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平面群

koptsik-ch11-3★

色付対称の結晶点群
-古典結晶群を色置換群$$P$$および$$G^{(p)*}$$により拡大したもの-

  結晶群の新しい拡大類は,何らかの超幾何学的性質の置換群を用いて得られる.この超幾何学的性質(性質数$$p$$は2以上)は,結晶空間の点に付与されたものである.もし,結晶空間のそれぞれの点に,2つの符号(《+》,《―》)だけをとる何らかの演算子$$H$$が結び付けられているなら,性質数は$$p=2$$であり,反対称空間を扱うことになる.そこでは,次の結合された演算が作用している.
$$g'=g1'=1'g$$
ここで,$$g$$は古典的結晶演算$$g \in G$$,$$1'$$は反恒等演算で,点を固定し演算子の符号を変える.演算子$$H$$は,前にも述べたように,磁気運動量,電荷などへの演算子と解釈できる(簡潔に述べると,各点で,ベクトル$$H$$,電荷$$q$$などが定義され,これらの量は,ただ2つの符号《+》,《―》だけをとれる).点に付与された性質数$$p$$が2より大;例えば,$$p=3,4,6,8,12,16,24,48$$としよう(後で,これらの数字を選んだ訳を説明する).もし,$$p=3$$とすると,各点での演算子$$H$$は,3つの異なった値をとることができる.これらを次のように記す.
$$H, \varepsilon H, \varepsilon ^{2}H$$
値$$H$$から,$$\varepsilon H$$に変えるには,$$H$$に絶対値1の複素位相因子$$\varepsilon $$を乗じる.
$$\varepsilon =\sqrt[3]{1}$$ であるから,数$$\varepsilon $$ の通常の積則により巡回群 が定義できる:
$$\varepsilon =\sqrt[3]{1},\varepsilon ^{2}=\left( \sqrt[3]{1} \right) ^{2},\varepsilon ^{3}=\left( \sqrt[3]{1} \right) ^{3}=1$$ 
($$\varepsilon $$の高次の冪は,この3つのどれかになる)
  さらに,結合された演算を定義する.
$$g^{(\varepsilon )}=g\varepsilon =\varepsilon g$$
このとき,演算$$g \in G$$ は3次元空間中の《物質》点の直交変換(点に付与されたすべての性質は,作用後の新しい空間配置でも保存される)であり,演算$$\varepsilon $$ は,単に演算子$$H$$にだけ作用し,固定された点において,その値を変えるだけである.結合された演算の積則は直積を用いて定義できる.
$$g_{i}^{(\varepsilon _{i})} \otimes g_{j}^{(\varepsilon _{j})}=g_{i}g_{j}^{(\varepsilon _{i}\varepsilon _{j})}$$, $$g_{i}\varepsilon _{i} \otimes g_{j}e_{j}=g_{i}g_{j}\varepsilon _{i}\varepsilon _{j}$$   (1)
  すでに定義した積則を持つ結合された演算の集合が,どのような条件下で,有限位数の群を作るかという問題を研究しよう.定義により,群は演算のあらゆる冪と恒等演算を必ず含むから,有限群になるための必要条件として,演算 の冪の或るものが1になるという条件を課すことができる.
