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結晶の特性の対称性

投稿日時: 2020/09/12 システム管理者

■ディリクレ胞

結晶内部は周期的空間で,その繰り返しの単位を単位胞と言います.もし,単位胞を点で表現するなら,点が周期的に並んだ格子ができます.[慣用的な述語としての”単位胞”の用法は,格子点を複数含む単位胞(面心格子,体心格子など)もありますが,格子点をただ一つ含むもの”単純格子”だけを単位胞と呼ぶことにします].

1つの格子点を原点に置き,原点と隣接する格子点とを結ぶ線分の垂直2等分面を作ります.これらの垂直2等分面で囲まれた立体はディリクレ胞と呼ばれます.ディリクレ胞には,格子点がただ一つ含まれます.ディリクレ胞の形は平行多面体で,面と面をぴったり合わせて隙間なく空間の充填ができることは,ディリクレ胞の作図の仕方から明らかでしょう.ディリクレ胞の形は,その結晶格子の対称性を表現しています.結晶格子の対称性の分類(14種のブラベー格子)や7種の晶系はディリクレ胞の対称性に基づく分類です.

■結晶の物性量(スカラー,ベクトル

結晶のスカラー特性(温度・密度など)は,測定の方位によらず1つの数にで定義されます.しかし,結晶は異方性のある物質なので,単位胞が$$10^{20}$$以上も並ぶ巨視的には均一一様であると見なせるが,充分小さいとも言える程度の体積要素を点として定義できます.

例えば,誘電体結晶(焦電性pyroelectricや強誘電性ferroelectric)は,その構造に起因する自発分極(外部電場が存在しなくても分極している)を持つ.対称性$$1$$(対称性がない)の結晶中の分極ベクトル$$P$$は,3つの独立なパラメータ:$$P_{1}, P_{2}, P_{3}$$で記述される.対称性$$m$$の結晶では,生じるベクトル$$P$$は,2つの成分$$P_{1}, P_{2}$$で記述できる.鏡映対称があると,成分$$P_{3}=0$$となる訳は,平面$$m$$内にない斜めのベクトルには鏡映同価なベクトルが必ずあるので,互いに打ち消し合うからである.回転対称軸のある対称類$$2,3,4,6,mm2,3m,4mm$$の結晶では,生じるベクトル$$P$$は,1つのパラメータ$$P_{3}$$で記述される.対称心$$\bar{1}$$ がある結晶類では,ピロ焦電性はない;すなわち$$P=0$$である.

■分極ベクトル

極性ベクトルの変換則$$r'=[D|0]r=Dr$$ を思いだそう.この法則で,$$r$$ を分極ベクトル$$P$$ に置き換え:$$P_{i}'=D_{ij}P_{j}$$ と行列形式で書く.例えば群$$2$$で,$$X_{3 }$$軸回りの2回軸(180°回転)を,以前に得た行列$$D$$のあらわな形式を用い,対称操作の行列積を行うと,以下の結果を得る.
$$\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1}' \\[0mm]
P_{2}' \\[0mm]
P_{3}'
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
-1 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & -1 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 1
\end{array} \right) \left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1} \\[0mm]
P_{2} \\[0mm]
P_{3}
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
-P_{1} \\[0mm]
-P_{2} \\[0mm]
P_{3}
\end{array} \right) $$   (1)

軸対称のため,系の180°回転後,

$$\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1}' \\[0mm]
P_{2}' \\[0mm]
P_{3}'
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1} \\[0mm]
P_{2} \\[0mm]
P_{3}
\end{array} \right) $$,  すなわち,  $$\left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1}'=-P_{1}=P_{1}=0 \\[0mm]
P_{2}'=-P_{2}=P_{2}=0 \\[0mm]
P_{3}'=P_{3}=\textrm{const}
\end{array} \right. $$

