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No.458 群論ことはじめ

投稿日時: 2023/01/23 システム管理者

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数学月間SGK通信 [2023.01.24] No.458
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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群の概念の発見で,まず第一に名前が出てくるのはガロアです。
しかしながら、ガロアが群概念を突然発見したわけではありません。
5次方程式の解の代数的な公式を作ろうと探し求めた何百年もの課題があり
どうやらそのような解を代数的に記述するのは不可能らしいと思いはじめ,
不可能の証明に取り組み始めた時代になりました。

5次方程式が解けないという表現は,誤解されがちですが,正確に言うと;
一般の5次方程式には、5つの複素数解が存在し,それらの数値はいくらでも正確に求められるのですが,
方程式の係数の間の四則演算とベキ乗根を求める演算を用いて,解を記述することができない
(代数解がない,あるいは,解の公式がない)という意味です。

ガロアが突然群の概念を発見したわけではありません。
ガロアの前の研究に,ラグランジュ,アーベルの伏線がありました。そして,ガロアの発見に至ります。

さらに,ガロアの遺稿の価値を見出し数学的に検証したリウヴィルの研究1846年は重要です。
リウヴィルは,統計物理学のリウヴィルの定理やエルゴード理論の人だと思っていましたが
ガロアの概念の発見では大変な貢献者です。
(注)統計物理学のリウヴィルの定理とは,相空間(数学の位相空間と混乱するので,
ガンマ空間と呼んだ方が良いかもしれない.粒子数Nでは6N次元の空間)を,
運動する粒子の分布関数の体積は保存されるということ。

ガロア以降の群概念の発展は,我々には重要です。
特に,これらはジョルダン,ヘルダーの貢献によります.
結晶空間群が含む並進群が正規部分群であることを利用して,商群を作り,
結晶点群に準同型に対応させる仕組みの基礎は,ジョルダン1869,ヘルダー1889が作りました。
こうして,様々な科学の分野に群論が適用されるようになりました。
これらの詳細について,イアン・スチュアートの著書を引用して
https://note.com/sgk2005/n/n9c9c98cb2344
に書きましたので,ぜひご覧ください。