$$\left( g_{i}\varepsilon _{i} \right) ^{m_{i } }$$あるいは,より一般的に,$$g_{i}^{m_{i } }\varepsilon ^{m_{i}/s_{i } }=1 $$ 
ただし,$$m_{i}$$は整数,$$g_{i}\varepsilon _{i}$$は考察している集合の任意の演算である.(このような性質を持っている最小の整数は,対称要素$$g_{i}$$の位数で決まる.以下では,このような整数であるとする);$$s_{i}$$は$$m_{i}$$の約数:
$$m_{i}/s_{i}=p_{i}$$,  $$\varepsilon ^{p_{i } }=1$$
$$\varepsilon =\sqrt[3]{1}$$の場合に,定式化された条件に適うのは,位数3と6$$(g_{i}=3,6, \overline{6}, \overline{3} )$$の結晶演算$$g_{i}$$と演算$$\varepsilon$$の結合である.$$\varepsilon =\sqrt[4]{1}$$の場合には,同様にして許される結晶演算は,$$g_{i}=4, \overline{4}$$であり,$$\varepsilon =\sqrt[6]{1}$$の場合には,$$g_{i}=6, \overline{6} , \overline{3}$$である.今後,結合された演算$$g^{(\varepsilon )}$$は,演算$$\varepsilon $$で生成される巡回群$$\left\{ \varepsilon ,\varepsilon ^{2},\varepsilon ^{3}, \ldots ,\varepsilon ^{p-1},\varepsilon ^{p}=1 \right\} $$の位数$$p$$を括弧に入れて,結晶記号の肩に標示する.我々の条件を満たすものは,9つの一般巡回群を作る9つの一般演算である**:
$$3^{(3)},4^{(4)},\overline{4}^{(4)},6^{(6)},6^{(3)},\overline{6}^{(6)},\overline{6}^{(3)},\overline{3}^{(6)},\overline{3}^{(3)}$$
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*この章内では,式番号を(1)から付ける.前章の式を引用するときには,(3.10),(4.10)などと記す.
**演算$$6^{(3) \pm },\overline{6}^{(3) \pm },\overline{3}^{(3) \pm }$$は,法により巡回群を生む:
$$6^{(3) \pm }(\textrm{mod} 2)=\left\{ 1,6^{(3) \pm },\left( 6^{(3) \pm } \right) ^{2} \right\} $$,
$$\overline{6}^{(3) \pm }\left( \textrm{mod} m \right) =\left\{ 1,\overline{6}^{(3) \pm },(\overline{6}^{(3) \pm })^{2} \right\} $$,
$$\overline{3}^{(3) \pm }(\textrm{mod} \overline{1})=\left\{ 1,\overline{3}^{(3) \pm },\left( \overline{3}^{(3) \pm } \right) ^{2} \right\} $$
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もし,演算$$g^{(\varepsilon )}=g\varepsilon =\varepsilon g$$の代わりに,次の演算 
$$g^{(\varepsilon ^{p-1})}=g\varepsilon ^{p-1}=\varepsilon ^{p-1}g$$      $$\left( \varepsilon \varepsilon ^{p-1}=\varepsilon ^{p}=1 \right) $$
を定義する.例えば,$$\varepsilon$$の代わりに$$\varepsilon ^{2}$$($$\varepsilon ^{3}=1$$ )をとるなら,9つの一般巡回群(既出の群と同型だが,$$\varepsilon$$の群とは巡回順のみ逆転している)が得られる.
$$\left\{ \varepsilon , \varepsilon ^{2}, \varepsilon ^{3}, \ldots , \varepsilon ^{p}=1 \right\}$$   $$\leftrightarrow$$   $$\left\{ \varepsilon ^{p-1}, \varepsilon ^{p-2}, \varepsilon ^{p-3}, \ldots , \varepsilon ^{0}=1 \right\} $$
$$\varepsilon$$の巡回方向に対応し,順方向あるいは逆方向の一般化群を,右あるいは左($$\varepsilon $$に関し)のように区別し,$$G^{(p)+}$$ あるいは$$G^{(p)-}$$と標記する.例えば,
$$3^{(3) \pm }, 4^{(4) \pm }, \overline{4}^{(4) \pm }, 6^{(6) \pm }, 6^{(3) \pm }, \overline{6}^{(6) \pm }, \overline{6}^{(3) \pm }, \overline{3}^{(6) \pm }, \overline{3}^{(3) \pm }$$
ここで,右の群には《+》,左には《-》が対応している.

