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鳥の群れのシミュレーション(下)

投稿日時: 2020/05/30 システム管理者

 

 

 

 

 

 

 

◆揺動させる
もう一つの重要なモデリングパラメータはランダムジグリングである
(プログラム中にrandomJiggleと記す).
「各鳥の周囲の鳥の平均飛行方位の査定が,いつも正確になされている訳ではない」という事実を考慮に入れる.プログラムが時時刻,各鳥の方位を更新するとき,ランダムジグリング変数により与えられる範囲内のランダム角に調整される.
10°より小さいrandomJigle値なら,群れは最終的に一方向への一体運動になる.randomJiggleを180°にセットすると系は塵微粒子のブラウン運動の
シミュレーションと同じになる.
ガス分子の例のように,このモデルをさらに自然に近づけるいくつかの方法がある.このヒントのいくつかはプログラムファイルの末尾にある.

◆単純さと速度
モデル記述で重要な因子は,用いるアルゴリズムの効率である.
”アルゴリズム”の起源は,アラブの数学者al-Khowarazmiの名前であるが,
”仕事を完成させるための一連の指示”を意味するようになった.
鳥の群れの例で用いたアルゴリズムは,おそらくそれほど自然ではない.
本当の鳥は,他のすべての鳥の位置を記録し,
自身と他のすべての鳥間の斜辺距離を計算し,
正確に5m内のものを選択し,
それらの進路の算術平均の方位に向けて舵を切るなどということはしない.
これらのステップは,追従が容易で,望ましい結果が得られるので,モデルとして選ばれたのだ.これは,なかなか冗長な方法だ.
一つの鳥から他のすべての鳥までの距離を計算しなければならない.
これを順番にそれぞれの鳥について,各時間ステップごとに行う.
高速なデスクトップコンピュータでも,鳥の数が500より大きいとシミュレーションはゆっくりゆっくり進む.

そこで,モデルのデザインでは,仕事をどのように達成するかを考える必要がある.可能な限り速いアルゴリズムを使うか,系でできる限り現実の方法に近づけるか,効率は悪いが仕事が達成できる方法にするか.

プログラミングで,しばしば,特定の仕事部分のアルゴリズムを関数にするのは良いアイディアだ.こうすればプログラム内で特定の計算が必要になったときいつでも呼び出せる.
(鳥の群れのコードを見れば,MeanHeading()関数でこれがなされる
のを見るだろう.)
見守る間にシミュレーションがずっと速く走るようにしたければ,
プログラムを2つの段階に分割するとよい.
最初は,コンピュータを貪り尽くすようなすべての計算を通して行い,
各時間ごとに系の状態を別々な行列として記録する.
この計算の後は,例えば1000回の時間間隔の行列リストの束のような3次元行列に行き着く.
シミュレーションを一回通しで行えば,すべての情報が保存される.
第二のステージは時間ステップごとに順番に表示する
(今度は計算処理のために待つ必要はない).
あたかもアニメーションを見るのに,行列の本の頁をパラパラするようなものだ.我々は,鳥の群れの単純なシミュレーションに絞ってきた.
コンピュータプログラムの構造,特定の仕事をするアルゴリズムや関数の記述などのコンピュータモデリングの重要な様相が浮彫りになるからだ.
このように単純なモデルでも,複雑で大変自然に近い群れのふるまいが作れる.これはまさに,動物研究者が作ろうとし,理解しようとした鳥の群れのふるまいや,魚の群れのコンピュータモデルだ.
例えば,Iain Couzin博士が動物のふるまいを理解するために巨大グループのコンピュータモデルを使つている.彼のモデルは,この論文で見てきたものとまったく同じ原理に基づいており,同様の複雑性がみごとに出現する.
モデルはさらに複雑になっており,(我々の2次元平面を超え)
3次元で動き,冗長だが現実に近い各個体のふるまいを制御する規則の集合を持つ.
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◆Iain Couzin
イアンは,プリンストン大学とオックスフォード大学の両方に拠点を置く
動物行動の専門家だ.バッタから魚,鳥に至るまでの群れのダイナミックスのコンピュータモデルを作った.
彼の研究は,如何に動物の群れが集団としての決定をなすか驚異的な特徴を見いだすことと,アフリカの政府機関の行うバッタの致命的な群移動コントロールを手伝うことだ.最近まで,イアンは群れがどのように肉食動物の
アプローチに反応するかに集中していた.
諸君はイアンの研究の詳細を
http://www.princeton.edu/̃icouzin/で読むことができる.
下の映像は彼のモデルの一つから作ったビデオの静止画だ.
BBCのドキュメンタリシリーズ”肉食動物”で使われた.
http://plus.maths.org/issue42/features/dartnell/SimImage.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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◆重力モデル
この種類の粒子運動モデリングの拡張は,画面をよぎって伸びる効果を含めることである.このわかりやすい例は,重力である.
重力は消えそうなほどわずかかもしれないが,太陽の重力の影響は非常に長距離まで達する.processingを使い単純な重力モデルを作るには,太陽としてスクリーンの中心に小円を描き,他のすべての点から太陽までの方位と距離を計算する関数を記述する.これで,諸君のモデル化した世界にある
粒子が影響を被り速度を変じる重力を計算できる.
ランダムな位置に置かれランダムな速度を持った惑星でシミュレーションを初期化し,これらの太陽の周りの円弧運動をアニメートしよう.
次の時間ステップのこれらの位置は,現在の重力と速度で決定される.諸君はプログラムを,各惑星が後ろに軌道の軌跡を残すように変更することもできる.
(draw()関数BYの背景コマンドを取り除く.ラインの始めに//でコメントにする).
http://plus.maths.org/issue42/features/dartnell/collision.jpg

