私はこの問題が気に入っています.中学生向きですが,読解力と身に着いた科学的な常識があれば解けます.算数・数学というのは,数式の記述や論理の学習が目標ですが,そんな堅苦しい学習よりも必要なことは,生活や遊びで自然に身に着いた,読解力と常識が大事だと思います.
次の「アルプスを渡る」の問題では,以下の5つ(とりわけ出だしの2つ)がポイントです:
①題意を正しく理解する読解力→山頂を越えろとは言っていません.
②糸巻に糸を巻くなど生活の遊びの場で,自然に身に着いた力学感覚(力のバランスや手応え)★←特に大事
③円錐の展開図がひらめく(最短距離を引くのは展開だから)
④状況を読んで,2√2≒3と大胆に近似(融通の利かない数学バカでは行き詰る)
⑤半径2√2の円に内接する正3角形の一辺の長さは(ここだけが数学)
★物理学や円錐曲線などを知っている必要はありません.子供の頃に,積み木や水遊びや泥んこ遊びなどで,自然に体感したことのある手応えのことを,私はここで常識と言っています.
別に,物理や数学で数式を習わなくても,手応えが身についていれば,簡単に箸で豆をつかめるし,卵を握りつぶしたりはしません.職人は,器用にガラス細工をします.これは流体の粘性など面倒な計算をしても無駄なことで,その時の手応えで瞬時に反応できないと知識は役に立ちません.色々な分野で同様な身に着いた常識が大切でしょう.私は教室で知識を学ぶよりも,身についている手応えが一番大事だと思っています.
最近の子供は,ゲームやバーチャルな世界で間違った手応えを身に着けていますし,実際の泥んこの手応えや積み木のバランスや卵の殻の複雑な手ごたえを身に着けていないようです.大人になって機械設計をしても,構造の強度の感覚を持ち合わせていない.常識が身に着いていれば,直感(見た目でわかる)でわかる不安定なものを作ってしまう(計算結果がとんでもない数値になってもおかしいと思わない).
さて,この問題では,円錐の斜面に糸を巻くときの手ごたえをイメージしましょう.とがった頂点を通るように糸を巻いたり,山麓の円周に糸を巻いたりを,安定にできますか?斜面のどこかを経由するとき一番きつく糸を巻きつけられるはずですね.
■問:「アルプスを渡る」
一定の傾斜角45度の円錐形の山のふもとに人々が集まりました.山の高さは2000メートルです.グループは、山のふもとの正反対の地点に行きたいと考えています(図の点Aから点Bに移動します).AからBへの最短ルートは...
この仕事で地獄行? もう降りようよ.
解答選択肢(私は,Bを選びました.皆様はどうですか)
A. 4.5 km
B. 5 km
C. 5.5 km
D. 6 km
E. 6.5 km