福1メルトダウン原子炉の中

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数学月間SGK通信 [2016.11.29] No.143
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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寒くなりました.皆様お元気でお過ごしでしょうか.
11月27日は,夕方からの雨でどんどん寒くなりましたが,
藤沢,遊行寺の「一ッ火」に参加していました.5時に始まり9時近くまで行われました.
遊行寺に行ったのは初めてです.落語でも,箱根駅伝の中継でも,遊行寺は有名ですね.
会の最後に,大僧正直々に全員(何百人でしょうか,例年より少ないそうです)がお札をいただきました.
その行列の長いこと.大僧正は97才.すごい大声でのお話さすがです.(この方が免許返上で話題になった方ですね).
「一っ火」というのは,本堂のロウソク(それぞれ或るものを象徴して配置され,20~30本位ある)の火を,
複雑な手順(方法や役回りがいろいろ)に法り次々に消して行き真っ暗に...,静寂.十八念仏が始まり,
火口箱に火花鵜を打ち込み,灯明に移されます.再び弥陀と釈迦の光明に照らされた世界が戻ってきます.
念仏は美しい合唱の音楽です.
大きな百目ろうそくの炎は長く伸びて明るい.じっと見ていると,炎はピタッと動かない.
それが突然瞬き始める.また,ピタッとまる.これが周期的に繰り返されます.
この自励振動の機構に感嘆して見入ってしまいました.実に面白い.
近づけた2本のロウソクの瞬きの周期が揃う(協同する)というのは知っていますが,
そもそも,ロウソクの炎の瞬きと,静止が何故繰り返されるのだろうか?どちらの状態も安定でないわけで,
この移り変わりが起こる理由を考え込んでしまったのです.この話題は後日取り上げたいと思います.

今日は,福1の事故原子炉の話をします.
■福1のメルトダウンした2号機のペデスタル(原子炉(圧力)容器を支えるコンクリートの部屋(地階と1階))
の観察を来年1月に実施する計画です.ペデスタルは格納容器(建屋の地階から4階までを含んでいる)の中にありますので,
格納容器のX-6ペネ(貫通窓のこと,ケーブルや配管を通しているが,X-6はコンクリートのメクラ蓋)に穿孔(115Φ)し,
自走式のサソリ型ロボットをいれる.実は,この穿孔の準備のため,X-6ペネの前にある遮蔽ブロックを取り外す工事で,
X-6ペネ周辺にダメージを与え放射能が漏れだし,昨年10月から最近まで,その作業エリアの放射能除去対策に苦闘していた.
いよいよ遮蔽盾に隠れて穿孔作業が始まるが,作業場は高線量のため1日の被曝限度3mSvをすぐ超えるので10分といられない.
3人ぐらいの班で,次々と入れ替わりのリレー作業となる.
計画は観察だけ.その後.どうやってデブリをとりだすか,どこに保管するかなど問題だらけで可能かどうかも危惧される.
(だいたい,燃料プールには,4号機の燃料を入れたままだし)
■現在判明している状態
メルトダウンした福1原発1号機~3号機のデブリの観察
1号機,3号機は,ウエットベントが出来ましたが,建屋は水素爆発しました.
どちらも核燃料はメルトダウンして,ほぼすべてが溶け落ちた可能性が高いと東電も認めています(2014.8.6).
2号機は,ベントに失敗.圧力抑制室が破損し,直接放射性物質をばらまきました.建屋の水素爆発も起きました.
2号機では,メルトダウンした核燃料の70%~100%が圧力容器の底にたまっていることは,
ミュー粒子(宇宙線)を用いた透視で判明しています(2015.3).
同様の透視法で1号機のメルトダウンした核燃料は圧力容器にはとんどなく,
圧力容器から抜け落ちたことがわかります(IRID資料,2016.10.4).
(注1)装荷核燃料の量は,1機あたり約1トンです.
特に,3号機はプルサーマルで,プルトニウムを含むMOX燃料が装荷されていました.

(注2)ミュー粒子(宇宙線)による透過像
宇宙線,ミュー粒子は大気で発生し,一様に振り注ぎます.透過力が強いが,高密度の物質を通過すると減衰するので,
火山の山体のマグマや原子炉の核燃料位置を見ることができます.
ミュー粒子の飛んで来た方向の検出には,
原子核乾板を複数重ねて感光させる方法や,同じ原理ですが,シンチレータバー(1cm角)と呼ばれる棒を並べた面検出器を,
間隔をとって平行に置き,ミュー粒子の軌跡がどのように貫いたか知ります.
シンチレータバーの中心には波長変換ファイバー1mmΦが通っていて,ミュー粒子をとらえた位置のシンチレータの発光を,
可視光の波長に変えてファイバー端面に伝え,ファイバー端面の半導体検出素子に入れます.