ステレオ投影の性質

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数学月間SGK通信 [2015.02.24] No.052
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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球表面を平面に投影するステレオ投影
地球儀を2次元平面の地図に

■性質1: 円は円として写像される
ステレオ投影というのは,球表面の点 Z(ξ,η,ζ)を,
北極 Nと結んで,南極 Sでの接平面 Π上の点 z=x+iyに投影することです.
N(0,0,1),S(0,0,0)を直径とする球面の式は,ξ^2+η^2+ζ^2=ζ であり,
この球面はリーマン球と呼ばれます.
Z(ξ,η,ζ)は, (0,0,1)と(x,y,0)を結ぶ直線上にあるので,
ξ=x(1-ζ), η=y(1-ζ), これらを球の式に代入すると,ζ=r^2/(1+r^2)となる.
ただし, r^2=x^2+y^2 である. まとめると;
ξ=x/(1+r^2) ,η=y/(1+r^2),ζ=r^2/(1+r^2)
逆に解くと,x=ξ/(1-ζ),y=η/(1-ζ),r^2=ζ(1+r^2)
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/95/16518295/img_2_m?1424438241
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/95/16518295/img_3_m?1424438241

平面上の任意の円の方程式は a(x^2+y^2)+bx+cy+d=0 である.
この円の方程式の x, yに,上記の表式を代入し,
ξ^2+μ^2=ζ(1-ζ)を用い整理すると
(a-d)ζ+bξ+cη+d=0 が得られる.
この1次式は平面を表し,球表面との交線は円となる.従って,
「平面上の円は球面上の円から投影され」この逆も成立することがわかる.
以上で証明は終わりですが,直観的な説明を補足します.
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/95/16518295/img_4_m?1424438241

リーマン球上の円は平面Ωで球を切った切り口で,PQはこの円の直径です.
△NPQおよび△Nqpは,直径NSを含み,円の直径PQおよびpqを含む平面です.
図に示すように両三角形でα,βは互いに等しく,両三角形は互いに相似です.
PQを直径とする円に相似な円が,平面Π上にqpを直径として投影されるでしょう.

■性質2: ステレオ投影は等角写像
複素関数 f が,複素平面領域 D のあらゆる点で微分可能*なら,Dで正則といいます.
*微分可能とは,どの方向からその点に近づいても同一の微分係数が確定することで,
微分係数が0や∞になる点は特異点といいます.
正則関数による写像は等角写像*です.
*写像された像が歪んでも,微小部分の角度は元の像の角度と変わらない.
ステレオ投影(複素平面からリーマン球面への写像 f )は,正則関数なので,
任意の点z0で交差する曲線の投影結果も,
それらの交差角度が保存されたまま投影されます(等角写像).
(f(z1)-f(z0))/(f(z2)-f(z0))=(df/dz)(z1-z0)/(df/dz)(z2-z0)=(z1-z0)/(z2-z0)
ただし,z1,z2→z0 で成立.
lim arg(f(z1)-f(z2))=lim arg(z1-z2))
偏角について成立するこの式は,微小領域で写像による角度が保存されることを示す.
Fig.1に示した横倒しの地球儀のステレオ投影の様子を見ると
平面に投影した地球の下側半分の子午線は,大変歪んでいるが
互いに直交している状態は変わっていないことがわかる.

■諸科学への応用
等角写像は工学の色々な分野で利用されている.
色々な境界条件に合うようにする等角写像は,流体力学で活躍している.
何度でも微分可能であるという複素関数の性質も
我々の身の回りの現象を記述する方程式で頻繁に利用されている.

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