2014/09/07
028_結晶で見られる多面体
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数学月間SGK通信 [2014.09.09] No.028
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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◆プラトンの正多面体は5種類あります.
これら5種類の正多面体の対称性を考慮して
方位を合わせ重ね合わせた図が以下のものです.
この図のように2つの正多面体を重ね合わせると
それぞれの多面体の対称性で共通なもの(共通部分群)が残ります.
イメージ?1
◆黄鉄鉱FeS2の結晶は,色々な外形(晶相)のものが見られます.
黄鉄鉱は愚者の金とも言われ金色できれいです.
私は,川底に金色の砂がキラキラ光って貯まっているのを見つけて
採集したことがあります.1mm程度の結晶粒ですが
皆整った多面体の形をしていました.
結晶の外形は,正6面体,正8面体,正5角12面体が基本で,
ミラー指数で言うと,正6面体は結晶面(100)面,
正8面体は(111)面,正5角12面体は(210)面で囲まれています.
このほかに,これら正多面体の切頂多面体も見られ,
また,他の指数の面(211),(321)が加わった複雑な多面体もあります.
多面体の形が連続的に変化することを示す良い自然の手本です.
黄鉄鉱の結晶は立方対称の内部構造(原子の配列)ですが,
結晶粒の外形は,どの指数の面が大きく成長するかによって変わります.
◆そこで,昔読んだ記憶のある砂川一郎の論文(1957)を
再度見てみました.奈良県や島根県にある絹雲母の鉱床や凝灰岩の
母岩中に晶出した黄鉄鉱の結晶粒の大きさと形の統計を述べています:
「小さい結晶粒では正6面体,大きい結晶粒では5角12面体の外形が多い」
晶相の変化を起こす機構は大変複雑で一概に言えませんが,
黄鉄鉱結晶の成長に伴って大きく成長する面が,
正6面体の面(100)→正8面体の面(111)→5角12面体の面(210)
と変化し晶相が変る.これは結晶面の性質と母岩(絹雲母化)との
化学的反応がかかわっているらしい.
◆今回,砂川一郎の論文中の図が,
Tシャツとして博物館グッズになっていることを知りました.
http://ameblo.jp/hakubutufes-sub/image-11876822744-12970852035.html