今年の米国の数学月間

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数学月間SGK通信 [2017.05.23] No.168
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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■米国MAMの動向
現実世界の多くの課題を解くのに,数学と統計が重要な役割を演じています.
昨年度の米国MAMのテーマは,ずばり「予測の未来」でした.米国MAMでは,統計や予測に関するテーマが増加しています.
これまでのMAM数学月間(1986年4月のレーガン宣言で始まった)の呼称も,2017年から
MSAM(Mathematics and Statistics Awareness Month)数学・統計月間に変わりました.
この流れを作った背景には,コンピュータ利用とAI人工知能技術の発展があります.
嫌なことですが,スノーデンの告発で明らかになったように,個人情報,個人メールを含むあらゆるデータが,
米国NSAにより収集され(collect it all),解析に使うことができる監視社会になりました.
米国NSAによるデータ独り占めが,国家の独立性を危うくしたり,
不正な情報操作を許すことにならないように注意が必要です.
私たちの日本の数学月間では,世論調査がどれほど正しいのか疑問を持ち,この数年これを取り上げてきました.
しかし,その一方,大量のデータが,リアルタイムで収集できるのが現代です.
これをどのように解析・予測するかの数学手法は,興味深いことです.
社会と数学の架け橋を謳う「数学月間」としては,これらを取り上げないわけにはいきません.
今年7月22日の数学月間懇話会でも,昨年に続く世論調査のテーマと少ないデータからの推論を取り上げます.
詳細は数学月間ブログやSGKのウエブサイトをご覧ください.

■米国MSAMの「数学祭り」
今年の米国MSAMには,例年のMAM(毎年4月に実施)のような統一テーマがありませんでした.
ウエブサイトで目につくイベントは,「数学祭り」national math festivalの楽しい様子です.
これは,日本の「とっとりサイエンスワールド」(注)によく似ています.
(注)とっとりサイエンスワールドは,2007年にスタートした人気のある県民イベントです.
詳細は,数学月間ブログをご覧ください.
米国MSAMの「数学祭り」は,4月22日土曜日の10:00~19:00,ワシントンDCのダウンタウンにある
ウォルター・E.・ワシントン・コンベンション・センターで実施(一般公開の無料イベント)されました.
講演,デモ,アート,映画,実演,パズル,ゲーム,児童書の読書などがあり,幼児からすべての年齢の成人が対象です.
ウエブサイトで見られるビデオの一つを紹介しましょう.
米英には,数学見世物師のような専門家が居り,なかなか見事なパフォーマンスが見られます.
例えば,Matt Parker のマジック・スクエアのデモはとても面白いものです.
以下の4x4の数表をご覧ください.
A  1 12 7
11 8 B 2
5 10 3 C
4 D 6 9

(1)縦列の4つの数字の総和,(2)横列の4つの数字の総和,(3)全体の4分割のそれぞれの部分の4つの数字の総和,
(4)中心部分の4つの数字の総和,(5)中心2列の上部分(下部分)の4つの数字の総和,
(6)表の4隅の数字の総和,(7)2つの対角線の4つの数字の総和.
これらがすべて同じ数字になるように,A,B,C,Dを求めます.
さて,総和の数字は,観客に勝手に言わせます.もし,48と言われたら,
A=28,B=27,C=30,D=29です.どんな総和の数字を言われてもすぐできて
とても不思議です.この種は,以下のようなものです.うまく実演してみましょう.
総和の数字をnと言われたら,A=n-20,B=n-21,C=n-18,D=n-19と計算すればよいのです.