2014/02/16
Globe朝日新聞記事
http://globe.asahi.com/feature/100201/memo/01.html
数学と社会/「数学力」が国力を左右
「数学が戦争に勝たせた。数学者が日本軍の暗号を解き、原子爆弾を作った。君らもその数学者だ。アメリカの未来は、君らの手の中にある」。映画「ビューティフル・マインド」の一幕。第2次世界大戦直後、数学者の卵たちを前に、大学教授が語った言葉だ。
国家と数学の密かなかかわり。そして、数学が新分野を切り開き、「産業の核」になるのではないか。ここ数年、産業界は「数学の実用化」への期待感を、にわかに高めている。
経済協力開発機構(OECD)は2007年、ワークショップ「産業における数学」を初めて開いた。翌年にまとめた報告書では、産業界が直面している問題の多くに数学的要素が含まれている、と指摘。数学と産業が協力することが双方の利益になり、国家経済にもメリットがあると強調している。
米国でも06年、ブッシュ大統領(当時)が、国際競争力の強化策として、数学教育の向上を一般教書演説で打ち上げた。これは98年に「米国での数学研究が欧州に後れを取っている」と危機感をあらわにした全米研究会議の報告書が出たのがきっかけだ。
ドイツでは08年、ダイムラーやルフトハンザなど様々な分野の企業トップらが数学の有用性を語った『数学が経済を動かす』(邦訳はシュプリンガー・ジャパン)という本を出版。前書きで、教育・研究相は「数学は私たちの日常生活にどれだけ浸透しているか。数学によって、現在住む世界をよりよく理解できる」と熱っぽく語る。
同じく数学の「先進国」であるフランスの高等科学研究所も09年、「産業と数学」に関するシンポジウムを開いた。