古典結晶群1★

投稿日時: 2022/11/02 システム管理者

◆古典結晶群
結晶空間群の数え上げは,1890年ごろ,フェドロフ(ペテルスブルグ大,鉱物学),シェンフリース(フランクフルト大,数学),バーロー(ロンドンの事業家)により,それぞれ独立に達成された.これは,X線の発見以前の19世紀末の数学的業績で,X線の発見で幕を開ける20世紀に発展する結晶構造解析の基礎となった.

◆平面をタイル張りできる平行多辺形は,平行4辺形,および,平行6辺形を基本とする.平行多辺形は,平行移動だけで平面を隙間なくタイル張りし,周期的な平面(結晶平面)を作る.
結晶空間群の数え上げの方法を理解するために,2次元の結晶空間群(壁紙模様)の例で説明する.平行多辺形である有限図形タイルから出発し,これを等価な部分(非対称要素)に分割する.結晶空間(結晶平面)は周期的なのでデジタル化されている(つまり,単位胞がある).対称性で,平行多辺形を分類すると:一般的な平行4辺形,ひし形,長方形,正方形;一般的な平行6辺形,つぶされた正6角形,正6角形:がある.これらの有限図形を等価な部分に分割したものがこの図.これらの分割様式を対称性で分類すると,共型群13種が得られる.さらに,共型群の3種からは,非共型群4種が導けるので,計17種の2次元空間群(壁紙模様)が得られる.
フェドロフらは,3次元空間群の導出で同様な方法を用いた.2次元では平行多辺形から出発したが,3次元ではフェドロフの平行多面体5種から出発する.

結晶空間=周期的な空間.つまり,デジタル化さた空間なので,単位胞が存在する.点群1点を特異点とする対称操作の組合せが作る群)が,結晶空間の周期性と両立する場合は,回転対称操作には制限(5回回転対称などが周期性と両立しない)が生じ,結晶空間で両立する点群は結晶点群と呼ばれる.
古典結晶群が対象とするのは,「幾何空間」内の対称操作のみだが,幾何空間に色などの特性次元を付与した「超幾何(色)空間」内の対称操作を扱う,黒白群,色付き群,などの一般化された群が発展する.