 

図212ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

色付き点群$$ 6^{(6)+}, 6^{(6)-}, 6^{(3)+}, 6{(3)-} $$,および,反対称群$$6'$$,結晶群$$6$$がもつ磁気配置.これらは,磁気モーメントベクトルに結合された,あるいは,古典的な演算を作用させて得らたもので,すべての配置図で,点1の矢の向きは同一とした.色付き群の標記はまだ標準化されていないので,巡回色付き群の別の記法もある.理論的解析では一般化された群を$$G_{r, t, \cdots, r}^{l, p}$$と記すのが便利である.上の添え字の最初$$l$$は,独立な非幾何学的な座標の数,第2の数$$p$$は群の色数である.この記号では,図の群は,$$G_{3,0}^{1,6}, G_{3,0}^{1,3}, G_{3,0}^{1,2}, G_{3,0}$$(p.198,232,269を参照) 

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図212に示すのは,一般化された群 $$6^{(6)+}, 6^{(6)-}, 6^{(3)+}, 6^{(3)-}$$の磁気的解釈例であり,これらの群を反対称群$$6'$$や古典結晶群$$6$$と比較している.
簡単のために,平面的スピン配位だけを考え,紙面上にある磁気ベクトルを極性の矢で示したが,厳密には,磁気ベクトルは軸性であるから,回転矢印を伴う無極性の線分で表示すべきであることを心に留め置てほしい.
スピンの配位を決めるために,磁気運動量が垂直に向いている番号1の点を出発点とする.回転の正の向きとして,反時計回りをとる.群$$6^{(6)+}$$ における幾何学的な変換$$g$$により,点1から点2へ移動するが,このとき点に固着している磁気モーメントも向きを変え点2においては,半径外向となるであろう.今度は,点2の位置を変えないで,ベクトルにこのベクトルを正の向きに60°回転するような演算子$$\varepsilon $$を作用させると,磁気モーメントは,正六角形を作る向きになる.これが,結合された変換$$6^{(6)+}=\varepsilon 6$$の実行に相当する.この演算を繰り返すことにより,典型的な(非共線の)反強磁性配置ができる.全く同様に,群$$6^{(6)-}$$ に対して,共線の強磁性構造が得られる:反時計回りの回転$$6$$を行い,さらに,これに続けて,ベクトルを時計回りに60°回転する(演算子$$\varepsilon ^{-1}=\varepsilon ^{5}$$を時計回りの60°回転$$6^{-1}$$に結合することは,意味がない,なぜなら,これは,再び$$6^{(6)+}$$ の配置を与えることになる).群$$6^{(3)+}$$ に対しては,反強磁性の共線構造が得られる.他の残りの群$$6^{(3)-},6',6$$は,やはり反強磁性であるが,もはや共線構造ではない.
   図212の6つの磁性群は全部互いに異なっている.このように,古典対称および反対称は,結晶における可能な磁気構造としては不十分であり,対称の新しい概念が有用であることが明らかになった.
   我々の物質空間の点に,磁気モーメントの演算子を置く代わりに,他の物理特性を置き,それに作用する演算子$$\varepsilon $$を定義することもできる.それぞれの場合につき,得られた一般化された対称群に,新しい具体的解釈を見出すであろう.しかし,得られた群は,既知の一般化された群に同型である.このために,あらゆる場合にあてはまる一般化された群の抽象特性を用いることは有用である.このような抽象特性には,色を選ぶ.空間の点に,色(位相)特性を付与し,演算子$$\varepsilon $$を,固定された点で色(位相)を変える演算子と解釈しよう.
  巡回群$$\left\{ \varepsilon ,\varepsilon ^{2},\varepsilon ^{3}, \ldots ,\varepsilon ^{p-1},\varepsilon ^{p} \right\} $$ に対して,自然スペクトル順に色を変えると約束する.例えば,$$6^{(6)+}$$ においては,点1を赤で《塗れば》点2,3,4,5,6はスペクトルの色サイクルを6分割して橙,黄,緑,青,紫と順次塗らなければならない.群 $$6^{(6)+}$$は,このように,《6色の》群で,群$$6^{(3)+}$$ は《3色の》群である.一般に巡回群$$G^{(p)}$$は,$$\varepsilon ^{p}=1$$なら,$$p$$色の群となるであろう.