さらにもう1つ,2階の極性テンソルで記述される特性例:誘電体に誘起される分極現象(図220)を考察する.結晶中の変位ベクトルDは一般には印加される電場E方向と一致しない(等方媒質では一致する).これらの極性ベクトルの成分D_{i}とE_{j} との関係は,
D_{i}=?_{ij}E_{j}  または, { { {D_{1}=?_{11}E_{1}+?_{12}E_{2}+?_{13}E_{3 } },{D_{2}=?_{21}E_{1}+?_{22}E_{2}+?_{23}E_{3 } },{D_{3}=?_{31}E_{1}+?_{32}E_{2}+?_{33}E_{3 } } }
係数?_{ij}は,誘電率テンソルの形で,べクトルD と E を結び付ける.一般に,要素の対称性?_{ij}=?_{ji} があり,9つではなく6つの独立なパラメータをもつ.これから先は,テンソル?_{ij} の行列を,簡単化して,非ゼロの独立なパラメータのみの行か列の形式に書くことにする:
{ { ?_{11},?_{12},?_{13 } },{?_{12},?_{22},?_{23 } },{?_{13},?_{23},?_{33 } } }=(?_{11},?_{12},?_{13},?_{22},?_{23},?_{33})   
?_{ij}を係数とする2次の表面
?_{11}x_{1}^{2}+?_{22}x_{2}^{2}+?_{33}x_{3}^{2}+2?_{12}x_{1}x_{2}+2?_{13}x_{1}x_{3}+2?_{23}x_{2}x_{3}=1
は,対称テンソルに一意に関係づけられている;この表面は誘電率楕円体ellipsoid,あるいは一般に,観察される効果の特性を明確にする物理特性の屈折率楕円体indicatrixである.結晶の対称群G_{k} は,この表面の形(3軸あるいは1軸性の楕円体,球)と結晶物理軸 X_{1}, X_{2}, X_{3}に対する楕円体の主軸X_{1}', X_{2}', X_{3}' の方位を決定する。群G_{k} は,実験的に決定しなければならない?_{ij} の独立な数をも決定する。これを理解するために,テンソル成分?_{ij} の変換式を
?_{i'j'}=?(D)D_{i'i}D_{j'j}?_{ij}        i', j', i, j=1,2,3             (2)
と書く,ここで,D_{i',i}=cos(X_{i}', X_{i}) ,?(D) は極性テンソルでは+1,右辺の総和は繰り返されるi,j に対し,1から3で行われる。項の和を取り,6つの未知数を求めるのに9方程式の冗長系( 3つの方程式?_{i'j'}=?_{j'i'}は,この場合は成立しない;非対称テンソルの一般の場合には,成立しない)を得る.
   読者諸君にこの手順を実行するのを残しておく。上記の等式系の行列を導くのに他の手法を使う-3次元空間の座標変換の直交行列の(自分自身との)直積(p.241).行列Dの自分自身との直積は,
D^{2}={ { D_{11},D_{12},D_{13 } },{D_{21},D_{22},D_{23 } },{D_{31},D_{32},D_{33 } } }?{ { D_{11},D_{12},D_{13 } },{D_{21},D_{22},D_{23 } },{D_{31},D_{32},D_{33 } } }={ { D_{11}(D_{ij}),D_{12}(D_{ij}),D_{13}(D_{ij})},{D_{21}(D_{ij}),D_{22}(D_{ij}),D_{23}(D_{ij})},{D_{31}(D_{ij}),D_{32}(D_{ij}),D_{33}(D_{ij}) } }
ここで,(D_{ij})は3×3行列で,例えば
D_{23}(D_{ij})={ { D_{23}(D_{11}),D_{23}(D_{12}),D_{23}(D_{13})},{D_{23}(D_{21}),D_{23}(D_{22}),D_{23}(D_{23})},{D_{23}(D_{31}),D_{23}(D_{32}),D_{23}(D_{33}) } } ,等々.
例えば,2∥X_{3} 軸まわりの180°回転の行列D(D_{11}=D_{22}=-1, D_{33}=1,残りの行列要素はゼロ)を知れば,テンソル?_{ij} の空間でのこの回転を記述するD^{2}を見出せる。すなわち,対称群G_{k}=2 に対して,変換式?_{i'j'}=?(D)D^{2}?_{ij} は以下の形となる:

