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壁紙模様p3m1とp31mの違い

投稿日時: 2020/06/23 システム管理者

壁紙模様の対称性は,平面群で17種類に分類できますが,平面群p3m1とp31mの対称性はとてもよく似ています.
以下の2つはともにエッシャーの作品です.比較鑑賞しましょう.

     p3m1                         p31m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どちらも3回回転対称のある繰り返し模様ですが,鏡映面の入り方に違いがあります.
白い線は鏡映面です.
P31mの方には,鏡映面が集まっていない3回対称軸がありますが
P3m1の方の3回対称軸の場所には,鏡映面が集まっています.
両者の絵から受ける微妙な印象の差は,図のモチーフもあるでしょうが,このような対称性の違いの影響もありそうです.

■正三角形の鏡室の万華鏡を作ると,p3m1の壁紙模様が観察できます.
しかしながら,p31mの壁紙模様は自然には得られません.
その理由は,p31mでは鏡室の内部の図柄が3回対称である必要があるからです.
鏡室の図柄は,ガラス屑が自然に分布して作る図柄なので,
それが3回対称であるなどという偶然はあり得ません.

  p3m1の例 万華鏡映像                  p31mの例  石英の結晶構造

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(注)平面群の記号p31m,p3m1の記法について:
p:単純格子,3:紙面に垂直な3回回転軸,
単位胞の辺(並進方向)に垂直な鏡mの有無,その他の方向の鏡mの有無,
(鏡のないときは1と記す)

 

美しい幾何学,p.100,p.110~112