   上で定義した巡回色付き群の他に,巡回ないし非巡回の色置換群も存在する.このような一般化された群全てが,既に述べた18個の群(右-,左-の総計)により,対称,反対称,色付き対称群 
$$2,m,\overline{1},4,\overline{4};1',2',m',\overline{1},4',\overline{4};1^{(p)},2^{(p)},m^{(p)},\overline{1}^{(p)},4^{(p)},\overline{4}^{(p)}$$ を拡大して得られる.これは,結晶群を回転群の拡大によって得た(表14)のと全く同様である[訳注:回転群を $$\overline{1},m$$で拡大した].この可能性は読者にまかせ,ここでは,節の冒頭に記した手段によることにする.
   色置換群の位数を結晶位数に制限する:$$p=3, 4, 6, 8, 12, 16, 24, 48$$.そして,色付き群$$G^{(p)}$$の中で,上位の結晶部分群$$G^{ \ast }$$が正規商,すなわち,有限指数$$j=p$$の正規部分群を作っているような色付き群$$G^{(p)}$$だけを考える.
$$G^{(p)}=G^{ \ast }g_{1}^{(p_{1})} \cup G^{ \ast }g_{2}^{(p_{2})} \cup \cdots \cup G^{ \ast }g_{j}^{(p_{j})}$$;
$$g_{1}^{(p_{1})}=1, g_{2}^{(p_{2})}, \ldots ,g_{j}^{(p_{j})} \notin G^{ \ast }$$, $$g_{2}^{(p_{2})}, \ldots ,g_{j}^{(p_{j})} \in G^{(p)}$$
数字$$1,2,3, \ldots ,p$$で色特性を表現し,色置換を次のように記す.
$$ p_{j}=\left( \begin{array}{@{\,} ccccc @{\, } } 1 & 2 & 3 & \ldots & p \\[0mm] m_{1_{j } } & m_{2_{j } } & m_{3_{j } } & \ldots & m_{p_{j } } \end{array} \right) $$
下の行には,変換$$p_{j}$$を行ったときに,上の行の番号$$i$$の所がもつ色の番号$$m_{i}$$が書かれている.色置換群は,記号$$p=\left\{ p_{1},p_{2}, \ldots p_{j} \right\} $$で示し,一般化された群$$G^{(p)}$$の結合された演算$$g^{(p)}$$は,交換関係により定義する. 
$$g^{(p)}=gp=pg$$
(巡回群の場合には,$$p$$は$$\varepsilon $$に一致する) 結合された演算の積則を定義しよう: 
$$g^{(p_{i})}_{i} \otimes g_{j}^{(p_{j})}=g_{i}g_{j}^{(p_{i}p_{j})}$$ あるいは,$$g_{i}p_{i} \otimes g_{j}p_{j}=g_{i}g_{j}p_{i}p_{j}$$                                               (2)
$$g_{i}, g_{j} \in G, p_{i}, p_{j} \in P, g_{1}=1$$, $$ p_{1}=\left( \begin{array}{@{\,} cccc @{\, } } 1 & 2 & \ldots & n \\[0mm] 1 & 2 & \ldots & n \end{array} \right) $$
定義に従い,色群$$G^{(p)}$$を古典群$$G^{ \ast }$$の色置換群$$P$$あるいは生成*色付き群$$G^{(p) \ast }$$による拡大と呼ぶ.但し,商群 $$G^{(p)}/G^{ \ast }$$(剰余類$$G^{ \ast }p_{i}$$あるいは$$G^{ \ast }g^{(p_{i})}$$からなる)は,積則$$G^{ \ast }p_{i} \cdot G^{ \ast }p_{j}=G^{ \ast }p_{i}p_{j}$$ あるいは,$$G^{ \ast }g_{i}^{(p_{i})}G^{ \ast }g_{j}^{(p_{j})}=G^{ \ast }g_{i}^{(p_{i})}g_{j}^{(p_{j})}$$ をもち,$$P$$あるいは$$G^{(p) \ast }$$に同型とする.
$$G^{(p)}/G^{ \ast } \leftrightarrow P$$  あるいは  $$G^{(p) \ast }\left( P=\left\{ p_{i} \right\} , G^{(p)}=\left\{ g_{i}p_{i} \right\} , g_{i}p_{i} \neq 1^{(p)} \right) $$.
