掲示板

note.com投稿記事

産業化社会の受身から脱しよう

産業(化)社会

産業化社会では物が豊富でなんでも売っているので,人々は受身になってそれを享受するようになりました.ものを買うだけの都会の消費生活です.その昔,私たちは手に入らないものを工夫して作るのが楽しみでした.しかし今や,個人では作れない高レベルのものが安く売られている時代です.少年の頃のラジオ作りをやったあの楽しみが奪われたのです.コンピュータもマイコンと呼ばれた時代は楽しんで作りました.今でも作る人もおりますが,高性能なものがデザインも良く作るよりも安く手に入るとなれば,やる気がなくなります.TVの修理にしても,基板ユニット部品を丸ごと交換するので,エンジニアは自嘲をこめて自分をチェンジニアと呼ぶ時代です. 産業化社会は,都会の消費者のように豊富な物品を享受する受身の生活を浸透させました.

産業(化)社会の後に到来する脱産業社会

脱産業化社会は情報化社会になるらしいのですが,産業化社会を享受しすっかりやる気を失った受身の人間が大多数の社会ですので,主体性のない腑抜け社会,バーチャルの社会であります.はやく本当の情報社会を作りたいものです.
今や,政治も文化も,スポーツ観戦と同じ,自分がやっている気になるだけのバーチャル社会であります.主人公たるべき国民が観客化しているのです.TVはこのような受身の人間の洗脳支配に使われています.そのようなものでは情報社会になり得ません.本当の情報化社会になれば,それぞれ個人が自分で考えそれを発信できる社会になるでしょう.

現状のTVは限られたコメンテータやタレントが支配し,メジャーな情報がすべてを押しつぶし隠ぺいしています.マスコミ・メディアは隠れた問題を発掘し木鐸となる勇気はなく,叩ける弱いものに集中攻撃をする.なんと骨のないことか.それでも一応,何でもかんでも情報はそろえてあります.その豊富さは,逆に自分がやらずとも専門家がいる,あるいはすでに周知のことなのだと思わせることで,やる気を失わせガス抜きをしてしまう.あるいは,自分で研究して作らなくても既にあるということで開発意欲を消してしまう.逆説的な言い方をすれば,自分が選手ではないのに,ワールドカップやオリンピックで戦っているつもりになるばからしさに似ている.最大の問題は,民主主義の主体たるべき国民が観客化していることで忌々しい限りです.選挙でも変わらない,何をやっても変わらない政治に対する無力感が,観客化した受身の人々をますます増加させています.

私たちは正規分布の一点ではない

投票所が閉まって,まだ1票も開票されていないのに当選確率のでるバカらしさを見てください.少なくとも自分の入れた投票が開票されてからにしてほしいものだ.大体,世論調査というものや統計は,個人を正規分布の1点としか見ないのです.個人の個性は無視されます.RDDの世論調査も投票所の出口調査も,私は聞かれたことがありません.私の意見はどこにも反映されていないのだが,そんなことにかかわらず大勢は決まっているという現実がある.世論調査や選挙報道は,集団の統計量(巨視的な数値)だけに関心があり,私たち個人の微視的な考慮はできません.また,統計量は因果関係を論ずる論理的なものでもありません.皆様が今関心をお持ちの新型コロナ感染拡大を例にするなら,巨視的と微視的の視線の違いは,疫学統計は集団の巨視的な数値として死亡率や感染率を取り扱うが,患者の治療にあたる医師は担当する患者一人一人に目を配るというところです.
現状のビッグデータ解析は,手の届かないところから運命の決定が下りてくるようで気持ちが悪い.まだまだ不確かであります.このような未成熟情報化社会のマイナス面が,選挙投票率を低下させ,政治への関心を低下させています.さらに,国会で論争もなされない議会軽視がこの風潮をさらに助長しています.

しかし,情報社会は我々個人が主体的に発言できるプラス面があるはずです.声の大きいマスメディアに支配させていてはいけません.脱産業化時代になろうとしているのに,受身の享受体質ではいけません.個人が統計集団の中の1点ではなく,個人がそれぞれ自分で考える時代である必要があります.

(参考)産業化社会については,中岡哲郎の論説をご覧ください.

