーク中にある節点の次数(=その節点に集まる経路の数)の頻度分布図を作ったとき,節点の次数の高いものも残っているような(べき乗則分布)ネットワークですと,次数の高い節点が攻撃されると故障の雪崩につながります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●べき乗則
大規模停電,巨大地震,所得の分布,.... いろいろな頻度分布に<べき乗則分布>が見られます.正規分布,ポアソン分布,ワイブル分布など,中心値のまわりに釣鐘型の分布を作りますが,べき乗則分布では,規模の大きい事象が起こる確率もいつまでも残っています.
被害コストの期待値は,被害コストと確率の積であり,巨大地震は巨大な被害コストをもたらすので,巨大地震の確率が小さいと言って無視することは間違いです.原発事故も同様です.

(引用文献)ーーーーー
1.2011MAM、http://www.mathaware.org/mam/2011/essays/
Cascading Failures: Extreme Properties of Large Blackouts in the Electric Grid
2.数学文化(2011),16,p113-127
今年の米国MAMの話題と日本の原発事故
3.SGK通信(2011-06)数学月間懇話会報告
http://www.sugaku-bunka.org/modules/journal/journal_main.php?block_id=514&journal_id=22&page_no=2#514