   一般化された群$$G^{(p)}$$は,群$$G^{ \ast }$$の色恒等群$$1^{(p)}$$による拡大で得られたものなら,色に関して中性(あるいは混合)と呼ばれる.$$1^{(p)}$$は,$$p$$次のすべての可能な置換からなる位数$$p!=1 \cdot 2 \cdot 3 \cdot \ldots \cdot p$$の対称群$$S_{p}$$として決定される.例えば,$$p=3$$とすれば:
$$ 1^{(3)}=\left\{ \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } } 1 & 2 & 3 \\[0mm] 1 & 2 & 3 \end{array} \right), \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } } 1 & 2 & 3 \\[0mm] 1 & 3 & 2 \end{array} \right), \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } } 1 & 2 & 3 \\[0mm] 2 & 3 & 1 \end{array} \right), \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } } 1 & 2 & 3 \\[0mm] 2 & 1 & 3 \end{array} \right), \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } } 1 & 2 & 3 \\[0mm] 3 & 1 & 2 \end{array} \right), \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } } 1 & 2 & 3 \\[0mm] 3 & 2 & 1 \end{array} \right) \right\} $$
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*生成される群では,色の数は群の位数$$p^{ \ast }=3,4,6,8,12,16,24,48$$に等しい.この基礎に立ち,$$6^{(3) \pm }(\textrm{mod} 2)=\left\{ 1,6^{(3) \pm },\left( 6^{(3) \pm } \right) ^{2} \right\} $$のようなモジュラス群を,文脈から誤解を生じなければ,単に$$6^{(3) \pm }$$と標記する.
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   《色恒等演算》を作用させると,空間のすべての点で,中括弧内のすべての演算が同時に実行される.
   中性群は,32の結晶群$$G$$と色恒等群$$1^{(p)}$$の直積として定義される:
    $$G1^{(p)}=G \otimes 1^{(p)}=1^{(p)} \otimes G$$
$$p=3,4,6,8,12,16,24,48$$としたから,
全部で8つの群$$1^{(p)}$$と,$$32 \times 8=256$$の中性群$$G1^{(p)}$$が定義される.
内訳は,$$n$$を生成群の位数としたとき,$$p=n$$のとき28の群,$$p<n$$のとき90,$$p>n$$のとき138となる.特に,中性群は結晶が,どのような位相特性をもつことも許容しない.
例えば,一般化された群の磁気解釈の際に,磁気ベクトルに,群演算$$1^{(p)}$$を適用すると,各点で,合力0のベクトルの星形を得るはずである.これは,群$$G1^{(p)}$$が,結晶に定常的磁気構造を持つことを許容しないということである.
   結晶群$$G$$に同型な真の色付き群(非中性)$$G^{(p)}$$は,正規商$$G^{ \ast } \vartriangleleft G$$があり,これと,生成色群$$G^{(p) \ast }$$あるいは,$$6^{(3) \pm }(\textrm{mod}2)$$のようなモジュラス群$$G^{(p) \ast }(\textrm{mod}G_{1}^{ \ast })$$との直積,半直積,あるいは条件積を作り得ることが出来る.