Fibonacci数列の出現

$$0$$と$$1$$だけが並んでいる語を考えます.そのような$$n$$桁の語を$$n$$-bit語と呼びます.
Q:連続して$$1$$を含まない$$n$$-bit語はいくつあるでしょうか?
A:
(1) $$n=1$$のとき,そのような語は,$$0, 1,$$ですから,計2個あります.
これを$$a(1)=2$$と書きます.
(2) $$n=2$$のとき,そのような語は,$$00, 01, 10$$で,$$a(2)=3$$個です.
$$11$$は$$1$$が連続するので条件に合いません.
(3) $$n=3$$のとき,そのような語は,
$$n=2$$のときの語の末尾に$$0$$を付加した,$$000, 010, 100$$の$$a(2)$$個と,
$$n=2$$のときの末尾に$$1$$を付加したものと言いたいところですが,
$$1$$の連続を避けるために,$$n=1$$のときの語に$$01$$を付加し,$$001, 101$$の$$a(1)$$個です.これらは,互いに背反するので,この両ケースを合わせて,$$a(3)=a(2)+a(1)=5$$ となります.

■連続した1のない語の数の数列$$a(n)$$は,このような手順(一般の$$n$$で成立)で作れ,$$a(1)=2, a(2)=3, a(3)=5,・・・・・$$と続き,
結局,$$a(n)=a(n-1)+a(n-2)$$が得られます.
これはフィボナッチ数列の再帰的な定義そのものです.
フィボナッチ数列$$F(n)$$は,$$1,1,2,3,5,・・・・・$$ですから,この問題の$$a(n)$$は
3項目から始まるフィボナッチ数列です.$$a(n)=F(n+2)$$

Q:それでは,連続した$$111$$を含まない$$n$$-bit語の数はいくつでしょうか?
A:
これも同様な議論で,$$a(n)=a(n-1)+a(n-2)+a(n-3)$$ となることが証明できます.

Q:$$n$$個のコインを順番に投げて,連続して表がでない確率を求めよ.
A:連続して表の出ないに相当する語の数は$$a(n)=F(n+2)$$でした.
$$n$$個のコインを順番に投げて実現する状態数は$$2^n$$ですから,求める確率は$$F(n+2)/2^n$$となります.

練習問題
Q:
1ドル札と2ドル札のみを使い,$$n$$(整数)ドルを払う方法の数$$B(n)$$を求めましょう.(同じ種類の札は区別しませんが,札の出る順番は区別します)

A:
1.$$n=$$1のとき:2ドル札は0枚で,1ドル札1枚出すしか方法はありません:
  方法$${1}$$のみで,方法の数は$$B(1)=1$$
2.n=2のとき:2ドル札0枚なら{1,1},2ドル札1枚なら{2}で,
  方法の数は B(2)=2
3.n=3のとき:2ドル札0枚なら{1,1,1},2ドル札1枚なら{2,1},{1,2}で,
  方法の数は B(3)=3
4.n=4のとき:2ドル札0枚なら{1,1,1,1},2ドル札1枚なら{2,1,1},{1,2,1},{1,1,2},2ドル札2枚なら{2,2}で,
  方法の数は B(4)=5
(注意)同じ種類の札は区別しませんが,違う種類の札が出る順番は区別しています)

これらの結果を考察すると,
B(n)はB(n-1)の方法に1ドル追加したものと,B(n-2)の方法に2ドル追加するものとの和になる.
2ドル追加の方法に{1,1}を追加する方法があると思う人がいるかもしれないが,追加する2つの1のうちの始めの1は,B(n-1)個の方法に繰り込まれ,すでに存在し,それに1を追加することは,すでに前者の項に含まれている.ゆえに.
B(n)=B(n-1)+B(n-2)
かくして,この方法でnドル支払う方法の数の再帰的な定義が得られました.
これはフィボナッチ数列
1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, ・・・・・
の定義と同じです.


(注)この記事は,Fibonacci and Lucas Numbers with Applications, Thomas Koshy, Wiley, Ch.4 を参考にしました.

ケプラーから宇宙エレベータまで

■お知らせ
7月22日~8月22日は,数学と社会の架け橋=数学月間です.この期間は,22/7=3.14(π)と22/8=2.71(e)に因みます.毎年,7月22日に数学月間懇話会を開催していますが,今年(第16回)は集会ができないので,
ZOOMを用いリモート(参加無料)で行います.