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

変換則と物理量の対称性(一様連続体の近似) \\
反対称と色対称の極限群 \\
\ \\
   結晶のスカラー特性は,測定の方位によらないので,1つの数により定義される。このように,均一一様な結晶での温度・密度は,巨視的なサンプルに比べて,十分小さい体積要素で,単位胞よりは遥かに大きいような全ての"点" で同一である. \\
   誘電体結晶(焦電性\textrm{pyroelectric},強誘電性\textrm{ferroelectric}と呼ばれる)は,その構造起因の自発分極(外部電場が存在しなくても分極している)を持つ.対称性\texttt{1}の結晶中の分極ベクトル\textrm{\textsl{P } }は,3つの独立なパラメータ:$P_{1}, P_{2}, P_{3}$で記述される(図219a).対称性\textrm{\textsl{m } }の結晶では,生じるベクトル\textrm{\textsl{P } }は,2つの成分$P_{1}, P_{2}$で完全に決定される(図219b).成分$P_{3}=0$となる訳は,平面\textrm{\textsl{m } }内にない斜めのベクトルには,鏡映同価なベクトルが必ずあるからである.軸対称類$2,3,4,6,mm2,3m,4mm$の結晶では,生じるベクトル\textrm{\textsl{P } }は,1つのパラメータ$P_{3}$で記述される(図219c).$\overline{1}$ のような残りの類の結晶では,ピロ焦電性はない;すなわち$P=0$である. \\
   極性ベクトルの変換則$$r'=\left[ D|0 \right] r=Dr$$ を思いだそう(P.204参照).この法則で,$$r$$ を$$P$$ で置き換え:$$P_{i}'=D_{ij}P_{j}$$ と行列形式で書く.例えば,軸性群$$2$$における軸$$2 /\!\!/ X_{3}$$の周りの180°回転を,行列$$\textrm{\textsl{D } }$$のあらわな形式を用い,対称操作の行列積を行うと,以下の結果を得る. \\
$$\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1}' \\[0mm]
P_{2}' \\[0mm]
P_{3}'
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
-1 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & -1 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 1
\end{array} \right) \left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1} \\[0mm]
P_{2} \\[0mm]
P_{3}
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
-P_{1} \\[0mm]
-P_{2} \\[0mm]
P_{3}
\end{array} \right) $$ \\
軸対称のため,系の180°回転後, \\
$\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1}' \\[0mm]
P_{2}' \\[0mm]
P_{3}'
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1} \\[0mm]
P_{2} \\[0mm]
P_{3}
\end{array} \right) $ ,すなわち,$ \left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1}'=-P_{1}=P_{1}=0 \\[0mm]
P_{2}'=-P_{2}=P_{2}=0 \\[0mm]
P_{3}'=P_{3}=const
\end{array} \right. $ \\
\ \\
さらにもう1つ,2階の極性テンソルで記述される特性例:誘電体に誘起される分極現象(図220)を考察する.結晶中の変位ベクトル\textrm{\textsl{D } }は一般には印加される電場\textrm{\textsl{E } }方向と一致しない(等方媒質では一致する).これらの極性ベクトルの成分$D_{i}とE_{j} $との関係は, \\
$D_{i}=\varepsilon _{ij}E_{j}$  または,$ \left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
D_{1}=\varepsilon _{11}E_{1}+\varepsilon _{12}E_{2}+\varepsilon _{13}E_{3} \\[0mm]
D_{2}=\varepsilon _{21}E_{1}+\varepsilon _{22}E_{2}+\varepsilon _{23}E_{3} \\[0mm]
D_{3}=\varepsilon _{31}E_{1}+\varepsilon _{32}E_{2}+\varepsilon _{33}E_{3}
\end{array} \right. $ (1) \\
係数$\varepsilon _{ij}$は,誘電率テンソルの形で,べクトル\textrm{\textsl{D } } と \textrm{\textsl{E } } を結び付ける.一般に,要素の対称性$\varepsilon _{ij}=\varepsilon _{ji}$ があり,9つではなく6つの独立なパラメータをもつ.これから先は,テンソル$\varepsilon _{ij}$ の行列を,簡単化して,非ゼロの独立なパラメータのみの行か列の形式に書くことにする: \\
