■非座標式標記法(ロシア式)と座標式標記法(国際式)
結晶空間群$$\mit\Phi $$は,並進群$$T$$と結晶点群$$G$$(あるいは,並進群$$T$$を法として拡張された結晶点群$$G^{T}$$)の積で作られます.
結晶点群$$G$$を用いた場合に生じる空間群をシンモルフィック,拡張された結晶点群$$G^{T}$$を用いた場合に生じる空間群を非シンモルフィックといいます.
空間群の標記法は,基本的には,群の生成元を列挙することです.まず,格子のタイプを表す記号を冒頭に置き,続いて結晶点群の生成元を並べます.国際的な標記法では,点群の生成元を,座標系の$$x, y, z$$に対応する順番で配列しますので,これを座標式標記法と言います.ロシア式標記法では,前の対称要素の方位とそれに続く対称要素の方位の関係を標記します.直前の対称要素の方向に対して,続く対称要素の方向が,直角な場合は($$:$$),平行あるいは同一面内にある場合は($$・$$),直角以外の角度で斜交する場合は($$/$$)を,間に置きます.国際記号はInternational Tableで用いられているもので,この標記法れが標準ですが,群の構造情報が詳細明瞭に表現できるロシア式は,空間群の理論を扱うのに欠くことはできません.
230種類ある結晶空間群を分類する7つの晶系の内から,Orthorhombic晶系(慣用的に”斜方晶系”と呼ばれる)をとり上げ,説明します.
■Orthorhombic晶系の部
単純格子のタイプは,互いに直角な$$a, b, c$$軸よりなる.単位胞の形は,直方体(レンガのような形)です.