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1. ロンドンシティホール設計の数学

投稿日時: 2020/05/29 システム管理者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

http://plus.maths.org/issue42/features/foster/LCH_web.jpg

  

 

テームス川にかかるロンドンシティホール.内部の巨大な螺旋階段ケースに注目.映像©Foster + Partners

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■Foster+パートナーズについて

Foster+パートナーズは,Norman Foster とシニアーパートナーグループ
が指導する国際的に著名な建築スタジオである.
ロンドンのガーキンGherkin(キュウリ)として知られる建物や,この
ロンドンシティホールや,大英博物館の大広場の屋根のようなランドマークは彼らの設計です.地上最大建設の一つワシントンDCのスミソニアン研究所の中庭,ロンドンのウエンブリースタジアム,北京国際空港第3ターミナル(龍のイメージ)なども手掛けています.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大英博物館の大広場の屋根                                     ガーキンの全貌


■Foster+パートナーズのプロジェクトがもつ共通点は:巨大

巨大は,環境に最大限の影響を与えます.巨悪のデザインとならずにすむかどうかは,微妙なバランスの技であります.
建造物は構造的に健全で,美的に快いものであるだけでなく,
設計規制,工費の制約,目的に良く合うこと,エネルギー効率の極大化
など,多角的に満たさなければなりません.デザインの過程は,複雑な最適化問題になります.この問題を解く方法が,モダーン建築術と古代エジプトの建築術とでは異なるのです:
先進的なデジタルツールが,制約の膨大な配列を分析統合し,最適解を見出します.数学は建設される構造の形,要求される物理的特徴を記述できます.数学はコンピュータの言語で,モデリングのすべての段階の基礎になっています.
■ロンドンシティホール
ロンドンシティホールは,ロンドン市長,ロンドン議会,大ロンドン当局を収容します.ガラスの使用と内部の巨大ならせん階段が,透明性と民主的プロセスへの親近感を象徴しているかのようです.
外見の強いインパクトは,この建物の奇妙な形です.

テムズ川の土手の上に置かれて,建物は川原の小石を思わせます.
その丸みも民主的な理想を思わせます.けれども,ガーキンと同じように,
形が決められたのは,みかけの形のためだけではなく,エネルギー効率を最大化するためでもありました.
これを実現する1つの方法は,建物の表面積を最小にすること(望まない熱の損失と流入を防ぐことができる)です.諸君は,体積が同じあらゆる形の中で,球形が最も表面積が小さいことを知つているでしょう.
これが,ロンドンシティホールが球に近い形をしている理由です.

建物を非対称にしたのもエネルギー効率に貢献しています:南面のオーバーハングが,ここの窓を上階の床で陰にして,夏季の冷房需要を低下させる.
ガーキンの場合と同様に,コンピュータ・モデリングで建物の中の気流が如何動くか把握でき,自然の換気が最大になるように建物内の形が選ばれました.実際,この建物は冷房を必要としないといいます.
同程度のオフィススペースのエネルギーに比べ,たつたの1/4と伝えられます.
螺旋階段さえ,単に審美的理由で選ばれたのではありません.それらの分析の一部として,ロビーの音響効果,人々の声が適切に聞こえるような建物をSMG(専門家モデリンググループ)は設計しました.
初期の音響効果は,広いホール内をエコーが跳ねるという状態でひどく,
何らかの対策が必要だったが,Foster+パートナーの過去のプロジェクトの1つが手がかりを提供したのです:
ベルリンの Reichstag は大きいホールがありますが,大きい螺旋の傾斜路があり反響が起きません.SMG はロンドンのシティホールに同様な螺旋階段のモデルを作り,Arup Acoustics会社がこの新モデルの音響効果を分析しました.諸君は,以下のアニメーションで,音が階段後ろに閉じ込められ,エコーが減じるのを見ることができます.このアイデアは最終設計に採用されました. (アニメーション © Arup Acoustics)
https://plus.maths.org/content/sites/plus.maths.org/files/Flashfix/arup.mov

 
arup.mov1.62 MB

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆この記事は,Marianne Freiberger(プラスマガジン編集者)による,MMP, plusマガジンVol.42の記事を,筆者が翻訳し若干編集しました.原著エッセイを,3つに分割して(その1)に当たるものです.