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投稿日時: 2022/02/18 システム管理者

    我々はすでに等式の対称性に言及し始めている.物理理論の分類が,これらの理論の基礎方程式を不変に保つような自己同型群に基づくことを強調するのは重要である.このような分類への道は,クライン(1872)の「エルランゲン計画」-幾何学から,等長,アフィン,射影の不変部分を分離する-,および,古典電磁気学と特殊相対性理論の方程式が許容する変換の分析に関するローレンツ(1895)とアインシュタイン(1905)の研究によって切り開かれたものである.基本群の変化は,常に理論構造を変える. 
したがって,ニュートンの古典力学は,ガリレオ・ニュートン変換, 
$$x_{i}^{'}=x_{i}+v_{i}t , x_{i}^{'}=x_{i}+a_{i} , x_{i}^{'}=D_{ik}x_{k} , t'=t+b , D_{ik}D_{kj}=\delta _{ij}$$
($$\delta _{ij}=1$$ for $$i=j$$, $$\delta _{ij}=0$$ for $$i \neq j$$, $$i, j, k=1, 2, 3$$)
の下で不変な命題の集合であり,均一で等方な幾何空間と均一な時間に対して,連続した10のパラメーターの対称群を形成している.
運動法則は、これらの変換によって関連づけられたすべての等価座標系において同一の(共変)形式をとり,これには一定速度$$v_{i}$$で相対運動する慣性系(ガリレオの相対性原理)も含まれる.
特殊相対性理論,(相対論的)量子力学,電磁気学の運動方程式は,ローレンツ変換のもとでは不変であり,最も単純な場合,
$$x'_{i}=\displaystyle \frac{x_{i}-vt}{\sqrt{1-\beta ^{2 } } }, x'_{2}=x_{2}, x'_{3}=x_{3}$$,
$$t'=\displaystyle \frac{t+(v/c^{2})x_{1 } }{\sqrt{1-\beta ^{2 } } }, \beta =\displaystyle \frac{v}{c}$$

これらの方程式は,光速$$c$$よりも小さな速度で$$x_{1}$$軸に沿って移動する相対論的に等価な(慣性)座標系を関係づけている(アインシュタインの相対性原理).
   上記理論の不変性は,幾何学的座標と時間からなる4次元空間$$\left\{ x_{1}, x_{2}, x_{3}, x_{4}=ict \right\} $$における均質性と等方性を反映している(虚数単位$$i$$の導入は時間座標を区別し,理論で空間を数学的対象として見ることを強調するものである).ローレンツ変換は,この空間の測度(4次元ベクトルの長さの2乗,$$x_{1}^{2}+x_{2}^{2}+x_{3}^{2}+x_{4}^{2}-c^{2}t^{2}$$)を保存し,したがって量$$c$$の不変性が導かれるのである. 
1918年,クラインKleinの後継者であるエミー・ノーザーEmmy Notherは,クラインの研究を用いて,有名な定理*を証明した.
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* この定理の歴史と参考文献については,V. P. Vizgin (1972)を参照.
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「座標の連続的な変換と,それに伴う作用積分の変化を消滅させる場の関数の変換には,ある不変量,すなわち保存される場の関数とその導関数の組み合わせが対応する」.Notherの定理から,一般に,任意の孤立した物理系に対して,運動量の3成分,角運動量の6成分,エネルギーという10の保存される運動学的量が存在することが導かれる.これらはそれぞれ,平行移動,幾何学的空間の直交変換(およびガリレオ・ニュートン変換,ローレンツ変換),時間測定の原点の変位を表す変換に対応する不変量である. 
   保存則と物理法則の対称性の関係は,リチャード・ファインマンFeynmanの言葉を借りれば,「ほとんどの物理学者はいまだにどこか唖然としている......」という.これらの続ながりは非常に興味深く美しいものであり,物理学で最も美しく深遠なものの一つである(R. Feynman, R. Leyton, and M. Sands, 1965, pp.52-3, 52-4; A. A. Bogush and L. G. Moroz, 1968 も参照のこと).研究対象の現象に対する法則が微分方程式や代数方程式の言語で定式化されている物理理論であれば,全く同じ方法で対称変換群とそれに対応する不変量を求めることができる.結晶物理のテンソル方程式を例に,このことを説明しよう. 