$$\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
\varepsilon _{\texttt{\textsl{11 } } } & \varepsilon _{12} & \varepsilon _{13} \\[0mm]
\varepsilon _{12} & \varepsilon _{22} & \varepsilon _{23} \\[0mm]
\varepsilon _{13} & \varepsilon _{23} & \varepsilon _{33}
\end{array} \right) =\left( \varepsilon _{11},\varepsilon _{12},\varepsilon _{13},\varepsilon _{22},\varepsilon _{23},\varepsilon _{33} \right)     $$
$\varepsilon _{ij}$を係数とする2次の表面 \\
$\varepsilon _{11}x_{1}^{2}+\varepsilon _{22}x_{2}^{2}+\varepsilon _{33}x_{3}^{2}+2\varepsilon _{12}x_{1}x_{2}+2\varepsilon _{13}x_{1}x_{3}+2\varepsilon _{23}x_{2}x_{3}=1$ \\
は,対称テンソルに一意に関係づけられている;この表面は誘電率楕円体\textrm{ellipsoid},あるいは一般に,観察される効果の特性を明確にする物理特性の屈折率楕円体\textrm{indicatrix}である.結晶の対称群$G_{k}$ は,この表面の形(3軸あるいは1軸性の楕円体,あるいは,球)と結晶物理軸 $X_{1}, X_{2}, X_{3}$に対する楕円体の主軸$X_{1}', X_{2}', X_{3}'$ の方位を決定する.群$G_{k}$ は,実験的に決定しなければならない$\varepsilon _{ij}$ の独立な数をも決定する.これを理解するために,テンソル成分$\varepsilon _{ij}$ の変換式を \\
$\varepsilon _{i'j'}=\chi (D)D_{i'i}D_{j'j}\varepsilon _{ij}$        $i', j', i, j=1,2,3$             (2) \\
と書く,ここで,$D_{i',i}=\textrm{cos}(X_{i}', X_{i})$ ,$\chi (D)$ は極性テンソルでは+1,右辺の総和は繰り返される$i,j$ に対し,1から3で行われる。項の和を取り,6つの未知数を求めるのに9方程式の冗長系( 3つの方程式$\varepsilon _{i'j'}=\varepsilon _{j'i'}$は,この場合は成立しない;非対称テンソルの一般の場合には,成立しない)を得る. \\
   読者諸君にこの手順を実行するのを残しておく。上記の等式系の行列を導くのに他の手法を使う-3次元空間の座標変換の直交行列の(自分自身との)直積(p.241).行列Dの自分自身との直積は, \\
$$D^{2}=\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
D_{11} & D_{12} & D_{13} \\[0mm]
D_{21} & D_{22} & D_{23} \\[0mm]
D_{31} & D_{32} & D_{33}
\end{array} \right) \times \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
D_{11} & D_{12} & D_{13} \\[0mm]
D_{21} & D_{22} & D_{23} \\[0mm]
D_{31} & D_{32} & D_{33}
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
D_{11}(D_{ij}) & D_{12}(D_{ij}) & D_{13}(D_{ij}) \\[0mm]
D_{21}(D_{ij}) & D_{22}(D_{ij}) & D_{23}(D_{ij}) \\[0mm]
D_{31}(D_{ij}) & D_{32}(D_{ij}) & D_{33}(D_{ij})
\end{array} \right) $$ \\
ここで,$(D_{ij})$は$3 \times 3$行列で,例えば \\
$D_{23}(D_{ij})=\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
D_{23}(D_{11}) & D_{23}(D_{12}) & D_{23}(D_{13}) \\[0mm]
D_{23}(D_{21}) & D_{23}(D_{22}) & D_{23}(D_{23}) \\[0mm]
D_{23}(D_{31}) & D_{23}(D_{32}) & D_{23}(D_{33})
\end{array} \right) $ ,等々. \\
例えば,$2 /\!\!/ X_{3}$軸まわりの180°回転の行列$D$($D_{11}=D_{22}=-1, D_{33}=1$,残りの行列要素はゼロ)を知れば,テンソル$\varepsilon _{ij}$ の空間でのこの回転を記述する$D^{2}$を見出せる.すなわち,対称群$G_{k}=2$ に対して,変換式$\varepsilon _{i'j'}=\chi (D)D^{2}\varepsilon _{ij}$ は以下の形となる: \\
$\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
\varepsilon _{1'1'} \\[0mm]
\varepsilon _{1'2'} \\[0mm]
