タグ:美しい幾何学

美術・図工 菱形30面体像の万華鏡を作る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Fig.1

 菱形30面体と12・20面体とは互いに双対な多面体です.双対の説明はFig1に図示しました.さらに,12・20面体は互いに双対な正12面体と正20面体とを重ねたときの共通部分でもあります.

注)Fig.1の重な合わせでは,共通部分はサッカーボール[5,6,6]の半正多面体ですが,正20面体のを少しづつ大きくしていくと,[5,3,5,3]の半正多面体(12・20面体)になる点があります.

 

 

 

 

菱形30面体の頂点は,正12面体の頂点(3回軸の位置)と正20面体の頂点(5回軸の位置)とから構成されています.菱形面の短対角線(正12面体の正5角形面の辺長)をaとし,長対角線(正20面体の正3角形面の辺長)をbとすると,a:b=1:Φ=2:1+√5 の黄金比です.正12面体の頂点のうちの8個を使い,一辺Φaの立方体を内接できるので,正12面体の外接球の半径は,R12=√3Φa/2です.
一方,正20面体の外接球の半径は,R20=(b/4)√(10+2√5)です.

寸法をa=2,b=1+√5,Φ=1.618にすると,R12=2.80,R20=3.08が得られます.
実際の製作は展開図に記入した寸法(10倍)にすると作り易いです.

ミラー紙(厚さ0.25mm程度の厚紙)を使って,展開図の鏡を作りピラミッド(内側が鏡)のような形に組み立てます.O点は立体(ピラミッド)の中心に相当し,O点の周囲は光の窓になります.覗くのは菱形面(ピラミッドの底面)の外部からです.

 

 

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美術・図工 凸6角形タイルによる平面のタイル張り★

平面は2次元ですから独立な並進ベクトルは2つ a, bです.従って,
a, bを2辺とする平行4辺形が平面を充填する並進の単位(単位胞)となります.
3つの並進ベクトルがとれる凸平行6辺形もタイル張りが可能ですが,
a, b, cの間に, c=b-aの関係があり,このうちで独立な並進ベクトルは2つです.

 

 

 

 

 

 

平面をタイル張りできる凸6角形の形は,
ここに示した平行6辺形を含むタイプの他に,
さらに2タイプあることを,ラインハルトが学位論文で証明しました(1918)
凸6角形タイルで平面の充填ができるものは,
以下に図示する3つのタイプです.

 

 

タイプ1:2つのタイルが並進の単位を作る
(凸平行6辺形はこのタイプに含まれる)
タイプ2:4つのタイルが並進の単位を作る
タイプ3:3つのタイルが並進の単位を作る

 

 

 

 

 

 

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美術・図工 御殿まり★★

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数学月間SGK通信 [2017.09.12] No.184
<<数学と社会の架け橋=数学月間>>
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とっとりサイエンスワールドin倉吉は,8月27日に開催されました.
1,250人の来訪者があり,例年のように盛況でした.万華鏡は120人作りました.
昨年は,鳥取サイエンスワールドの終わった直後,
翌々日に地震がありびっくりしました.多くの方が避難生活をし,
サイエンスワールドの会場だった梨っこ館もガラス天井が落ちたそうです.
隣のプールは7月20日になってやっと利用開始にこぎつけました.
白壁土蔵群,赤瓦館でも地震の被害がありました.
今年,その赤瓦二号館を訪れたとき,見つけた御殿まりの写真です.



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これらはみんな一人の方が作ったものだそうです.お会いしたいものでしたが,
残念ながら不在でした.どれも良いできですね.
正6面体群(正8面体群)と正12面体群(正20面体群)が美しく目につきます.

Q1:さて私はどれを選んだでしょう?