数学月間期間内に,次の4つの講演を行います.
●7月22日,15:00~16:30,AstronomyとAstronautics(ケプラーから宇宙エレベータまで),八坂哲雄(九州大学名誉教授)
●7月23日,15:00~16:30,Do★MATH同志社中学校数学博物館の紹介,園田毅(同志社中)
●7月29日,14:00~15:30,感染症の数理モデル,稲葉寿(東大)
●8月22日,15;00~16:30,X線や中性子で見る表面・界面,桜井健次(元物質・材料研究機構)
主催●NPO法人数学月間の会
参加方法●会員でなくても参加でき,無料ですが事前申し込みが必要です.
氏名,メールアドレス,参加日,を明記して,sgktani@gmail.comまで申し込むか,http://sgk2005.saloon.jpでオンライン参加申し込みができます.
後ほど,各回のミーティングIDとパスワードをお送りします. 
***************************************************************************************************

7月22日(月間初日)には,八坂哲雄氏の表題の講演があります.
今回の記事は,八坂哲雄氏の講演の予備知識になるように書きました.

■ケプラー

地動説の始まりはコペルニクス(1510年)です.地動説を支持したガリレオやケプラーはコペルニクスの死後の20~30年後に生まれます.ケプラーは1571年生まれで,1599年にティコ・ブラーエのもとで働き始めますが,ティコ・ブラーエはその1年半後の1601年に亡くなります.ティコ・ブラーエは20年以上の長きにわたって正確な天体観測を行ってきた偉大な観測者です.
ケプラーはティコ・ブラーエの観測記録から火星の記録をもらい,太陽に対する火星の軌道の解明を手掛けました.天体の逆行運動を合理的に説明でき地動説に立ち,円軌道を仮定し解明を進めましたが,どうしても観測値と$$8’$$の誤差がでます.苦心の末,ケプラーは火星の軌道は円でなく楕円であることを発見しました.ケプラーの発見した惑星の軌道に関する3つの法則は(1609年,1618年):
第1法則
惑星の軌道が円ではなく楕円である.太陽の位置は楕円の焦点の1つである.当時,惑星の運動は円であると信じられていたが,火星のデータは円では説明ができなかった.
第2法則
「面積速度一定の法則」
面積速度とは,惑星の位置ベクトルと速度ベクトルの外積なので,ニュートン力学の「角運動量保存の法則」に同じ.
第3法則
惑星の公転周期の2乗は,軌道の長半径の3乗に比例する.
公転周期の長さは楕円軌道の長半径のみに依存し,楕円軌道の離心率に依存しない.楕円軌道の長半径が同じであれば,円運動でも楕円運動でも周期は同じになる.


これらの3つの法則は,ケプラーの死後(13年後)生まれたニュートンによるニュートン力学(万有引力)で,すべて導くことは容易ですが,ニュートンがやったように,逆に,ケプラーの法則からニュートン力学を作るのは非常に難しいことです.ニュートンの天才が必要でした.

■静止衛星から宇宙エレベータ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さん,BS放送(波長25mmのマイクロ波)の電波を受信するパラボラアンテナは,例えば,東京では,方位角224°(南西),仰角38°に向けます.これは,赤道上空にある静止衛星の方位です.

静止衛星は,赤道上空約$$h=36,000$$[km]の静止軌道にあり,地球の自転と同じ周期で公転しているので,地球から見ると静止しているように見えます.地球の赤道半径は,約$$R=6,400$$[km]ですから,静止軌道の半径は,約$$r=R+h=42,400$$[km],静止軌道の一周$$2πr=266,000$$[km]を,周期$$T=24$$[時間]で回りますから,秒速$$3$$[km/s]となります.
地球の自転と同じ角速度で地球の周りを公転する静止衛星は,静止軌道上で遠心力と地球に引かれる重力が丁度釣り合っています.衛星が地球から見て静止(衛星の公転の角速度を地球の自転の角速度と同じに保って,つまり,角速度$$ ω=2π/T=7.3×10^{-5} $$[rad/秒])している状態で,もし衛星の軌道半径が静止軌道のより小さくなれば衛星は地上に落下するし,静止軌道の半径より大きな軌道半径になれば衛星は地球から離れていきます.それでは,静止衛星を上・下(地球から遠くなる・地球に向かう方向)にすこしづつ伸ばしていけば,静止衛星で長く伸びたものが作れるでしょう.これが宇宙エレベータの原理です.これを実現するために,どのような研究がなされているでしょうか,八坂哲雄氏の講演を聞きましょう.

