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1. ガーキン設計の数学

投稿日時: 2020/05/29 システム管理者

◆専門家モデリンググループ(SMG)について
Foster+パートナーズの専門家モデリンググループ(SMG)は,De KestelierとPetersがメンバーになっており,1997年に設立された.SMGの仕事は,建築家を助けて,プロジェクトのバーチャルモデルを創造することだ.
「通常,チームは概念を持って我々のもとにやって来る」と,De Kestelierは語る.「それはスケッチのようなものであったり,より発展させたものであったりする.そこで我々は,CADツールを用いるかツールを開発し,モデル作りで彼らを助ける」

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パネルを収めた数学的表面.映像提供 ΕBradyPeters

 

 

 

 

 

 

 

コンピュータの助けを借り,その物理から外観まで,建物のほぼすべての様相を設計することができる.コンピュータ モデルで,建物の周囲を風が流れる様や,建物内部の音波の反響をシミュレートできる.グラフィックプログラムで,異なった数学的な表面を探究し,それらに異なった柄のパネルをはめてみることもできる.
そして,これらのモデルから手に入る情報のすべては,近年の建築 CAD ツールで最も重要な発明であるパラメトリックモデリングに連動できる.

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30St Mary Axeの建築モデル.
映像 © Foster + Partners.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パラメトリックモデリングは,1960年代からあった.しかし,建築家がその力をフルに利用できるようになったのはつい最近である.
モデルは,諸君が建物に加えた変化により影響を受ける他の特徴を再計算せずに,建物のある特定の特徴をいじることを可能にする.
これはたいへん強力なデザインツールである.ガーキンを例にとろう.もし,建物をもっとスリムにしようと思うなら,他の何らかの特徴が犠牲になるだろう.外側ライニングカーブやダイヤモンド型の角度など再計算が必要となる.これはまったくたいへんな仕事量で,もしなされたとしても,手書きであれ再プログラミングであれ,新しいスケッチを描きなおさねばならない.
パラメトリックモデルはこれらのすべてを諸君のためにやってくれる.
変えないようにしようと決めた特性は固定されたままで,幾何学的特徴を色々変えることができる.モデルはスプレッドシートのような働きで,建物の特徴を変えることは, スプレッドシートの項目を変えるようなものだ.変化に応じ,ソフトウエアは先に決めた関係を保ちつつ,モデルを再度生成する.
丁度スプレッドシートがそのすべての項目を再計算するように,SMG によって提供されたデジタルのツールが装備され,デザインチームは短期間のうちにデザインオプションの莫大な範囲を探検することができる.チームは建物の幾何学的な特徴を変えて,変化がどのように・・・例えば気流,あるいは音響特性・・・に影響を与えるかを見ることができる.
建てるのが難しいようなどのような複雑な形でも,探究することができ,単純な形へと分解することもできる.必要な材料はどれほどで,
コストはいくらかもすばやく見積ることができる.
複雑な形がほとんど建設不可能であったためと,最良な環境へ適合させる科学を充分使いこなせなかったため,数十年前には実現不可能であった建物を建設できるようになった.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ガーキン [ガーキンとは”キュウリ”のこと]
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ガーキンの周囲の気流のモデル.映像 © Foster + Partners.

 

ガーキンは SMG が関与したプロジェクトの1つで,形がどのようにして制約を満たすように選ばれたかがわかる主要な例である.このビルは30St mary Axe の公式名称で,高さ180m(ナイアガラの滝の3倍の高さ).他の高層建築に比べて,3つの際立った特徴がある:
形は方形でなくむしろ丸い.膨らむ中央と先細るトップ.螺旋のデザインに基づいている.これらすべてが,純粋に審美的特徴となることに容易に気づく.だがそれだけでなく,これらは特定の制約を満足させている.
ガーキンサイズの建物の主要な課題は,周囲を吹き抜ける気流だ.
ベースから旋風がまきおこり,近隣地域を不快な地にする. この問題を扱うために,SMG は,建築家に乱気流の数学に基づき建物の空気力学特性を
シミュレートするコンピュータモデルを使うように助言した.
モデルは円筒状が方形のものより空気の流れへの応答が良く,旋風を減らすことを示した.中央が太く16階で最大直径に達するものが,スリムなものより風の低減の助けになるということもわかった.
強風でくちゃくちゃにならないとしても,高層ビルの隣に立つのは恐ろしい.高層ビルは諸君を小さく見せ,低い建物の輝きを奪い,日光を奪い取る.これらの効果を最小に抑えるのは,ガーキンの特有な形である.
膨らんだ中央と先細のトップは,下からトップが見えないようにする.
かくして,諸君を小さいとは感じさせないし,太陽と他の景観も底から覗き込める可能性がある.

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ガーキンの床面プラン. 映像 © Foster + Partners.

最初に決めたことは,ガーキンが可能な限り持続可能な建物であるべきということだ.そしてこれは,自然な換気(エアコンの節約のため)と自然の日光照射(光熱費の節約)を最大にする形の選択を意味する.6つの三角形のくさび形を,建物の内部に貫入するように各フロアの円形プランから切り取る.これらは光の井戸の役をする.
それらが作る光線は,自然の喚気を促進する.しかしながら,くさび形はお互いの直上には位置していない.空気力学のモデリングは,1つの床のプランが下の床のに対して数度回転していると,換気が最大になることを示した.それで,くさび形が作るシャフトは建物を昇る螺旋を作り,建物の外形により起こる空気の流れと,最適に相互作用する.くさび形のファサドの窓が自動的に開いて,新鮮な空気を建物に引き込む.慎重に選んだ幾何学の結果として,この建物は,同程度の他の建物に比べて,エネルギーが50%削減されたという.

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ガーキンの内部.三角形のくさび形は,床面プランから切り取られる.
それらは,光の井戸の役をするし,喚気も促進する.映像 © Foster + Partners.

 

◆この記事は,Marianne Freiberger(プラスマガジン編集者)による,MMP, plusマガジンVol.42の記事を,筆者が翻訳し若干編集しました.
原著エッセイを,3つに分割して(その2)に当たるものです.