◆Matt Parker:エジンバラ・フェスティバルでは切符完売のコメディ・ショーを持ち,ロンドン数学会の人気講師という権威ある肩書きも持つのは,マット・パーカーただ一人だろう.
彼は,数学とコメディという彼の2つの情熱の混合に没頭している.
オーストラリアの数学教師であったが,今はロンドンに住み,コメディと数学コミュニケータをしている.
彼は,数学への情熱を,著書,ラジオ,TVショー,新聞,学校訪問,ライヴ・コメディ・ショー,そして時折の街頭パフォーマンスで広めている.
彼には,ロンドンのクイーン・メリー大学の数学フェローという公的契約もある.
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◆マット・パーカーが鮮やかに演じる「27枚のカード・トリック」の背景には3進法がある.しかし,見ているとそんな背景は思いもつかず,楽しくも不思議である.
ビデオの後半で,マットがトリックの仕組みに3進法が使われていることを解説するので納得できる.この27枚のカードトリックはマーチン・ガードナーが1956年に発表したものだ.マットはこの発展として47枚カードのトリックを演じるが,7進法を使うものであってマットの発明である.
Martin Gardner; Mathematics, Magic and Mystery(ドーバー,1956)
27枚カードのトリックは次のように演技される:
観客に任意のカード1枚(例えば,スペードA)を選ばせ,27以下の数字(例えば18)を選ばせる.演技者は,選んだカードが何んであるか知らない.選ばれたカードを含む27枚のカードは十分に混ぜられ,裏向きの束に積み上げられている.演技の最後には,27枚のカード束の上から18番目の位置に,選ばれたカードを移動しておく必要がある.つまり,スペードAの上に17枚のカードがあるようにしたい.
この演技のプロセスに,3進法が利用されている.
3進法で17を表すと17=2x3^0+2x3^1+1x3^2で,221と表記される (ここでは,1の位から先に表記していて,慣れている表記と逆順なのに注意せよ).
演技者は,27枚のカードを,3つの山に,1枚づつ配り分けていく.選ばれたカードがどの山に入っているか聞いてから,出来上がった3つの山を,さりげなく重ね合わせる.
再度,同じ操作を繰り返し,結局全部で,操作が3セット繰り返されて,得られた3つの山を1つの束に重ね合わせると,不思議なことに求めるカードは,上から18番目に置かれている.
このトリックのミソは,3つの山を重ねる順番にある.重ねる機会は3回あるのだが,各回,どの山を上(Top=0),中(Middle=1),下(Bottom=2) の何処に置いたら良いか?
さりげなく手際が良いので見分け難いが,マットの仕組み説明で良くわかる.18番目に置くには,17の3進法表記221を使い,求めたいカードの入っている山の位置を,1回目は底(Bottom),2回目は底(Bottom),3回目は中(Middle)になるように積み上げるのだ.もし,10番目の位置に置きたければ,9=0x3^0+0x3^1+2x3^2 で,3進法表記では 001なので,1回目,2回目,3回目の積み上げでは,Top,Top,Middleの位置に置くようにすれば,求めるカードは10番目の位置になる.