折り紙箱の対称性

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数学月間SGK通信 [2015.12.22] No.094
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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本年もあと1週間です.本年お付き合いいただきありがとうございました.
今回は,前回のユニット折り紙の箱の考察の続きです.
■正6角形箱
2つの箱をユニット折り紙で作りました
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/29/17175629/img_0_m?1450707610

どちらの箱も正6角形です.色の見分けのできない(すべて灰色の見える)眼鏡をかけて見れば,
どちらもおなじで6回回転対称です.
左の箱は,6回回転軸の60°回転ごとに,色がオレンジ⇔青と入れ替わります.
このような色の交代と結び付いた6回軸を6’と書きます.
右の箱は,6回回転軸の60°回転ごと(左まわり)に,色は,青→ピンク→オレンジと置換します.
このような3色の置換と結び付いた6回回転軸を6^(3)と書きます[(3)は上付文字です]
左のような,2色交代と空間対称操作との結合はシュブニコフ,
右のような色置換と空間対称操作との結合はベーロフによって研究されました.
空間対称操作(空間群)はフェドロフにより研究されましたのでフェドロフ群と呼ばれるように,
これらの拡張された空間群は,シュブニコフ群,ベーロフ群と呼ばれます.
■シュブニコフ群
左の点群を6’={6',6'^2,6'^3,6'^4,6'^5,6'^6=1}とします.
図形を見てわかるように,色の変化を起こさない点群3={3, 3^2,3^3=1},
[ただし,6’^2=3,6'^4=3^2に注意]が,部分群[実は正規部分群]として含まれています.
したがって,対称操作の集合は2つの集合の和(剰余類展開)になります:
 6'=6’・3+1・3
これは,点群6'を色を変えない正規部分群 3を法として6’/3={1,6'(mod3)}に単純化されるということです.
[注)群3を法としてとは,点群3で動くものはすべて同じものと思えということです.
時計は12を法としています.1時と13時は同じ位置に来ます]
■ベーロフ群
右の点群は6^(3),色を変えない正規部分群は 2={(6^(3))^3=2, 1}ですから,
6^(3)/2={6^(3)(mod2),(6^(3)(mod2))^2, 1}
つまり,mod2というのは,2回軸で移るものは同じと思えということで,考察は図形の半分に帰着できます.
例えば図形の右側だけ見ると,青→ピンク→オレンジの置換が起きることがわかるでしょう.

■正8角形の箱
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/545271/29/17175629/img_1_m?1450707610

左の箱は前回登場した正8角形のものです.点群は 8'
この中に含まれる色を変えない部分群は,4
8'/4={8'mod(4), 1} です.
ただし,正8角形のタイルで平面のタイル張りはできませんから,
有限図形の点群としての8はありますが,8回軸が周期的に並ぶと矛盾が起きます.
つまり,結晶点群として8は存在できません.
例えば,正8角形の分子(オクタテトラエン)が,周期的に配列して結晶を作ったとしても,
並進周期はせいぜい4回対称か2回対称でしょう.