宇宙エレベータの発案は,宇宙旅行の父,ソ連のコンスタンチン・ツィオルコフスキー(1895年)です.軌道エレベータ,ヤコブの梯子などの呼び名もあります.

クバンチクの問題5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漫画が面白いので,問題を訳してみました.問題3は難しいです.

■空間的な想像力を練習してみませんか?
数学,プログラミング,物理学など,科学技術のさまざまな分野で役立ちます.
ステレオメトリ(空間幾何学)の知識がなくても解決できるいくつかの問題を次に示します.

1.平面で立方体をカットして,切り口が3角形や4角形にするのは簡単です(図参照).
切り口が正6角形になるようなカットの仕方を描きなさい.

2.立方体「キューブ」は3×3×3個の単位立方体からできています.
次のものを描きなさい;
a)中央の立方体と中央の立方体と共通の面を持つ立方体で構成される「ハリネズミ」.
[(訳注)「ハリネズミ」とは,中央の立方体に面でくっついている立方体を含む立体の形と解釈します.エッジだけではない]
b)角の立方体を取り除いたときの「ハリネズミ」.
c)「キューブ」から「ハリネズミ」を削除するとどうなりますか.

3.問2のばらばらの「ハリネズミ」で空間全体を埋めることは可能ですか?

4.四面体のそれぞれの面ごとに,面に平行な2つの平面を描きます.これらの平面は四面体をいくつの部分に分割しますか?

クバンチクの問題4

ロビンソンは,円形の無人島に流れ着きました.ロビンソンが海岸の小屋を出て,西に3 km,南に4 km移動した後,彼は海岸に出ました(その日は小屋に戻りました.).翌日は,ロビンソンは小屋を出て南西に10 km行くと海岸に出ました.1日後,ロビンソンは海岸沿いに島を一周することにしました.彼が歩く一周の距離はどのくらいありますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A.約16 km
B.約31 km
C.約63 km
D.約113 km
E.正解は異なります。

 

■解答です.図を描いて考えましょう.

最初の日は,AからBに行きます.(その日はまたAに戻ります)次の日は,AからCに行きます.A,B,Cは海岸にある点ですから,この3点を通る円の中心を求めれば円の半径rがわかり,島の全周囲は2πrとなります.

解答は,Dです.

この問題で紛らわしいのは,最初の日はAの小屋にもどると書いていないところです.(小屋にもどる)というのは私が補足しました.次の日の出発点をBとすると,非常に大きな円になります.半径51kmで全円周320kmになります.無人島の探検なのだから,小屋はAしかないのでしょうが,紛らわしいのではっきり出発点に戻ることを書いてほしかったです.

 

 

 

 

 

 

 

この問題は作図で解くのが良いと思いますが,座標を用いて計算で解くこともできます.西,南の方向を+にした座標で書くと,A(0,0),B(3,4),C(10/√2,10/√2)で,円の中心(a,b),半径rの円の方程式(x-a)^2+(y-b)^2=r^2

に,A,B,Cの座標を入れた3つの式を連立させて解き,半径rを知ればよいのです.

フィボナッチと反射経路数

Fibonacci  and Lucas Numbers with Applications, Koshy,p.37-38より

フィボナッチ数は,いろいろな分野に現れます.
面を密着させた2枚のガラス板(スタックと呼びます)は,図に示すように,4つの反射面を備ています.
[訳注)表面反射;2の裏側,4の裏側は考慮しないようだ]



 

 

 

 

 

 

光線がスタックに入射し,$$n$$回反射$$n \ge 0$$をするときの異なる反射経路の数$$a_{n}$$を求めたい. (L.Moser and W.Wyman,1963年) 

$$n=0$$なら反射は起こらない.図3.26に示すように光はガラス板を通り抜けるだけであり,$$A_{0}=1$$. 
図3.26

 