\varepsilon _{1'3'} \\[0mm]
\varepsilon _{2'1'} \\[0mm]
\varepsilon _{2'2'} \\[0mm]
\varepsilon _{2'3'} \\[0mm]
\varepsilon _{3'1'} \\[0mm]
\varepsilon _{3'2'} \\[0mm]
\varepsilon _{3'3'}
\end{array} \right] =\left[ \begin{array}{@{\,} ccccccccc @{\, } }
1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & -1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 0 & 0 & -1 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & -1 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & -1 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1
\end{array} \right] \left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
\varepsilon _{11} \\[0mm]
\varepsilon _{12} \\[0mm]
\varepsilon _{13} \\[0mm]
\varepsilon _{21} \\[0mm]
\varepsilon _{22} \\[0mm]
\varepsilon _{23} \\[0mm]
\varepsilon _{31} \\[0mm]
\varepsilon _{32} \\[0mm]
\varepsilon _{33}
\end{array} \right] $ \\
\ \\
系の対称性を考慮して, \\
$\varepsilon _{1'1'}=\varepsilon _{11}$ \\
$\varepsilon _{1'2'}=\varepsilon _{12}$ \\
$\varepsilon _{1'3'}=-\varepsilon _{13}=\varepsilon _{13}=0$ \\
$\varepsilon _{2'1'}=\varepsilon _{21}$ \\
$\varepsilon _{2'2'}=\varepsilon _{22}$ \\
$$\varepsilon _{2'3'}=-\varepsilon _{23}=\varepsilon _{23}=0$$
$$\varepsilon _{3'1'}=-\varepsilon _{31}=\varepsilon _{31}=0$$
$\varepsilon _{3'2'}=-\varepsilon _{32}=\varepsilon _{32}=0$ \\
$$\varepsilon _{3'3'}=\varepsilon _{33}$$
\ \\
行列$D^{2}$の4,7,8行,4,7,8列を抜き取り,$9 \times 9$行列から,対称テンソルの変換則を完全に記述する$6 \times 6$行列に移行する.この行列を2つの行列の対称化積(あるいは対称化平方)と呼び$D^{(2)}$と標す. \\
   群$G=\left\{ g_{1},g_{2}, \ldots ,g_{j} \right\} $ の同形な行列群$\left\{ D_{1}(g_{1}),D_{2}(g_{2}), \ldots ,D_{j}(g_{j}) \right\} $ は,行列表現$G$ を作る.この表現は,$3 \times 3$行列$D_{j}$が点の配置の変換のみでなく3次元空間のベクトル成分を変換するので,ベクトル表現と呼ばれる. \\
   群G の群$\left\{ D_{1}^{2}(g_{1}),D_{2}^{2}(g_{2}), \ldots ,D_{j}^{2}(g_{j}) \right\} $ による表現は,ベクトル表現の平方あるいはテンソル表現と呼ばれる。この術語を用いれば,誘電率テンソル$\varepsilon _{ij}$はベクトル表現 $\left\{ D_{1}(g_{1}),D_{2}(g_{2}), \ldots ,D_{j}(g_{j}) \right\} $の対称化された平方により変換される.テンソル量の定義自体は,成分の変換を支配する法則を特化すること,すなわち対応するテンソル表現の特化に基づいている. \\
   各32の結晶群に対する表現$\left\{ D_{1}^{2}(g_{1}),D_{2}^{2}(g_{2}), \ldots ,D_{j}^{2}(g_{j}) \right\} $ から,これらの群のどれに対しても,群$G_{k}=2$ に対して行ったのと全く同様に,テンソル$\varepsilon _{ij}$ の形を決定できる.テンソル$\varepsilon _{ij}$ の行列は,成分$\varepsilon _{ij}$ が対応する座標 $x_{i}x_{j}$の積と同様に変換されることに注目すれば,もっと速く決定できる.この方法を用い,方位$m \bot X_{3} $の群$G_{k}=m $に対し,テンソル$\varepsilon _{ij}$の行列の形を見出すことにする.この平面での鏡映により,座標$x_{1}, x_{2}$ は保存され,座標$x_{3}$は符号を変える: $$x_{1} \to x_{1}, x_{2} \to x_{2}, x_{3} \to -x_{3} $$ \\
従って,座標の積は以下のように変化する: \\
$$x_{1}x_{1} \to x_{1}x_{1}, x_{1}x_{2} \to x_{1}x_{2}, x_{1}x_{3} \to -x_{1}x_{3}, x_{2}x_{1} \to x_{2}x_{1}, x_{2}x_{2} \to x_{2}x_{2} $$