私が選んだのは,前者の方でした.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これと同じ対称性の図形を掲載しましょう

 

 

 

 

 

 

 

これはともに,半正多面体[4,6.6]ですが,立方体のx,y,zの方向に,4回軸があり,
体対角線の方向に3回軸があります.2回軸のある方向も確認してください.
結局,これらは皆,球面正6面体{4,3}や正8面体{3,4}と同じ対称性(点群)になります.

Q2: 球面正12面体{5,3}や菱形30面体はどれとどれでしょう.

これらの対称性(点群)は,正12面体やその双対の正20面体と同じです.
菱形30面体は,12・20面体;あるいは半正多面体[3,5,3,5]の双対図形で,これら3つの対称性はすべて同じです.

Q3: この他に半正多面体[6363]があります.探してみましょう.

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美術・図工 反転の利用ーパップスの定理★★

■反転の利用

反転の性質を使うと,パップスの定理の様な難しいものを簡単に証明できます.

このような図形はアルベロス
(靴屋のナイフ)といいます.
この中に面白い幾何学があります.

 

 

 

 

円弧αと円弧βに挟まれたア
ルベロスの領域に,互いに接す
るように円のチェーンω0, ω1,
ω2, … があるとき, 円ωnの
中心と直径ABとの距離は円ωn
の直径のn倍である.
(パップスの定理)

 

 

 

 

 

[以下の証明ができます]
円ω2の中心は,線分ABから円ω2の直径の2倍だけ離れていること.
① 点Aから円ω2へ接線を引く.両接点を通りAを中心とする円γは,円ω2
と直交します.(なぜなら,円の接線は接点での半径と直交するから)
② γを反転円にして,色々なものを反転してみましょう.
円ω2 は自分自身に.円α,β は,それぞれ 直線α’,β’に,
円ω1,ω0 は,それぞれ円ω1’,ω0’に,なります.
③ 円ω2,ω1’, ω0’の直径はすべて同じだから,パップスの定理が証明
された. (なぜなら,平行な直線α‘とβ’に挟まれているから)

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美術・図工 円による反転の性質★★

■円による反転鏡映の性質
①反転円の円周上の点は,反転しても元の点と同じ位置.
②反転では,円は円に変換される(直線も半径∞の円の仲間)
下図に反転円(赤い円)による,反転鏡映の例を示します.
●図1・反転円Oと交差する円Cは,交差の2点を共有する円cに変換される.
●図2・反転円Oと直交する円Cは,自分の上に変換される.
円周に直交するような反転円で分断された円の2つの部分は,反転円によるそれ
ぞれの鏡像になる.
●図3・反転円Oの中心を通る円Aは,直線aに変換される.
特に,円Bが反転円Oと交差する場合は,交差する2点をよぎる直線bに変換される.
③反転円が直線なら,普通の鏡映像になります.
直線鏡の組み合わせで作られる映像は,良く知られた万華鏡です.
反転円を用いたアポロニウスの窓も拡張された万華鏡の映像と言えるでしょう.

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美術・図工 ダビンチの星型

写真の星型は,立方体の6つの面に,正3角形の面で出来ている正4角錐が乗っています.芯になる立方体の1辺の長さを1とすると,星型の頂点の高さは√2/2,もし,星型頂点の高さを立方体の辺の長さの1/2に短縮すると,星型の凹入角がフラットになり体心格子のデリクレ胞(菱形12面体)になります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■星型の展開図です.

 

 

 

 

 

 

 

 


 

展開図はいろいろなものが考えられますが,作りやすいように設計するとよいと思います.

■星型正24面体と菱形12面体

 

 

 

 

 

 

 

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美術・図工 雪の結晶★

「雪は天から送られた手紙(中谷宇吉郎)」という言葉がありますが,雪の結晶が生まれ・成長した気圏の状況により,様々な形の雪片が観察できます.これらの写真の中で,絶対にありえない雪の結晶が2つあります.どれとどれでしょうか?

