今年の数学月間

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数学月間SGK通信 [2016.04.12] No.110
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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数学と社会の架け橋=数学月間
数学月間は7/22~8/22(22/7=π,22/8=e)の期間です.
私たちは,この期間に数学への興味を惹き起こすイベントが
各地で盛んになるように応援しています.
数学月間の初日の7/22には毎年,懇話会を開催しています.
今年で数学月間懇話会は第12回になります.
計画中の懇話会情報:正式アナウンスに先立ちお知らせします.
無料です多くの方のご参加をお待ちしています.
日時:7月22日,14:00~17;00
場所:東大駒場キャンバス,数理科学研究科・002号教室
1.亀井哲治郎 数学の周辺
2.田渕健 統計と医学
3.松原望 統計と社会
(演題はいずれもまだ仮題です)
問い合わせ先:sgktani@gmail.com(日本数学協会,数学月間の会)
今年のテーマは,統計学です.
世の中は不確かなものやことばかりで確率で記述されます.確率の正しい理解が必要です.
従来,得られなかったようなデータも多量に収集できる時代になりました.
でも,データ収集が恣意的であったり,不合理な解析をしたりすると
どんな結論でも導くことができるので,だまされないように要注意です.

今年(4月に実施中)の米国MAM(Maths Awareness Month)のテーマは「予測の未来」.
・外れた世論調査ー予測の限界を知ろう
・あなたの健康のために
などの興味あるエッセイがあります.ちょっと紹介しましょう.

2015年5月の英国総選挙では,与党の保守党が過半数の326議席を獲得し,
労働党は232議席でした.スコットランド民族党は大躍進の56議席です.
選挙直前の世論調査では,保守党と労働党の差がこれほど広がる予測はありませんでした.
最後の世論調査と投票日の間に逆の一揺れがあったわけですが
なぜこれほど予測に誤差が出たのでしょうか?
調査委員会の報告書(2016年3月)によると,サンプリングが正しい代表値でなかった
ということですが,理想のランダム・サンプリングをすることはできるのでしょうか.
予測を頭から信じることは危ないことです.
今年は,日本も重要な選挙の年です.支持率調査などでも
現実が正しく反映されているのか怪しいところがあります.

2001年にフラミンガム心臓研究の研究者たちは,拡張期血圧,収縮期血圧,脈拍圧を,
冠動脈性心臓病リスク心の予測因子として使用できる結果を発表しました.
この研究により,冠動脈性心臓病の予測能力が向上しました.
異なる年齢層にたいする予測因子の強度を解析し,
それぞれの年齢層でどの予測因子が最も支配するか結論を得ました.
健康とウェルネスのための予測因子は,いろいろな理由で多くの分野で改善が進んでいます.
利用可能なデータは劇的に拡大し,モデリングや解析に用いる技術と手法は向上しています.
一つの分野での進歩は,別の分野の進歩につながり,また広がります.
研究者は以前よりも,より深くより洞察に満ちた結論に到達することができるようになりました.
フラミンガム心臓研究は1948年に始まったが,その後数回の拡大があり,
続く世代集団だけでなく,人口の多様性の増加を反映している集団を追加しました.
これにより,研究者達は,人口の幅,および,多様な健康問題の側面の両方を
表すデータの使用ができるようになった.
この研究のために,研究者達は,原初の集団に20才から79才の集団を統合した.
さらに,研究者達は,数年前には不可能だった場所でのデータ収集をしています.
フィットネスの追跡者は,活動レベルや睡眠パターンのような個人生活の情報を
容易に定量化できる恩恵を受けている.