$$x_{2}x_{3} \to -x_{2}x_{3}, x_{3}x_{1} \to -x_{3}x_{1}, x_{3}x_{2} \to -x_{3}x_{2}, x_{3}x_{3} \to x_{3}x_{3} $$
この変換は対称変換であるので,変換の前後で,成分$\varepsilon _{ij} \leftrightarrow x_{i}x_{j}$ は等しい.従って,群\textrm{\textsl{m } }の行列$\varepsilon _{ij}$ が,群2に対するものと同じ形となる:$(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{12}, \varepsilon _{22}, \varepsilon _{33})$ \\
   以下のリストに,結晶学的な群に対する誘電率テンソルの一般形を与える: \\
$$三斜晶系G_{k}=1, \overline{1} :(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{12}, \varepsilon _{13}, \varepsilon _{22}, \varepsilon _{23}, \varepsilon _{33})$$
$$単斜晶系 2, m, 2/m  :(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{12}, \varepsilon _{22}, \varepsilon _{33})$$
$$斜方晶系 2, 222, mmm :(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{22}, \varepsilon _{33})$$
$$三方-,正方-,六方-:(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{22}=\varepsilon _{11}, \varepsilon _{33})$$
$$等軸晶系 23, m\overline{3}, 432, \overline{4}3m, m\overline{3}m :(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{22}=\varepsilon _{11}, \varepsilon _{33}=\varepsilon _{11})$$
全く同様に,軸性ベクトルに対するテンソル不変量(対応する群の変換により変わらない行列)を見出すことが出来る.テンソル成分の変換則で,第1種の変換(回転,並進)に対しては,$\chi (D)=+1$ ,第2種の変換(鏡映,反転)に対しては$\chi (D)=-1$ とする所が異なる. \\
   テンソル本来の斜方晶対称-テンソル行列の一般形を保存する斜方晶[直交]変換の最も対称性の高い群により決定される-は,もとの結晶の対称性よりも高くなる可能性があることに注意しよう.例えば,立方晶系に対し,誘電率楕円体は対称性$ \infty \infty m$ の球に縮退する.3方晶系,正方晶系,6方結晶に対しては,1軸性誘電率楕円体は対称性$ \infty /mmm$である.残りの結晶に対しては,誘電率楕円体は,対称性 \textrm{\textsl{mmm } }の3軸性である.これは,楕円体(図220)をprincipal axes主軸$X_{1}', X_{2}', X_{3}'$に参照することにより理解出来る:群\textrm{\textsl{mmm } } のすべての変換は,テンソル行列$(\varepsilon '_{11}, \varepsilon '_{22}, \varepsilon '_{33})$を保存する.さらに低い対称性の結晶系では,結晶物理主軸$X_{1}, X_{2}, X_{3}$ に対する楕円体の方位を標示するために,パラメータが(これらの3つ以上に)増える. \\
\ \\
\ \\
   均一なテンソル場の対称群の中で,極限キューリーCurie群(図74)に加えて,反対称と色対称群のlimiting orthogonal極限斜方晶[直交]群に出会う. \\
   7つの中性と7つの2-色のlimiting antisymmetry極限反対称群が,拡大の理論により得られる: \\
$$ \infty 1', \infty 221', \infty mm1', \infty /m1', \infty /mmm1', \infty \infty 1', \infty \infty m1',$$
$$ \infty /m', \infty 2'2', \infty m'm', \infty /m'mm, \infty /mm'm', \infty /m'm'm', \infty \infty m' $$
これらの群の具体化としての物質図形は,キュリーCurie群に対するそれらと同じ形を持つ.中性群では,図形の全ての点は中性,2-色群では,2色である(2色は,各点ごとに,混合されたり塗り分けられたりする).反対称の磁気的解釈では,電気,磁気,Poyntingポインティングベクトルは,それぞれ,磁気対称の極限群$ \infty mm1', \infty /mm'm', \infty /m'mm$を持つ(図221).反対称の極限群の導出では,読者はShubunikov(1958,1959),Sirotin(1962),Koptsik(1966)による扱いを参照するとよい. \\
   この系列に,無限にcolored limiting groups色極限群が存在し: \\
$$ \infty 1^{(p)}, \infty 221^{(p)}, \infty mm1^{(p)}, \infty /m1^{(p)}, \infty /mmm1^{(p)},$$