 (以下は,追補)
雪片の形の対称性は6mmです.これは雪(氷)の結晶の内部構造(分子配列)が外に反映されたものです.以下に氷の結晶構造の2次元模式図を示します.水分子はH2O(酸素原子O●の両側に水素原子H●が結合し,その結合角度は約120°)で,両端の水素原子は,隣の分子の酸素原子と弱い相互作用(水素結合)をしています.そのためこのような6mmの対称性の結晶になります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(注)雪片(雪の結晶)の形は,デンドライトという形です.
これは,比較的速く結晶が成長するときにできます.
金平糖も似たような現象で出来るデンドライトといえますが,
1粒の金平糖全体で砂糖結晶の方位が揃った単結晶というわけでは
ないので,それが雪の結晶とは違うところです.

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美術・図工 美しい図形と不思議な空間・続

東京ジャーミイの礼拝ホール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  

 

 

 

 祭壇の方向(西)に向かって礼拝

東京ジャーミイは,東京,代々木上原にあります.トルコ文化センターも併設されています.
この地には,昔,ロシアカザン州から避難したトルコ人によりモスクが建てられていました.
私の子供の頃,近隣の者は「マジスト寺院」と呼んでいた風情のあるモスクでした.
老朽化のため1986年に取り壊され,東京トルコ人協会の人々が中心になり,
東京ジャーミイの建設が1998年から始まり2000年に完成しました.
トルコから送られた資材を用い,オスマントルコ様式で設計され,2階の礼拝場のドームが印象的です.仕上げにはトルコ人建築家や職人が100人もかかったそうです.
毎日礼拝が行われコーランの声が流れます.特に金曜日には300人以上のイスラムの人々が礼拝に訪れます.皆,西に向かって絨毯にすわり礼拝します.ステンドガラスに西日が入ると,青い光線が,青緑色のカーペットに重なり,とても美しい光で溢れます.
イスラム教は偶像崇拝をしません.幾何学的な完璧な規則で描かれた模様が
宇宙を作った神の原理を思わせるのでしょう.
スペイン,グラナダのアルハンブラ宮殿の,さまざまな幾何学的な繰り返し模様を
表現したタイルは美しいので有名ですが,ここ東京ジャーミイも東アジアでもっとも美しいモスクと言われます.ここで見られるいくつかの幾何学模様を取り上げ鑑賞しましょう.

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美術・図工 美しい図形と不思議な空間

説教壇

 

 
東京ジャーミイ(代々木上原,東京)にある装飾です.写真左Fig.1は説教壇の横にある装飾です.写真右Fig.2はステンドグラスです.
どちらも複雑な図形ですが美しい.
これらの図形の構成を調べて見ましょう.

 

 

 


  Fig.1                 Fig.2 
■Fig.1の図形の構成を,以下のFIg.3で説明します.
Fig.3の一番左は辺の長さが黄金比の2等辺三角形です.
つまり底辺を1とすると,等しい2辺は1.618...,頂角は36°,両底角は72°です.
真ん中の図は,正5角形の中にできる星形で,
星の頂角は黄金比の三角形にでてくる頂角36°と同じです.
一番右の図は,この星型とこの星型を180°回転したものを重ね合わせたものです.
東京ジャーミイの美しい図形Fig.1には,星形を2つ重ね合わせたものが中心にあることに,お気づきでしょうか.

 

 

 

Fig.3

 

 


Q:星形をこのように重ね合わせた図形の対称性は?
A:まず,星形の対称性は.点群5mです(5は5回回転対称軸,mは鏡映面).
2回回転対称軸2が生じるように重ね合わせたので,
重ね合わせた星形の対称性は,結局,2⊗5m=10mmの点群になります.
あるいは,星形の点群5mを「法」にすると,10回回転操作(36°の回転)は
{1,10(mod5m)}のような,位数2の対称操作として理解できます.
注)数学の言葉を使うと,次のように表現されます.
点群10mmは,点群5m(これは点群10mm内の正規部分群)を核として,
群{1,10(mod5m)}に準同型.
この考え方は,奇妙なもので,36°回転を2回続けると元の星形に重なるから
これを振り出しに戻ったと見なすと,我々の3次元ユークリッド空間では
360°回転しないと元に戻らないのに,この奇妙な空間では,
2x36°=72°回転すると元に戻ることになります.
■Fig.2のステンドグラス窓の模様は,繰り返し模様の一部です.
この繰り返し模様をFig.5に再現してみました.

