2014/05/01
事故のなだれが大事故になる複雑系
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数学月間SGK通信第2号[2014.05.21]
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■「複雑系とは何か」は,別号で取り上げるとして,大規模送電網や原発は複雑系です.
2011年7月の数学月間懇話会(第7回)では,これを取り上げました.
2011年4月の米国MAMのテーマは「複雑系」でした.
米国で何度か起きた大規模停電の仕組みを解析しています.
ほんのささいな原因(多分,樹木が送電線に触れスパーク)により,
送電網に局所的停電が起きた.⇒送電網の残りの部分に過剰な負荷がかかり,健全だった部分の電線が切れる.⇒
⇒あっという間に,次々と送電網全体に停電が拡がる.
「小さな事故が雪崩となり,大きな事故を生む」という複雑系での事故の特徴です.
2011.3.11の日本の原発事故でも、同じようなことになりました.
今回の事故の引き金は地震・津波だったかも知れませんが,引き金になるのは,地震・津波だけではありません.
組織やエージェントを含め、何処に発端があるか予測できません.
複雑系は,<バタフライ・エフェクト>が起こり得る世界です. イメージ?1
複雑系の特徴
送電網ネットワーク中にある節点の次数(=その節点に集まる経路の数)の頻度分布図を作ったとき,節点の次数の高いものも残っているような(べき乗則分布)ネットワークですと,次数の高い節点が攻撃されると故障の雪崩につながります.
イメージ?2
イメージ?3
●べき乗則
大規模停電,巨大地震,所得の分布,.... いろいろな頻度分布に<べき乗則分布>が見られます.正規分布,ポアソン分布,ワイブル分布など,中心値のまわりに釣鐘型の分布を作りますが,べき乗則分布では,規模の大きい事象が起こる確率もいつまでも残っています.
被害コストの期待値は,被害コストと確率の積であり,巨大地震は巨大な被害コストをもたらすので,巨大地震の確率が小さいと言って無視することは間違いです.原発事故も同様です.
(引用文献)ーーーーー
1.2011MAM、http://www.mathaware.org/mam/2011/essays/
Cascading Failures: Extreme Properties of Large Blackouts in the Electric Grid
2.数学文化(2011),16,p113-127
今年の米国MAMの話題と日本の原発事故
3.SGK通信(2011-06)数学月間懇話会報告
http://www.sugaku-bunka.org/modules/journal/journal_main.php?block_id=514&journal_id=22&page_no=2#514