数学書として憲法を読む

12月4日の夕方から秋葉忠利さんの「数学書として憲法を読む」の出版記念パーティがありました.100人ほど集まり楽しいパーティでした.田中康夫さんや阿部知子さんも来られました.おりしも,PISAテストで15歳の読解力の低下が指摘されています.国民もマスコミも読解力のない社会になりました.論点を次々にずらしたり,揚げ足取りで本論から逸脱させたり,部分否定と全否定をすり替えたり,必要条件と十分条件を区別しなかったり,みな詭弁への道で,まともな議論になりません.論旨を素直にとらえて,正面から議論する当たり前のことが通じない社会になりました.特に,国会やマスコミの報道でこのようなまともな論理の劣化が気になります.

読解力は,読書をしたり話を聞いたりして自然に身に着くものです.私の子供の頃は,落語のラジオ放送を聞く毎日でしたが,まとまった話を最後まで聞くというのは,読解力を身に着けるための良い訓練であると思います.

論理的な普通の読解力で(いかめしく言うと数学的に)憲法を読むというアイデアは画期的な問題提起です.
秋葉さんの本の一読をお勧めします.この本は以下の様に憲法を舞台にしていますが,何の分野でも正しくあるがままに理解するということは重要なことです.

■改憲不可条項
憲法にある「義務」,「尊重」などの単語,特に,「永遠」,「永久」といった「絶対性」をもつ単語を,素直に受け入れ(「義務」という言葉は素直に法的義務と読むべきなのに,都合の悪いところになると道義的要請とよむ「憲法マジック」は詭弁の入り口),「全部否定」と「部分否定」,「必要条件」と「十分条件」との違いを峻別できないと,詭弁に引き込まれます.この他に,憲法に書かれていないこと(あるいは,他の文献)に依存せず,憲法全体は,無矛盾・自己完結するなど,9つのルール(9大律)を設定し,憲法の条文を公理に見立て,論理的な結論となるいくつかの「定理」を導きました.

「永久に」,「国民の総意」,「不断の」などの絶対的な表現と関連がある8つが「改憲不可条項」に当たります.改憲禁止の条項とは明示されてはいないが,論理的にそのような結論になる条文が8か条あるということです.この8か条も含めて,改正の対象にならない条文は30か条を超えることが示されました.改憲の手続き規定である96条は改憲のための必要条件に過ぎないわけです.時間的な極限を表す言葉,「永久に」が使われている9条を変えて,1946年以降の有限時間内のある時点で「戦争をすることが可能になる」ようにすることは,「永久に」という言葉に反します.したがって,9条を「改憲」することは憲法違反になります.