投稿日時: 2022/12/20
システム管理者
2015/04/23
書評:美しい幾何学(丸善)
美しい幾何学, 丸善
高木隆司監訳
Eli Maor and Eugen Jost
ルネサンスの時代は,数学とアートの活動は協力して行われ,心の中で補い合うものと考えられていた(イーリーによるまえがきより).
オイゲンの数学的アートと数学者(数学史)イーリーの協同でできた本書は珍しい数学の本です.説明には微積分などは出てきません.子供から大人まで数学アートを鑑賞しながら読み進むことができます.テーマは系統的な幾何学とは異なります.初級の幾何学もあれば無限級数などもあります.さらに意外なテーマが現れたり変化に富みます.
取り上げられたいくつかのテーマを見てみましょう.例えば,シュタイナーの円鎖.これはアルベロスとかインドラの真珠などと呼ばれることもあります.円の中に互いに接する円を詰め込んだ美しい図形で,円による反転操作もあります.この図形は和算の算額にも登場しますが,それにも言及しているのは著者の専門が数学史だからでもあり,本書の構成にもそれが現れています.本書の前半は,ピタゴラスから始まり,素数,無限級数の収束,ユークリッドの作図などのテーマが現れます.さらに続くのは,円周率,積み木による調和級数,自然対数の底,らせんや種々の曲線などです.これらの説明も,数学アートの図が活きていて面白い本です.本書の後半には,スノーフレーク曲線,シェルペンスキーの三角形などのフラクタル図形の特徴も,美しく理解しやすい図による記述があります.