格子の干渉

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数学月間SGK通信 [2016.04.25] No.164
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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今日は,まず図をご覧ください.
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-09-2d/tanidr/folder/572283/79/18011279/img_0_m?1492957285

正方形の網目(格子点)の網(格子)を2枚重ねただけですが,
両方の網目が重なった位置の網目に新しい格子が見えて美しい.
もとの格子の2つの並進ベクトルをa,bとすると,もとの格子は,格子点 na+mb,(n,mは任意の整数)の集合です.
格子を2枚重ねて,新しい周期の2つの並進ベクトル x, yが生じているこの図の状態は,
x=2a+b,y=a+2b です.この基底の変換を行列で書き,行列式を求めると3ですので,
新しくできた格子はもとの格子と比べて面積で3倍粗くなっていることがわかります.
格子というのは,並進ベクトルの作る群=並進群の”図的表現”ですが,
2枚の格子の干渉で生じた新しい格子の周期は,
もとの格子の粗いサンプリングになっていることがわかりますね.
だから,新しい格子はもとの格子の部分群になります.

格子が重なって,拡大された(粗い)格子が見える現象は,干渉(ビート)と同じことです.
実際に,2つの原子網面が重なって,このようなビートが見えることは,
電子顕微鏡で格子像の観察をするときにもよく起こります.
結晶は周期的な構造をしているので,周期的な空間は「結晶空間」とも呼ばれます.
エッシャーの繰り返し模様や,壁紙模様などで,周期的空間の実例をたくさん目にしていると思います.
次回は,周期的空間について,並進群を利用してもう少し詳しく調べていくことにします.