 

 

 

 



反射が1回あるものは,2つの異なる経路があるので$$a_{1}=2$$;図3.27. 
[訳注)表面反射は数えていない]

 

 

 

 

 



2回反射が起こる場合には,3つの可能な経路がある;$$a_{2}=3$$;図3.28.
3回反射するなら,5つの可能な反射経路があり,$$a_{3}=5$$;図3.29.
同様に,$$a_{4}=8$$;図3.30.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


一般的に,光線が$$n$$回反射されたとして,最後の反射が面1または面3で起こるなら,その前の反射は面2か4で起こらなければならない;図3.31.

 

 

 

 

 

 

 

面1上で$$n$$番目の反射が起こる経路の数は,$$n-1$$回の反射後に面1に到達する経路の数に等しい.
このようなパスは$$a_{n-1}$$個ある.
$$n$$番目の反射が面3で起こったとすると,$$(n-1)$$番目の反射が面4で起こらなければならない.
このような光線は面4に達する前に既に$$n-2$$回の反射をしていなければならず,
そのような経路は,定義により$$a_{n-2}$$個である.
したがって,加算原理により,$$a_{n}=a_{n-1}+a_{n-2}$$,$$a_{1}=2$$および$$a_{2}=3$$である.
ゆえに, $$a_{n}=F_{n+2}$$. 

 

 

 

複素屈折率の物理

異なる媒質間の界面をよぎつて進行する電磁波は,運動量保存則が成り立たない.運動量保存則は,一様な媒質中で成り立つからである.この場合,運動量の界面接線成分は保存されるが,界面法線成分は変化する.このため,界面で屈折が起こる.屈折の法則とは,運動量の界面接線成分の保存の表現である: 

 $$p_{0t}=p_{1t}$$  → $$p_{0}cos\theta _{0}=p_{1}cos\theta _{1}$$

X線で用いる入射角(grazing angle)$$\theta _{0}$$,屈折角$$\theta _{1}$$の定義は,それぞれ,界面と光線のなす角である[光学で,一般に用いられているのは,”界面の法線”と光線のなす角なので,特に注意を要する].

$$n_{1} \equiv \displaystyle \frac{p_{1 } }{p_{0 } }=\displaystyle \frac{hk_{1 } }{hk_{0 } }=\displaystyle \frac{cos\theta _{0 } }{cos\theta _{1 } }$$
物質1の屈折率は,真空に対するものとして定義され: \\
$$n_{1}=\displaystyle \frac{p_{1 } }{p_{0 } }=\displaystyle \frac{hk_{1 } }{hk_{0 } }=\displaystyle \frac{\lambda _{0 } }{\lambda _{1 } }=\displaystyle \frac{c}{v_{1 } }$$
$$v_{1}=\displaystyle \frac{c}{n_{1 } }$$であることがわかる.$$v_{1}$$は,物質1中の電磁波の位相速度.
$$E=E_{0}exp\left[ i\left( \omega t-2\pi kz \right) \right] =E_{0}exp\left[ i\omega \left( t-\displaystyle \frac{2\pi k}{\omega }z \right) \right] =E_{0}exp\left[ i\omega \left( t-\displaystyle \frac{n}{c}z \right) \right] $$
$$n$$を複素数にすると:$$n=(1-\delta )-i\beta $$ 
$$E=E_{0}exp\left[ i\omega \left( t-\displaystyle \frac{1-\delta }{c}z \right) \right] exp\left( -\displaystyle \frac{\omega \beta }{c}z \right) $$
$$\displaystyle \frac{\left| E \right| ^{2 } }{\left| E_{0} \right| ^{2 } } \equiv exp\left( -\mu z \right) =exp\left( -\displaystyle \frac{2\omega \beta }{c}z \right) $$
1)虚数部$$-\beta $$は,線吸収係数$$\mu $$に比例:
$$\mu =\displaystyle \frac{2\omega \beta }{c}=\displaystyle \frac{4\pi \beta }{\lambda }$$ $$ln\displaystyle \frac{\left| E_{0} \right| ^{2 } }{\left| E \right| ^{2 } }=\mu z$$ をoptical density という.
2)実数部$$1-\delta $$は,位相速度$$v$$と関係がある.$$\delta $$が正で大きくなれば,位相速度は増加: 
$$v \equiv \displaystyle \frac{\omega }{2\pi k}=\displaystyle \frac{c}{1-\delta }$$