その一例として,誘電体中の変位ベクトルと電場ベクトルの関係式,すなわち誘電体中の誘電分極現象を記述する式(p.314)がある: 
$$D=\varepsilon E$$ あるいは, $$D_{i}=\varepsilon _{uj}E_{j}$$,   $$i, j=1,2,3$$             (1) 
この例を一般化して,均一なテンソル「効果」場$$A_{pq \ldots r}$$と,「作用」場 $$B_{ij \ldots k}$$の関係式を書き下すと,
$$A=aB$$ あるいは,$$A_{pq \ldots rij \ldots k}=a_{pq \ldots rij \ldots k}B_{ij \ldots k}$$, $$p,q, \ldots ,r,i,j, \ldots ,k=1,2,3   $$(20) 
テンソル$$A, a, B$$を包含直交群$$ \infty \infty m$$で定義すると,それらの成分の変換方程式は次のような形になる.
$$A_{p'q' \ldots r'}=\chi (D)D_{pp'}D_{qq'} \cdots D_{rr'}A_{pq \ldots r}$$ $$p',q', \ldots r',p,q, \ldots r=1,2,3$$ (21)
テンソル$$a, B$$についても同様の式がある[式(2),p315と比較せよ].
式(20)は物理法則を表しており,テンソル$$A, a, B$$の関係は群$$ \infty \infty m$$で許容されるどの座標系でも保存されるはずである.すなわち,式(20)の左辺と右辺は,直交変換の影響を受けて同じように変化する(物理方程式の共分散(covariance)の原理). 
$$A=aB$$ (系$$X_{1} X_{2} X_{3}$$)$$ \Longrightarrow $$$$A'=a'B'$$(系 $$X'_{1} X'_{2} X'_{3}$$) (22)
しかし,テンソル$$A, a, B$$の成分は,一般的に言って,任意の変換に対して不変ではない.
テンソル$$A, a, B$$の行列が不変な直交群$$ \infty \infty m$$の最高位数の部分群は,テンソル$$A, a, B$$の対称群$$G_{A} , G_{a} , G_{B}$$となる (Shubnikov, 1949).
テンソルモデルを用いると、方程式の対称群とその解との間に有用な関係を確立することができる.
   ここで,交叉$$G_{a} \cap G_{B}$$ に属する任意の演算$$g$$を取り上げよう. 定義によれば,テンソル$$a, B$$は,この操作に対して不変である.したがって,この操作のもとで式(20)を変換すると,始めの形式になる,
$$A'=a'B' \Longrightarrow A=aB$$
および,$$g \in G_{A}$$. $$g$$は,$$G_{a} \cap G_{B}$$に属する任意の演算であるから, 
$$G_{A} \supseteq G_{a} \cap G_{B} \equiv G_{a \cap B}$$     (23)
群$$G_{A}=G_{aB}$$ および,$$G_{a \cap B}$$を,その解(これは,仮説により,物理的相互作用の効果を許容している),したがって相互作用のないテンソル場の交叉から決まる方程式の対称群と呼ぶことにする.もし,等式$$A=aB$$等価な解$$A_{i}=aB_{i}$$の集合$$ \{A}={A_{1}, A_{2}, \cdots , A_{i}, \cdots \} $$を認めるなら,
$$G_{(A)}= \cap G_{A_{i } } \cup M \supseteq G_{a} \cap G_{B}=G_{a \cap B} , G_{A_{i } } \supseteq , \subset $$ or $$ \not \supset G_{(A)} \supseteq G_{a \cap B}$$    (24)
ここで,$$G_{A_{i } }$$ または,その同型な類似物$$G_{A_{i } }^{(p)}=SG_{A_{i } }S^{-1}$$可能な解の1つの対称性を表現し,$$M$$は解系の対称化演算,$$G_{(A)}=G_{aB}=G_{a} \cap G_{(B)}; G_{(B)}= \cap G_{B} \cup M$$となる.
もし,$$A=aB$$に対応する方程式系が,非互換incompatibleであれば,解集合は空であるり,形式的に$$G_{(A)}= \infty \infty m \supseteq G_{a \cap B}$$と書くことができる.
これらの方程式に対して,関係式(23),(24)は,系の部分と全体の間に存在する一般的な関係(16),(17)を表現している. 
例えば,作用の同軸の二面体bicone$$\{E \}$$に対応する式(1)の同価解の二面体$$\left\{ D \right\} $$は,水晶の場合,方程式の対称性に一致する.
$$G_{(D)}= \infty /mmm= \infty /mmm \cap \infty /mmm=G_{\varepsilon } \cap G_{(E)}=G_{\varepsilon E}$$
(図220と比較せよ).