 

 

 

 

 

Fig. 何十億という星がアンテナ銀河の衝突の間に形成された.
下に示した銀河衝突モデリングで色々見いだそう.
このイメージはハッブル宇宙望遠鏡で撮影された(NASA提供).

 

 

 

 

 

太陽系の表示のために,各惑星の円軌道を生む速度を注意して解く必要がある.太陽系の圧倒的な支配力,太陽の重力だけを含めば,第一近似で正確なモデルができる.だが,巨大ガスの木星は他の惑星に注目すべき影響を与える.このような二次的な効果を含めるなら,さらに正確なモデルができる.
水星の軌道を完全に観察に合わせるには,もっと複雑なレベルが必要で,
アインシュタインの相対性理論-これはNewtonの重力の法則よりも,
ある特定の状況では正確-を含める必要がある.
繰り返すが,モデリングのコツは,無視できない詳細の最小量を巧妙に考慮することだ.月面に人を着陸させたアポロプログラムは,単純な Newtonの重力モデルで地球と月の影響以外のすべてを無視した.
すべての粒子が互いに相互作用するもっと大きな重力系ダイナミックス
のモデリングは,非常に高速なコンピュータを使い膨大な計算が必要で,
極端な”計算浪費”である.
しかし,そのような数値シミュレーションも多くの研究者にとって
極めて重要だ.例えば,下の枠中に,2人の主導的な研究者の仕事に焦点を合わせ,過去と未来の数十億年のイベントを見ることができる.
世界を打ち砕く衝突を通して月が作られ,我々自身の銀河と我々に最も近い隣人銀河が,巨大な重力で引き合い,数十億年の先に互いを分裂させられるであろう.
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◆Robin Canup
ロビンはテキサスのサウスウエスト研究所の宇宙科学者だ.
彼女は月がいかにして形成されたかに興味を持ち,
太陽系生成の初期に,若い地球がより小さい原始の惑星に衝突した時の
イベントから月が生まれたという理論をテストした.
彼女のコンピュータモデルは衝突の熱で地球全体が融け
大量の岩が宇宙に放出され,その多くは衛星の軌道でに合体し月になった.
http://www.boulder.swri.edu/̃robin/でもっと多くを見ることができる.
http://plus.maths.org/issue42/features/dartnell/Moon_impact1.jpg

 

 

 

 

 

 

 

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◆John Dubinski
ジョンはトロント大学で全銀河のダイナミックスを研究している宇宙物理学者.我々の銀河,天の川,アンドロメダと呼ばれるらせん銀河の隣人は
重力的に互いに引き合っていて,500,000km/時間でお互いに向かって落ちて行く.

ジョンはスーパーコンピュータを使用し,これらの2つの巨大な銀河が合体し始め,2つの星が互いに引き裂かれるときに星の大きな帯を引き裂き始める約30億年後の時間をモデル化した.驚くべきことに,このすべての混乱にもかかわらず個々の星の間のギャップは非常に大きいため,実際には一つも衝突はないであろう.

我々の太陽の運命は不確実である.太陽は銀河間の宇宙の暗虚に排出されるか,混合銀河の密集しているコアに飛び込むかである.諸君は,
http://www.cita.utoronto.ca/̃dubinski/tflops/で,
地球の夜空の景色も含めて,さらに色々な映画を見ることができる.
http://plus.maths.org/issue42/features/dartnell/galaxy1.jpg   

 

 

 

 

 

 

 

 

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◆著者:Lewis Dartnell

 

著者のルイスはオックスフォード,クイーンズ・カレッジで生物科学を専攻している.現在[訳注:2004年当時],生命科学と実験生物学の数学と物理センター,学際科学のロンドン大学センターの生物学的複雑系モデリングの
4年間のMRes-PhD課程にいる.彼は宇宙生物学の分野で研究している.
火星の放射線レベルのコンピュータ・モデルを用い,火星の表面付近で
生命が生きられるかの予測をし,最近ニュースで報じられた.
彼はデイリーテレグラフ/ BASFの若手科学ライター賞などを4回受賞した.
彼のポピュラーサイエンス本,宇宙での生活:初心者向けガイドは,
2007年3月に出版された.彼のウェブサイトで多くの作品を読むことができる.(訳:KT)