■Fourier変換
フーリエ解析のときに触れた事柄をまとめておきます:
$$F(\nu )=\displaystyle \int_{- \infty }^{+ \infty }f(t)e^{-2\pi i\nu t}dt$$
$$f(t)=\displaystyle \int_{- \infty }^{+ \infty }F(\nu )e^{2\pi i\nu t}d\nu $$
関数$$f(t)$$のフーリエ変換を$$F(ν)$$といい,$$F(ν)$$から$$f(t)$$に戻る変換をフーリエ逆変換といいます.
変数$$t,ν$$は実数です.積$$ν・t$$は無次元なので,変数$$t$$の空間と,変数$$ν$$の空間は,互いに双対な空間になります.フーリエ変換は,互いに双対な空間同士を結びつける線形写像です.フーリエ変換を用いると,同じ現象を,異なる世界(空間)で見ることができ,現象の理解に威力を発揮します.
適用例
事例1.$$t$$を時間とすると,$$ν$$は周波数ですから,フーリエ変換は,時間空間から,周波数空間への線形写像になります.
事例2.もし,$$t$$を実空間とすると,$$ν$$は逆空間になります.
■ラプラス変換
ラプラス変換はフーリエ変換とよく似ています.歴史的にはフーリエ変換より先だったのですが,フーリエ変換の紹介を先にしてしまいました.
$$ {\displaystyle F(s)=\int _{0}^{\infty }f(t)\mathrm {e} ^{-st}\mathrm {d} t} $$
$$ {\displaystyle f(t)=\lim _{p\to \infty }{\frac {1}{2\pi i } }\int _{c-ip}^{c+ip}F(s)\mathrm {e} ^{st}\,\mathrm {d} s} $$
(第一の式)$$F(s)$$を$$f(t)$$のラプラス変換といいます.関数$$f(t)$$は実数 $$t ≥ 0$$ について定義されており,積分範囲は$$0≦t<+∞$$になっています.ここで, $$s$$ は複素数(2 つの実数 $$σ, ω$$ を用いて $$s = σ + iω$$ と書ける).もし,$$s$$を純虚数$$s=iω$$とすれば,フーリエ変換になります.
(第二の式)$$c > 0$$ として,関数 $$F(s)$$ から元の関数 $$f (t)$$ を計算することを逆ラプラス変換といいます.複素平面$$s$$での積分をするので難しそうですが,複素関数論の定理が役に立ちます.複素平面内の積分経路を閉曲線となるように広げ,内部にある特異点の留数の総和を求めれば計算できます.
ラプラス変換は,$$0≦t<+∞の$$実数の空間から複素平面$$s$$への線形写像です.
なぜ,このような面倒な変換が必要なのでしょうか.それは,微分方程式を解くのに有用です.ラプラスは,1812年の著書で,微分方程式の解法に使っています.
ラプラス変換,逆変換を,次のように簡略表記することがあります.
$$ {\displaystyle F(s)={\mathcal {L } }[f(t)]} $$
$$ {\displaystyle f(t)={\mathcal {L } }^{-1}[F(s)]} $$
■ラプラス(1749-1827),フーリエ(1768-1830),ヘビサイド(1850-1925)
フーリエはラプラスより20歳若いのですが,どちらもナポレオンに仕えて,大臣や知事を任命され政治の場でも活躍したところが似ています.
ラプラス変換は,後の演算子法(ヘビサイド)や複素関数論とのつながりがありますので,ここでまとめて紹介しましょう.
ヘビサイド(英国人)は,ラプラスよりも100年後の時代の電気技師ですが,微分方程式の解法に演算子法という素晴らしく便利な方法を開発(1880-1887)しました.これは,微分方程式を代数のように簡単に解く手法です.しかし,その解法の導出過程は数学的厳密さを欠いていたため,当時の数学者から非難されました.ヘビサイドは,「数学は実験的科学であり,定義が先にくるわけではない」,「私は消化のプロセスを知らないからといって食事をしないわけではない」と言ったそうです(wikiより引用).
その後,ヘビサイドの演算子法は,ラプラス変換により理論づけがなされました.今日,私たちが,微分方程式を解くのに,ラプラス変換をして,周波数空間に移り,そこで簡単な代数計算をして,それをラプラス逆変換して,私たちの世界の時間の関数の解を得るという手順を使います.
ヘビサイドはユニークな天才です.1884年に,当時は20の式から構成されていたマクスウェル方程式を,今日知られる4つのベクトル形式の式に直したというのもとても興味深い逸話です.