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帰無仮説(ヌル仮説)

投稿日時: 2020/10/19 システム管理者

 

 

 

 

 

 

 
 
レムデシベルが新型コロナ治療に有効であるのか/ないのかの議論があります.このような疑問に終止符を打つには,十分な統計的解析が行えるデータが必要です.偏見のある仮設に立って解析を始めてはなりません.統計的解析のスタート台は,帰無仮説(ヌル仮説)が鉄則です.これは,証拠がないので因果関係はないと見なすことです[推定無罪のようなもの].ただし,統計的結論がでた後でも,一つの症例が発見されただけでひっくり返る可能性があるのが,統計的結論というものです.これは結論に影響を与える非常に多くの要因があるからです.さらに,統計的結論を待っては手遅れになるという一面もあります.
統計的研究を行う際には,ヌル仮説に立ちます.そして,科学的実験あるいは臨床データに基づき,仮説の証明または反証を目指します.
ほとんどの場合,単一の「クリーンな」現象ではないため,結果の信頼性を保証するために測定を何度も繰り返す必要があります.したがって,得られたデータの統計的解析が必要になります.結果は多くの要因に依存するので,メインの要因とマイナーな要因を分離する必要があります.

たとえば,科学者が喫煙と肺がんの関連性を見つけたい場合,肺がんを患っている(または発症しなかった)喫煙者を1人見つけるだけでは不十分です.この科学者が喫煙と肺癌の間に関係があると主張できるようになるには,かなりの量のデータを収集して分析する必要があります.この種の研究では,ヌル仮説が重要な役割を果たします.ヌル仮説は,結果(あらゆる研究の最終目標)が存在しないという仮定です.喫煙と肺がんの関係を探る限り,そのような因果関係は存在しないというのがヌル仮説です.問題は,収集されたデータがこの主張を無効にするのにどのような意味で十分であるかということです.
実際は,喫煙と肺癌発生ではヌル仮説はずっと前に卒業しました.しかし,それを実証するための十分なデータがなかった頃は,これが単なる偶然の問題ではないということを証明できませんでした.大量のデータを得たので,ランダムな結果の可能性を最小限に抑えられ,ヌル仮説を卒業することができました.

ヌル仮説を卒業するためには,大量のデータを蓄積する必要がありました.科学者は「大きなサンプル」と言うでしょう.しかし,大きくなくても「質の良いサンプル」というものもあります.たとえば,ティコ・ブラーエの長年の正確な観測は,ケプラーの惑星運動の法則の発見につながりました.これは,ヌル仮説を拒否し,ケプラーの結果が正しいことを確認するのに十分でした.

病気とその疑わしい原因との間に相関関係があると主張する論文を読むときには,ヌル仮説を除外する前に,研究者が実際に十分な症例を調べたかどうかに注意してください.新型コロナの治療薬やワクチンに関しても同様です.