084_空間のデジタル化で生じる周期と異方性★

■空間のデジタル化
最近の交通信号は,発光ダイオードのドットが円盤内に配置されています.
本来,円盤内は連続平面ですが,ドットの配置で表現される円盤は,
離散化(あるいはデジタル化)されています.
デジタル化された世界では,ドットを1つ2つと数えることができます.
ドットを十分小さくすれば,ドットはいくらでもこの世界に入ります.
このような世界を,“可算無限”の世界といいます.一方,連続平面は,
点を数えることすらできない“非可算無限”の世界です.
(例)整数や有理数(分数で書ける数)は可算無限個,
  無理数(分数では書けない数)は非可算無限個です

 

 

 


■無限に続く繰り返し
 周期的な空間-結晶世界

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


黒と白のタイルでできる市松模様が無限に広がっています.
もし,白いタイルのどれか一つの上にいたとしても,
市松模様の世界は無限に続いているのですから,
そこがいつも世界の真ん中に思えます.
つまり,どの白いタイルもすべて同価です.

この市松模様の世界の周期がわかりますか? 図には,
白いタイルから,隣の同価な白いタイルへの移動を示すベクトル(矢印)
が記入されています.
2次元の世界ですから2つの独立なベクトル a, bが基本周期になります.
白いタイルを基本周期a, bを繰り返して平行移動することを並進といいます.
(注)na+mbは,a方向にn個,b方向にm個の移動(並進)の意味です.
na+mb(整数n,m)の点(格子点)はすべて同価な点で,
これらの集合を格子といいます.
格子点の集合(格子,無限集合)は加法で閉じており
群という代数系になります(これを並進群といいます).

上図の2つの市松模様は全く同じものですが,見渡す方向でずいぶん景色が違います.
このような性質を異方性と言います.
格子点に配置して,重ならず隙が出来ずに平面を張りつめるとき単位となる
ブロックタイル(単位胞)の形はどのようなものでしょうか?
これには色々なものを採用できますが,例えば,横並びの黒白ペアのタイル,
あるいは,a, bで囲まれた平行4辺形などがあります(上図の右側に図示).
その面積はどちらも同じです.
無限に続く周期的な平面は,一つのブロックタイル(単位胞)で平面を張りつめる
こと(デジタル化)ができ,扱うのが簡単です.これに比べて,
周期的でない平面はアナログ平面で簡単化できません.つまり
一様な(平面のどの場所も同価であるような)デジタル化ができません.
デジタル化された信号のような円盤内も,一様でもなければ周期的でもありません.
周期的なデジタル化された空間は“結晶空間”と呼ばれ,
その性質は“格子”で抽象的に表現されます.