   $$G^{(p)}=G^{ \ast } \otimes G^{(p) \ast }, G^{(p)}=G^{ \ast } \oslash G^{(p) \ast }, G^{(p)}=G^{ \ast } \odot G^{(p) \ast }(\textrm{mod}G_{1}^{ \ast })$$
群 の同型性$$G^{(p)} \leftrightarrow G$$は,部分群$$G^{ \ast } \vartriangleleft G$$の指数$$s$$が,選ばれた生成色群$$G^{(p) \ast }$$あるいは$$G^{(p) \ast }(\textrm{mod}G_{1}^{ \ast })$$の位数$$p^{ \ast }=3,4,6,8,12,24,48$$に一致すれば保証される: 
$$G^{ \ast }=G^{(p)} \cap G, G^{(p)}/G^{ \ast } \leftrightarrow G^{(p) \ast }$$または$$G^{(p) \ast }(\textrm{mod}G_{1}^{ \ast })$$
本来の色付き群は,色恒等部分群(color-identification group)$$1^{(p)}$$を含まない $$1^{(p)} \not\subset G^{(p)}$$ことを忘れてはならない.すなわち,色対称群の色置換は,恒等変換ではない幾何学変換と結合されねばならない.
   表18には,色群が,直積,半直積,条件積の型で表現されている.これらの記号は,結晶群の国際記号に基づいて作られる:各々の色元$$g_{i}^{(p_{i})}$$ と群全体$$G^{(p)}$$には,色指数$$p_{i}$$と$$p$$が標示される.この記号で,数$$p$$は独立な生成元の色指数$$p_{i}$$の積に等しい;例えば,群$$\left( \displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(8)}$$では,$$p=2 \times 2 \times 2$$となる.なぜなら,この群は3つの生成元から作られているからである.数$$p_{i}$$は色元の位数と一致する:$$\left( g^{(p_{i})} \right) ^{p_{i } }=1$$ .これは,非巡回群$$G^{(p)} (p>p_{i})$$で,元 $$g_{i}^{(p_{i})}$$に付随した$$p$$文字(色)の置換は,長さ$$p_{i}$$の循回置換に分かれることを意味する: 
$$ p_{i}=\left( \begin{array}{@{\,} cccc @{\, } } 1 & 2 & \ldots & p \\[0mm] m_{1} & m_{2} & \ldots & m_{p} \end{array} \right) \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } } 1 & \ldots & m_{1} \\[0mm] m_{1} & \ldots & 1 \end{array} \right) \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } } 2 & \ldots & m_{2} \\[0mm] m_{2} & \ldots & 2 \end{array} \right) \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } } j & \ldots & m_{j} \\[0mm] m_{j} & \ldots & j \end{array} \right) $$,
$$p=p_{i} \times j$$

置換群 において,$$P=\left\{ p_{1}, p_{2}, \ldots , p_{n} \right\} $$,$${p }$$数を長さ$$p_{i}$$項の巡回置換に分けるあらゆる異なった分け方と,色生成元と古典生成元の許容される結合を見出すことは,色対称群$$G^{(p)}$$($$p \le n$$ のとき)導出の出発点となる問題である.もし,結晶群の位数$$p$$を制限しないなら,非結晶色群を得ることが出来る.$$\left( \displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(8)}$$型 の色群を,簡単に,$$\displaystyle \frac{2^{(8) } }{m^{(8) } }\displaystyle \frac{2^{(8) } }{m^{(8) } }\displaystyle \frac{2^{(8) } }{m^{(8) } }$$ と短縮することも出来る.なぜなら,巡回の長さ情報$$p_{i}$$は,結晶元 によって与えられるからである:$$g_{i}^{p_{i } }=1$$
   表18で出会うモジュラス群$$G^{(p) \ast }(\textrm{mod}G_{1}^{ \ast })$$は,既に出会った型$$4(\textrm{mod}2)=\left\{ 1,4 \right\} ,4'(\textrm{mod}2)=\left\{ 1,4' \right\} $$等と比べて,特に通常と異なる訳ではない.モジュラス群の使用は,色対称群を単に結晶群の拡大と見なすだけでなく,対応する色群の拡大と見なすなら,避けることが出来る.この場合には
$$ \left( 4^{(2)}2^{(2)}2^{(2)} \right) ^{(4)}=2'2'2 \oslash 2''=4' \oslash 2'' $$,
