モアレMoire

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数学月間SGK通信 [2016.01.05] No.096
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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新しい2016年がスタートしました.皆様のご健康とご成功を祈ります.
やる素振り,やった振りで国民を期待させ欺くのはもう化けの皮がはがれてきました.
日本にとって2016年は大事な年です.良い年になりますように.

■モアレMoire
2枚の同じグレーチング(格子模様)を重ねたとき,もとのグレーチングの拡大像のようなものが
新たに生じるのを見たことがありますか.これはモアレ現象の一種です.
The superposition of two regular nets produces a secondary enlarged net of the same shape.
2枚の全く同じグレーチング(格子模様)を重ねると,たいてい相互にわずか傾いていますから,モアレ(モワレ)縞を生じます.
これは,2枚のグレーチング模様の重なった場所はよく光を通し明るく見えるためです.
重なる場所の出現は周期的ですから,重ね合わせ像のコントラストに周期的な分布ができます
(ビート,うなりのようなものです).そしてあたかも,グレーチングの拡大像を得たように見えます.
グレーチング相互の傾きがわずかなら生じる像の拡大率は大きく,傾きが大きくなると拡大率は小さくなります.
下の3つの写真は,最近ある店の中で撮影したもので,今回モアレのテーマを思い出したのもこのせいです.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_2_m?1451706758
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_0_m?1451706758
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_1_m?1451706758

3枚の写真は,それぞれ全く同じ2枚のグレーチングが平行移動(傾きはなく)して重なっている状況です.
これらの写真を見ると,2次元的なビート・パターンが生じているのですが,
全く同じグレーチングが平行にずれても,新しいビート・パターンは生じないはずです.
ではなぜこのようなビート・パターンが生じたのでしょうか?
それは,2枚のグレーチングの間にスペース D があるために,観測者から視差(パララックス)があり,
前方のグレーチングよりも後方のグレーチングを小さく見込むためです.
これは,わずかに寸法の違うグレーチングを重ねたのと同じ現象なので,
このためにビート・パターンが生じているのです.
とても美しいので,よくわかるように以下の写真を追加します.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_7_m?1451706758
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_8_m?1451706758
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_9_m?1451706758

■詳細考察
では,計算してみましょう:ノギスの副尺の原理を思い出すと良いかもしれません.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_6_m?1451706758
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/63/17194663/img_5_m?1451706758

本当のグレーチングの格子のサイズ a
2枚のグレーチングの間隔 D
視点から表面のグレーチングまでの距離 L
後ろのグレーチングの縮小割合 δ/a≡q<1
として,生じるビートの周期 T を求めて見ましょう.
a/(D+L)=(a-δ)/L より δ/a=D/(D+L)
T≡n・a=(n+1)(a-δ)より δ/a=a/(T+a) ⇒ T=a(1/q-1) ← D, L を消去した
  あるいは, T=a(L/D) ← q を消去した
さて,この例で生じた新しいビートの周期は, T=5a のように観測されます.
従って,L/D=5 が得られます.あるいは,1/q=6,つまり δ/a=1/6 です.

2枚の同一なグレーチングの間隔Dで重ねたとき生じるビートが,もとのグレーチングのn倍に見えたら,
観測点から表面のグレーチングまでの距離はL=n・D です.これは,距離Lを測定する道具に応用できるでしょう.
ただし,n=1(T=a)はモアレとは言いません.a/2周期の均一なコントラスト分布です.