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バクウこまの解析

投稿日時: 2020/08/27 システム管理者

<東京おもちゃまつり>は,東京おもちゃ美術館にて,毎年10月半ばに開催されています.今年は,新型コロナウイルスの感染拡大のために開催は困難でしょうね.

この記事の写真は,2017年10月14,15日に開催されたときのものです.
両日とも冷たい雨の降るあいにくの天気でしたが盛況でした.私は10月15日に出かけ,バクウ研究所の富川義朗先生と佐藤芳弘先生にお会いしました.

振動で廻すトントン・コマなど,いろいろな「ばくうコマ」の展示がありしたが,その原理はなかなか奥が深い.富川先生たちは,振動を回転運動に変える超音波モータの発明者です.

■私は,ミラクル・ツインという「ばくうコマ」に興味をもちました.左右の回転子の回転は互いに逆回転で,右の回転子は5回対称の模様が見え,左の回転子は3回対称の模様が見えます.

富川先生によるミラクル・ツインの解説はここにありますが,まだ,基本的仕組みの解明はされていないようです.私自身,考えるほど疑問が沸き上がりますので整理しました:

①なぜ,左右の回転子は逆回転するのか?
②なぜ,台座の回転モーメントを軸心は逆回転するのか?
③なぜ,4回対称の図形が,5回対称や3回対称に見えるのか?

納得のいかない現象ばかりですので,高速度撮影をして観察することにしました:

この観察をもとに,みんなで考えてみましょう.私が解明した仕組みについて解説しましょう.

 高速度撮影・解析1

右側の回転子の軸は回転子と接着していますが,左側の回転子の軸受け穴と軸心は接着されていません.さらに,回転子の軸受け穴径は,軸心径の1.5倍程度あり歳差運動を起こします.

回転の向きを観察すると,中央の偏芯回転子の回転方向に対して,左の回転子は逆回転,右の回転子は同方向に回転します.そして,右の回転子には5回対称の模様が見え,左の回転子には3回対称の模様が見えます.

高速度撮影・解析2

撮影の前に,左側の回転子の軸受けに細工をして,軸受けと軸心が固定されるようにしました.すると予想通り,左側の回転子の運動は右側と全く同じになりました.

■解析1の観察に基づく仕組みの考察

中央の偏心した回転子が生み出すのは単純な振動ではなく,台座全体の回転モーメントです.台座全体(台座の左右にある軸受け穴も)が公転と言われる軌道を描き平行移動します(決して,軸受け穴が回転するわけではありません.平行移動です).

左右の軸受け穴の中には,軸心が通っていますが,少しの”ガタ”があります[軸受け穴径は軸心径の1.2倍程度].軸心は公転の向きと逆向きに自転をします(これはコペルニックスの定理).軸心は歳差運動もしているはずで,

軸心の自転と歳差運動の位相との相互作用が,軸心に結合した回転子の上下波打ち運動を生み,5回対称模様が静止して見えるのではないかと推理します.

左側の回転子については,軸心と回転子は一体ではなく,回転子の軸受け穴径は軸心の1.5倍ほどあり,かなりの”ガタ”があります.軸心の歳差運動の位相は,軸心の回転と逆方向で,回転子への回転の伝達は,ちょうど皿回しと同じで,歳差運動により伝えられます.左側の回転子の軸受け穴の”ガタ”は大きいため,大きな上下波打ち運動になり,3回対称が現れるものと思います.