X線の散乱

投稿日時: 2022/11/06 システム管理者

X線の入射波および散乱波に対してはBorn近似が適用でき,入射波Ψk(r),散乱波Ψk(r)の状態関数をそれぞれ平面波で近似してよい.空間Vで規格化されたこれらの状態関数を下に示す.
exp[iωt]Ψk(r)=(1/V)exp[i(ωt2πkr)]
exp[iωt]Ψk(r)=(1/V)exp[i(ωt2πkr)]

ここで,2πk,2πkはそれぞれ入射波,散乱波の波数ベクトルである.散乱ベクトルq
q=kkで定義される.
構造解析の対象となるのは,X線の弾性散乱分である.
弾性散乱では,|k|=|k|=1/λq=2sinθ/λが成立する(ここで,2θは散乱角;λは実験に用いたX線の波長;Vは散乱体の体積).X線の散乱を惹き起こす原因となるポテンシャルは物質の電子分布密度ρ(r)であるので,散乱振幅F(q)≡<k|ρ(r)|k>は:
F(q)=+ρ(r)Ψk(r)Ψk(r)d3r=(1/V)+ρ(r)exp(i2πqr)d3r
このように,散乱振幅F(q)≡<k|ρ(r)|k>は,ρ(r)のFourier変換Trにほかならないことが理解される.
F(q)=Tr[ρ(r)]

ρ(r)=Tr1[F(q)]

Fourier変換で結ばれるρ(r)F(q)の対称性は同一である.

結晶格子Ш(r)は,lim

Ш_{N}(r)=\displaystyle \sum_{1}^{N1}\displaystyle \sum_{1}^{N2}\displaystyle \sum_{1}^{N3}\delta [r-(m_{1}a_{1}+m_{2}a_{2}+m_{3}a_{3})]

\delta(x)=\displaystyle \int_{- \infty }^{+ \infty }\textrm{exp}(-i2\pi x \cdot y)dy

\rho_{0}(r)を単位胞とする周期的な電子分布は,コンボリューション★を用いて次式のように表現できる.
\rho (r)=\rho _{0}(r)★Ш(r) =\displaystyle \int_{- \infty }^{+ \infty }\rho_{0} (r)Ш(r-\tau)d^3\tau

Tr[\rho(r)]=Tr[\rho_{0}(r)★Ш(r)]=Tr[\rho_{0}(r)]・Tr[Ш(r)]=Tr[\rho_{0}(r)]・\bar{Ш}(q)]

\bar{Ш}(q)=Tr[Ш(r)] 結晶格子のFourier変換は逆格子を与える.結晶格子と逆格子は互いに双対である.

すなわち,単位胞の電子分布が結晶格子の周期で繰り返されている結晶からのX線の散乱振幅は,単位胞のFourier変換を逆格子点でサンプリングしたものである.