$$\left( 4^{(2)}/m^{(2)} \right) ^{(2)}=4' \otimes \overline{1}''=4' \otimes m''$$,
$$\left( 4^{(2)}m^{(2)}m^{(2)} \right) ^{(4)}=m'm'2 \oslash m''=4' \oslash m''$$, $$\left( \overline{4}^{(2)}2^{(2)}m^{(2)} \right) ^{(4)}=2'2'2 \oslash m''=\overline{4}' \oslash m''$$,
$$\left( \displaystyle \frac{4^{(2) } }{m^{(2) } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(8)}=\overline{1}^{(2)} \otimes \left( 4^{(2)}2^{(2)}2^{(2)} \right) ^{(4)}$$,
$$\left( \displaystyle \frac{4^{(2) } }{m^{(2) } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(4)}=2'2'2 \oslash \displaystyle \frac{2''}{m''}=2'2'2 \oslash mm''2''$$,
$$\left( 4^{(2)}3^{(2)}2^{(2)} \right) ^{(6)}=2^{(2)} \otimes \left( 23^{(3)} \right) ^{(3)}$$, $$\left( \displaystyle \frac{4^{(2) } }{m^{(2) } }\overline{3}^{(6)}\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(12)}=\overline{1}^{(2)} \otimes \left( 4^{(2)}3^{(3)}2^{(2)} \right) ^{(6)}$$,
$$\left( \displaystyle \frac{4^{(2) } }{m}\overline{3}^{(3)}\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(6)}=\overline{1} \otimes \left( \overline{4}^{(2)}3^{(3)}2^{(2)} \right) ^{(6)}$$
(ただし,$$\overline{1} \subset \displaystyle \frac{2}{m}\displaystyle \frac{2}{m}\displaystyle \frac{2}{m}=G^{ \ast } \subset G^{(p)}$$)
(記号$$'$$と$$''$$で,2色群の独立な演算子(反対称)を区別する:
$$2'=2^{(2)},2''=2^{(2) \ast },m''=m^{(2) \ast },$$など)
   図213 a-fに,$$2/m$$と$$m\overline{3}m$$に同型な色群のステレオ投影を,黒白版で導いた.図面には図69に対応する古典部分群$$1(\textrm{a,b}),\overline{1}(\textrm{c}),222(\textrm{d}),\displaystyle \frac{2}{m}\displaystyle \frac{2}{m}\displaystyle \frac{2}{m}(\textrm{e}),23(\textrm{f})$$の対称元を,白色で記入してある.
残りの元は,真の色元,すなわち,これを用い,$$g^{(p)}=gp$$の型の結合された変換を実行できる.ここで,$$g \in G \leftrightarrow G^{(p)}$$ ,$$p$$は色(数字)置換で,演算子の超幾何学的部分の働きで,与えられた点で実行される.
符号$$ \pm $$は,ステレオ投影で,図面上に投影された非対称点(4面体)が,上半球から来たか下半球から来たかの状態表示である.
符号の違う各対$$ \pm $$は,同一の点に投影されたものである.図213$$\textrm{a-f}$$に示された同価系の点には色がある:点の《色》は対応する番号で示される.4色群 $$\left( 2^{(2)}/m^{(2)} \right) ^{(4)}$$は次の結合された演算よりなる:
$$ 1=1\left( \begin{array}{@{\,} cccc @{\, } } 1 & 2 & 3 & 4 \\[0mm] 1 & 2 & 3 & 4 \end{array} \right) =1(1)(2)(3)(4) $$;

$$ 2^{(2)}=2\left( \begin{array}{@{\,} cccc @{\, } } 1 & 2 & 3 & 4 \\[0mm] 2 & 1 & 4 & 3 \end{array} \right) =2(12)(34) $$;

$$ m^{(2)}=m\left( \begin{array}{@{\,} cccc @{\, } } 1 & 2 & 3 & 4 \\[0mm] 3 & 4 & 1 & 2 \end{array} \right) =m(13)(24) $$;
$$ \overline{1}^{(2)}=\overline{1}\left( \begin{array}{@{\,} cccc @{\, } } 1 & 2 & 3 & 4 \\[0mm] 4 & 3 & 2 & 1 \end{array} \right) =\overline{1}\left( 14 \right) (23) $$.