 

X線に対する物質の屈折率

X線に対する物質の屈折率が$$n<1$$になること

古典的原子モデル(原子核を中心に電子が公転している)を考え,
Lorentz振動子モデル(原子核+と電子ーが互いに束縛されて振動している)を適用する.
X線電場により,原子核に束縛された電子が振動する運動方程式:
電子の電荷:$$-q$$, X線電場: $$E=E_{0}exp\left( i\omega t \right) $$
$$\ddot{r}=-\mit\Gamma \dot{r}-\omega _{0}^{2}r+\left( \displaystyle \frac{-q}{m} \right) E_{0}exp\left( i\omega t \right) $$
$$r=\displaystyle \frac{(q/m)}{\omega ^{2}-\omega ^{2}_{0}-i\mit\Gamma \omega }E_{0}exp\left( i\omega t \right) $$


分極$$P$$,分極率$$\chi ,j$$は電子の番号(単位体積に$$N$$個あるとする)
$$P \equiv \chi E=(-q)\displaystyle \sum_{unit vol}^{N}r_{j}=-\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) \displaystyle \sum_{unit vol}^{N}f_{j}E_{0}exp\left( i\omega t \right) $$
ただし,
$$f_{j}=\displaystyle \frac{\omega ^{2 } }{\omega ^{2}-\omega _{0j}^{2}-i\mit\Gamma _{j}\omega }=\displaystyle \frac{\omega ^{2}\left( \omega ^{2}-\omega _{0j}^{2} \right) }{\left( \omega ^{2}-\omega _{0j}^{2} \right) ^{2}+\mit\Gamma _{j}^{2}\omega ^{2 } }+\displaystyle \frac{\mit\Gamma _{j}\omega ^{3 } }{\left( \omega ^{2}-\omega _{0j}^{2} \right) ^{2}+\mit\Gamma _{j}^{2}\omega ^{2 } }i$$

原子散乱因子(atomic scattering factor)の定義:
$$a$$原子の原子散乱因子$$f$$とは,$$a$$原子に属する$$n$$個の電子に対して$$f_{j}$$を総和したものである.
$$f=\displaystyle \sum_{an atom}^{n}f_{j}=f_{0}+\mit\Delta f ' +i\mit\Delta f '' $$
$$f_{0}$$は,原子中の電子数$$n$$(原子番号);$$\mit\Delta f ' $$,$$\mit\Delta f '' $$は,異常分散項という.

マクロな光学定数の定義: 屈折率$$n$$,誘電率$$\varepsilon $$,分極率$$\chi $$
$$n=(1-\delta )-i\beta $$,    $$\delta , \beta \sim 10^{-6}$$,   $$\delta ( \sim 10^{-6}) \propto N$$
$$\varepsilon =\varepsilon _{1}+i\varepsilon _{2}$$
$$D=\varepsilon E=E+4\pi P=\left[ 1+4\pi \chi \right] E$$
$$\varepsilon =n^{2} \approx (1-2\delta )-2i\beta $$
$$\chi =-\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) \displaystyle \sum_{unit vol}^{N}f_{j}$$

