トレチャコフ美術館展

トレチャコフ美術館展で気に入った絵画がありました.子供の世界のコーナーに展示されている「楽しいひととき」です.作者は,アントニーナ・レオナルドブナ・ルジェフスカヤ(女性).Антонина Леонардовна Ржевская
ルジェフスキー家のレオナルドの娘アントニーナというわけで,ロシアの標記では,父称からも姓からも女性ということがわかります.この絵画は,男名のА Л Ржевский と署名し1897年の展覧会に出品しました.

この絵画はパーベル・トレチャコフの目に留まり彼の所蔵となりました.
当時は絵画は男の仕事になっており偏見を心配したためです.

(注)父称や姓は,アントニーナ(女性名詞)を修飾する形容詞ですから女性の語尾変化をし,女性であることが明示されてしまいます.
彼女は没落した貧しい領主の家に生まれました.アレクサンドル2世による農奴解放令は1861年だが,農奴は土地を買わなければならなかったので不徹底改革でしたが,没落領主もあったでしょう.調べたら父は早く死に母と苦労したようです.
1880年にモスクワの絵画・彫刻・建築学校を卒業しました.
1899年に正式に移動派のメンバーになりました.
私立女子学校で教えたり,1920年には骨疾患の子供達のための教育芸術スタジオを組織しボランティア活動をしました.
「楽しいひととき」はこの絵です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忘れえぬ女

トレチャコフ美術館展のポスターを飾る.19世紀末から20世紀初頭のロシア絵画の代表作,クラムスコイ作の「忘れえぬ女」は印象に残ります.表題のНеизвестнаяを直訳の「見知らぬ女」でなく「忘れえぬ女」とした翻訳は実に上手いですね.
この女性が誰だか謎です.すべてのものをありのままに見通すようなまなざしは,実に魅力的です.何も恐れず媚びず,勇敢にまっすぐにみる.あらゆる欺瞞を見抜いているようです.