 

 

 

 

 

 


       Fig.4             Fig.5

「正5角形と180°回転した正5角形を重ね合わせた」星型パーツ(点群10mm)を内角が108°と72°の菱形を単位胞とする格子に配置して(Fig.4)繰り返し模様を作ります(Fig.5)です.
この菱形格子は正6角形(正3角形)のように見えますが,
上下の方向が左右の方向に比べてすこし長く,歪んでいます.
正5角形や正10角形(どちらも最低でも5回対称性がある)を周期的に並べることは不可能ですから,5回対称性が全域で支配するような格子はできません.「正5角形とその180°回転したものを重ね合わせた」星型パーツの対称性(10mm)は,そのパーツの内部だけを支配する(局所的)ものです.
この繰り返し模様の対称性(平面群)には,2回軸と水平および垂直に鏡映面があり,記号でいうとP2mmの対称性です.

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美術・図工 エッシャーの「極限としての円」★★

■エッシャーのトリック(引用先:コクセター論文)

M.C.エッシャーの「極限としての円」Circle limit IIIを鑑賞しましょう(図左).
この円盤内は双曲幾何の世界(ポアンカレの円盤モデル)です.
この円盤内を旅する人は,円の縁(世界の果て)に近づくほど時間がかかる.
つまり,[世界の果てに到達するには無限の時間がかかる]ようになっています.
この世界で定義される直線(最短時間で移動できる経路)は,円盤世界の縁で直交する円弧です.
エッシャー作品(図(左))の円盤は,魚の流れを示す白い線で分割された双曲面の
[4,3,4,3,4,3]分割のように見えますが,実は図(中)に示すような,黒い線で分割した{8,3}正則分割です.
白い線は,双曲幾何の円盤世界の縁に80°で交差し,直線ではないのです.
図(中)の正8角形の黒い線がこの円盤世界の直線であることは,図(中)に書き込んだ赤い円弧
(いずれも円盤縁で直交する円弧)を見れば理解できるでしょう.
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双曲平面の正8角形タイルは,双曲平面の直線(円盤の縁で直交する円弧)で囲まれています.
タイルの大きさは円盤の縁に行くほど小さく見えますが,円盤内は無限に広い双曲幾何平面なのですべて同じ大きさです.
1つのタイルの中には4匹の魚がおり中心に4回軸があります.
正8角形の頂点には3回軸があり,魚の白い流れは3回軸の場所に集まっています.
エッシャーは{8,3}分割に用いる直線をわざと隠し,白い流れが分割であるようなトリックを見せます.
もちろん,白い流れの円弧(直線ではない)に関して鏡映対称はありません.

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美術・図工 エッシャー作品の生まれるまで★

■エッシャー作品の生まれるまで

 

 

 

 

 

 

 

 


コクセター               エッシャー
直角3角形(6,4,2)            直線魚のモチーフ    「極限としての円I」
双曲面の{6,4}分割を細分                       Circle Limit I

コクセターとエッシャーはオランダで開催された1954年の国際数学者会議で出会いました.
1958年にコクセターはこの分割を掲載した論文*をエッシャーに送り,
これがエッシャーの「極限としての円」の作品群を生むことになります.

*By S.H.M.Coxeter
Crystal Symmetry and ItsGeneralizations (published in the Transactions of the RoyalSociety of Canada in 1957).

 続く⇒ 極限としての円Ⅲ

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