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■3Dへ
Broone橋にある記念プレート,
Hamiltonが4元数を発明したときこの橋の下を散歩していた.
数学者William Rowan Hamilton卿はDublinのTrinityCollegeが産んだ最も著名な子であろう.
彼は最後の20年,複素数が2次元の回転を表すのと同様な
3次元の回転の表現を捜し求め,人生の最後にHamiltonは,4元数という答えを見出した.
$$q=a_{0}+a_{1}i+a_{2}j+a_{3}k$$
ここで,$$i^{2}=j^{2}=k^{2}=ijk=-1$$, $$a_{0}, a_{1}, a_{2}, a_{3}$$は実数.
複素数でしたように,4元数を幾何学的に記述し,回転の表現に用いよう.
今度は2次元でなく3次元の回転だ.
$$i, j, k$$は,3次元内の単位平面:$$i$$は$$yz$$平面,$$j$$は$$xz$$平面,$$k$$は$$xy$$平面で,外側向き法線はそれぞれ$$ x,-y,z$$方向である.
$$i, j, k$$は,3次元空間の単位平面という幾何学的解釈ができる.
点$$ a=(a_{1},a_{2},a_{3}) $$を,角βだけ原点を通る$$b=(b_{1},b_{2},b_{3})$$軸の回りに回転してみよう.
2つの4元数$$q_{1}, q_{2}$$を$$b, \beta $$から作る.
$$q_{1}=\textrm{cos}(\beta /2)+\textrm{sin}(\beta /2)(b_{1}i+b_{2}j+b_{3}k)$$
$$q_{2}=\textrm{cos}(\beta /2)-\textrm{sin}(\beta /2)(b_{1}i+b_{2}j+b_{3}k)$$
$$a$$($$x,y,z$$方向の単位ベクトルの線形結合)に,これら2つの4元数を乗じて
$$a'=q_{1}aq_{2}$$
この積で得られる点$$a'$$は$$a$$を与えられた軸の回りに角度$$\beta $$だけ回転したものだ.
複素数は平面内の回転記述,4元数は3次元空間内の回転記述に用いられる.
ダブリンの橋の下を通りかかったとき,Hamiltonのひらめきは,
3次元で物体を回転させる最も効率の良い方法であることがわかった.
だが彼の新しい乗法で,だれも幸福にならなかった.
物理学者Kelvin卿は4元数のことを:”....美しく巧妙だが,とにかく,これに触れるものには,純粋邪悪である...と評した.
とりわけ厄介なのは,2つの4元数を掛け合わせるとき,答えがかける順番で変わることだ.この特性を非可換という.
Hamiltonの積則をみれば,$$ij=k, ji=-k$$が示せる.
もし,$$i, j, k$$を単位平面のように扱えば,Kelvinや彼の同時代の人々を困らせた特性は直接導ける.
■映像を生活へ
Hamiltonの発明はいまや多数の物体を動かしたり,運動の創出へのグラフィック応用に使われる.コンピュータグラフィックで最も重要なツールの2つは,変形と補間である.
補間とキーフレーミング技術は,物体の初めと終わりの形と位置の特定と,その間の様子をコンピュータに計算させることだ.以下に示す映像のように:
一連のフレームにわたって徐々に変形するティーポットの形
諸君は,未発達のへびのアニメーション(Richard Wareham製作)を見ることができる.
ここではへび全体が,いくつかの特定な点の運動から,
補間を用いてコンピュータで作られた.
[訳注:ファイルのダウンロード先は略]
変形は単純なものから複雑なものを作り出す方法だ.
下の映像のように,変形球を覆っている布は,
普通の球面で起こる同じ光景を数学的な変形をして得られる.
変形も補間も速くて安定な数学的技術を必要とし,
4元数関連の手法がこれを提供する.
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/sphere.png
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/deformed_sphere.png
■ガーラムを信じさせる
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/motioncapture1.jpg
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/dots.jpg
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/skeleton.jpg
データは体の色々な部分に付属しているリフレクターの運動からキャプチャーされる.....
....骨格は,データに数学的にフィットさせる.
上で記述したテクニークは古典的なアニメーションでも基本的なツールである.
漫画キャラクターでは,我々はその結果が信じられるのはとても幸せだ.
しかし,人間のアニメーションでは,たちまち偽者とわかってしまう.
現実味ある動きを作り出すにはモーションキャプチャーが必要になる.
ロードオブザリングズのフィルムバーションから,ガーラムのような
多数のキャラクターを作るにはモーションキャプチャーによる.
これらは,身体,頭,肩,ひじ,ひざなどの回転点に,本当の人のリフレクターを付加して作られる.それぞれは,多重のカメラによってフィルム化されリフレクターの位置の変化をコンピュータに記録する.
骨格は3次元データでフィットされる.
最後に,上に記述された技術はすべて,骨格上に具体化し,生活し,呼吸し,動くキャラクターを作り出す.
もしまだ諸君がタイトルロールを完全に見るために留まっているなら,首尾よい映画作製で使われた種々の製作タレントに気づくだろう.作者,ディレクタ,俳優,衣装デザィナー,プロップビルダー,....
これらのクレジットリストが続々流れる.
しかし一つの名前がしばしばタイトルロールから忘れられている-数学だ.
今日の映画の多くは,光線追跡の幾何学,4元数による空間内の回転なくしてはできない.
次回は,あなたの映画シートで,CGスペクタクルを楽しむために,数学に対してポップコーンを掲げよう.ショーの隠れたスターへ.
(訳:KT)
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著者
http://plus.maths.org/issue42/features/lasenby/jl_small.jpg
Joan Lasenbyはケンブリッジ,トリニティカレッジで数学を専攻し,
電波天文学グループ物理学科のPhDをとった.
マルコーニの企業で短期間働いた後に,大学に戻り,現在,
ケンブリッジ大学工学部の信号処理グループの講師や
トリニティカレッジの研究のディレクター,研究員である.
彼女の興味は,コンピュータビジョン,コンピュータグラフィックス,
画像処理,モーションキャプチャと幾何代数の分野にある.