原子内の電子はそれぞれの$$\mit\Gamma _{j}(\omega ), \omega _{0j}(\omega )$$を持ち,$$\omega _{0j}<<\omega $$の電磁場追従ではそれぞれの位相遅れを生じる[特に,原子核に強く束縛されるK殻電子は顕著].これが$$\omega \approx \omega _{0j}$$近傍で,”異常分散”を起こす.$$j$$個の電子は吸収端の振動数$$\omega _{0j}$$から高振動数側に分布する多数の振動子の集まりと見なせる.
(1)$$\omega <<\omega _{0}$$ 光と物質
$$n^{2}=\varepsilon =1-4\pi \left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) \displaystyle \sum_{in unit vol}^{N}\displaystyle \frac{\omega ^{2 } }{\omega ^{2}-\omega ^{2}_{0j}-i\mit\Gamma _{j}\omega } \cong 1+4\pi \displaystyle \sum_{in unit vol}^{N}\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega _{0j}^{2 } } \right) $$
$$n \approx 1+2\pi \displaystyle \sum_{in unit vol}^{N}\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega _{0j}^{2 } } \right) >1$$
(2)$$\omega _{0}<<\omega $$ X線と物質
$$n^{2}=\varepsilon =1-4\pi \left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) \displaystyle \sum_{in unit vol}^{N}\displaystyle \frac{\omega ^{2 } }{\omega ^{2}-\omega ^{2}_{0j}-i\mit\Gamma _{j}\omega } \cong 1-4\pi N\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) $$
$$n \approx 1-2\pi N\left( \displaystyle \frac{q^{2 } }{m\omega ^{2 } } \right) <1$$ $$N$$: (電子数 $$ \textrm{in unit volume)=} $$電子密度

 

 

単位体積中の電子数 $$N$$
Fig. X線電場により,原子核に束縛された電子が振動する.
振動ゆらぎ分だけ分極し双極子が生じる.

10回(5回)対称タイルを繰り返し並べる


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


■10回(5回)対称のタイルを周期的に並べる

10回(5回)対称は,周期的に並ぶことができません.周期的に並べることが可能な回転対称軸は,2回,3回,4回,6回対称に限られます.
10回(5回)対称タイルを周期的に配列したイスラームの繰り返しパターンを調べましょう.もちろん,5回対称軸が周期的に並んでいるはずはありませんので,自然に並べるのにうまい工夫があるはずです.このようなパターンはイスラームに特徴的で,ジャーミイのいろいろな所で見かけます.

10回(5回)対称は周期性と矛盾しますから,それぞれの10回(5回)対称が支配するのはタイルの内部だけです.

 

 

このタイルの描き方を習得するのにだいぶ工夫をしました.
作図手順の足跡として,赤色の作図補助線を残しておきましたから,
皆さんも工夫してこの図を描いてみてください.

まず,中心にある円の円周を10等分することから始めます.
円周の10等分は中心角が36°の作図で,前回に正五角形(中心角72°)の作図をやりましたから,それを応用して円周の10等分を作図してください.

 

 

 

 

 

 

この長方形のタイルが単位胞になり,これを並べることにより繰り返しパターンが作れます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この繰り返しパターンの平面群はP2mmです.

10mmという対称性の高い部分(正10角形)があります.もし,そのような対称性が全域に作用するなら,繰り返し(周期性)ができるわけがありません.10mmという点群の作用はそれぞれの赤い円内の領域に限られるので,周期性と両立できるのです.このようなイスラーム・パターンは色々な所に見受けられます.

次に,この繰り返しパターンを3つの部品によるタイル貼りと解釈してみましょう.つまり,図に示したように正10角形タイルと,ピンクのタイルと黄緑色のタイルの3種類です.
今日は,この3種類のタイルで平面が隙間なくタイル貼りされていることを確認してください.

■応用例

 

 

伝統文様で5つのブラベー格子を探そう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周期的な2次元平面では,互いに独立な並進ベクトルを2方向とれます.
これら2本の並進ベクトルが挟む平行4辺形を単位胞といいます.
並進ベクトルの組み(単位胞の形)を対称性で分類したものがブラベー格子です.
2次元のブラベー格子には,図に示す5種類があります.
そして,それぞれに対応する格子の図も掲載しておきました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■さて,以下に伝統文様を10種挙げました.
図中に赤色ベクトルで,並進の周期を描き込んであります.
図中に描き込んだ並進ベクトルの位置はいろいろ可能で,図示したものは一例です.赤色ベクトルの選び方もいろいろ可能ですが,
単位胞の形(赤色ベクトルで囲まれた平行4辺形)が
(A)正方形,(B)長方形,(C)120°の菱形,(D)任意角度の菱形, 
の4種類のどれかにあてはめるようにとれます.
2次元のブラベー格子の5種類のうち,(E)一般形の平行4辺形に属する伝統文様は,ここの例には挙げていません.
Q.それぞれの伝統文様は,A,B,C,Dのどのタイプに属するでしょうか.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詳しくは,美しい幾何学,p86~88