$$ \infty \infty 1^{(\texttt{\textsl{p } })}, \infty \infty \texttt{\textsl{m } }1^{(\texttt{\textsl{p } })};$$
$$ \infty ^{( \infty )}, \infty ^{( \infty )}\texttt{\textsl{m } }^{(2)}\texttt{\textsl{m } }^{(2)}, \infty ^{( \infty )}/\texttt{\textsl{m } }, \infty ^{( \infty )}/\texttt{\textsl{mm } }^{(2)}\texttt{\textsl{m } }^{(2)},$$
$$ \infty ^{( \infty )}2^{(2)}2^{(2)}, \infty ^{( \infty )}/\texttt{\textsl{m } }^{(2)}, \infty ^{( \infty )}/\texttt{\textsl{m } }^{(2)}\texttt{\textsl{m } }^{(2)}\texttt{\textsl{m } }^{(2)} $$
$$ \infty ^{( \infty )} \infty ^{( \infty )}, \infty ^{( \infty )} \infty ^{( \infty )}\texttt{\textsl{m } }^{(2)} $$
色群の具体化となる典型的な図形は,Curieキューリー図形の周りに色調が連続的に変化(虹のように)する色紙を接着すると得られる. \\
例えば,単色光線がコーンの頂点からその底面へ通過すると,色は,コーンの回転にともない,自然のスペクトル順に変化する.コーンが回転するなら, \\
群の系列$ \infty ^{( \infty )}(1), \infty ^{( \infty )}(2), \ldots , \infty ^{( \infty )}(n)$,静止しているコーンには,系列$ \infty ^{( \infty )}m^{(2)}m^{(2)}(1), \infty ^{( \infty )}m^{(2)}m^{(2)}(2), \ldots , \infty ^{( \infty )}(n)$ を得る \\
[ここで,\texttt{(1)}\textrm{\textsl{, } }\texttt{(2)}\textrm{\textsl{, } }\texttt{(}\textrm{\textsl{n } }\texttt{)}は,古典的軸性部分群である;色コーンの群が,部分群\textrm{\textsl{n } }を含むなら,1回転でカラーサイクルは\textrm{\textsl{n } }回繰り返すことを意味する]. \\
底をシリンダーとし,その周りに色サイクルを一回貼りつけ,群$ \infty ^{( \infty )}/mm^{(2)}(1)$ (静止したシリンダー),$ \infty ^{( \infty )}/m(1)$ (回転シリンダー)を得る. \\
色が連続的に,シリンダーを1周(円周に沿い)するのみでなく,すべての生成元に沿い変化するなら,対称性$ \infty ^{( \infty )}/m^{(2)}m^{(2)}m^{(2)}(1)$(静止時),$ \infty ^{( \infty )}/m^{(2)}(1)$(回転シリンダー),$ \infty ^{( \infty )}2^{(2)}2^{(2)}(1)$(ねじれシリンダー)の2回の色シリンダーを得る. \\
これらの全てで,部分群$1$を$n$で置き換えると,オリジナルのものから群の無限系列が導びける.色シリンダーの群は,古典的部分群$mmm,n22$, あるいは,何らかの性質を保存する部分群の系列に形式化できる. \\
色極限群の最後の2つは,全点が$ \infty $-色で,かつ,中性でない球で具体化される:各点の色は,セクターに沿って分布するか,あるいは,混合されずに層をなして互いに重畳され,同様に群$ \infty ^{( \infty )}$ と$ \infty ^{( \infty )}m^{(2)}m^{(2)}$ ではコーンのチップに分布する.群$ \infty ^{( \infty )} \infty ^{( \infty )}$ では,球の直径は群 $ \infty ^{( \infty )}2^{(2)}2^{(2)}$でのように捩れている.一方,群$ \infty ^{( \infty )} \infty ^{( \infty )}m^{(2)}$では,捩れがない.極限群の別の解釈では,初期に見たすべての図形でのように,1つの固定色は,一般点のすべてに帰属せしめられる。捩れたシリンダーの対称性は,もっと完全には2回色反対称群により記述される. \\
$\displaystyle \frac{ \infty ^{( \infty ) } }{m'^{ \ast } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m'^{ \ast } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m'^{ \ast } }$ \\
ここで*星印はシリンダー低部の周囲の順序で,色を変え,′ダッシュは捩れの方向を変える. \\
   さらに,中性群では,色同一部分群$1^{( \infty )}$は冪によって異なることに注意する.具体化に加え,言及したように,古典的なCurieキューリ群,反対称の極限群,Waerden-Burckhardt群,Wittke-Garrido群,およびこれらの許容される積(p.248,256参照)により記述される色図形がある.すべての有限色群(結晶学的および非結晶学的の位数の)は,これらの極限群の部分群であり,非常に早く本書で与えてある。完全な構造対象の物理で,極限色群は通常の極限斜方晶群よりも役割が低いわけではない. \\