元$$g^{(p)}=gp$$を定義しているこれらの等式の右辺で,置換$$p$$は,完全な形と短縮(巡回置換)形とで書かれている( $$g^{(p)}$$の指数$$(p)$$は,巡回置換の長さに対応している). 
演算$$2^{(2)},m^{(2)},\overline{1}^{(2)}$$に対応する色対称元は,異なる色に塗られるべきである.なぜなら,これらにより実現される色(数字)置換は異なるからである.対称群$$\left( \displaystyle \frac{4^{(4) } }{m^{(2) } }\overline{3}^{(6)}\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(48)}$$のすべての元も異なる色に塗られるべきであることはすぐわかる.
   定義から,生成演算の一次で与えられる色対称の元$$g_{i}p_{i}$$と$$g_{j}p_{j}$$は,これらの元が,同一の色置換,すなわち,$$p_{i}=p_{j}$$ならば,同じ色に塗られる.このような場合は,次の群の時に出会う.
$$\left( \displaystyle \frac{4^{(2) } }{m^{(2) } }\overline{3}^{(3)}\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(24)}=\overline{1} \otimes \left( 4^{(4)}3^{(3)}2^{(2)} \right) ^{(24)}$$,
$$\left( \displaystyle \frac{4^{(2) } }{m^{(2) } }\overline{3}^{(6)}\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(12)}=222 \odot \left( \displaystyle \frac{4^{(2) } }{m^{(2) } }\overline{3}^{(6)}\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(12)}\left( \textrm{mod}222 \right) $$,
$$\left( \displaystyle \frac{4^{(2) } }{m}\overline{3}^{(3)}\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(24)}=\displaystyle \frac{2}{m}\displaystyle \frac{2}{m}\displaystyle \frac{2}{m} \odot \left( \displaystyle \frac{4^{(2) } }{m}\overline{3}^{(3)}\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(6)}\left( \textrm{mod}\displaystyle \frac{2}{m}\displaystyle \frac{2}{m}\displaystyle \frac{2}{m} \right) $$, 
$$\left( \displaystyle \frac{4^{(2) } }{m^{(2) } }\overline{3}^{(2)}\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(4)}=23 \oslash \left( \displaystyle \frac{2^{(2) } }{m^{(2) } } \right) ^{(4)}$$

最後の群では,例えば,すべての対角diagonalの鏡映面$$m$$に置換$$(13)(24)$$が結び付けられている.対称心と座標平面$$m_{x},m_{y},m_{z}$$は,置換$$(14)(24)$$に,軸$$2_{i}$$と$$4_{j}^{(2)}$$は置換$$(12)(34)$$に結び付けられている.この群の表示のためには,黒の他に3色必要である.
   図213$$\textrm{a-f }$$にも表18にも,群$$G^{(p)}$$の81の象徴が,色対掌体enantio-と多形polymorphismの区別なしで導かれている;色対掌体enantio-と多形polymorphismの考慮をすると群$$G^{(p) \pm }$$の数は134に増加する.これらのうち37群だけが生成群である:28群は自明な$$G^{(p)}=1 \otimes G^{(p)}$$,9群は$$G^{(p)}(\textrm{mod}G^{ \ast }_{1})$$.色巡回置換による群は,最初にniggli(1959)とIndenbom,Belov,Neronova(1960)により得られた.古典的正規商normal classical divisors нормальные классические делителиを含む群は,Wittke(1962)が研究した.合理的な表現rational symbolism рациональная символиса,ステレオ投影stereographic projections стереографические проекции,色群の積の型への分解表現form of products of cofactors в форме произведений сомпожителейは,我々により,初めてここに導かれた.群$$G^{(p)}_{N}=G^{ \ast }G^{(p) \ast }$$(表18)は,73のWittke-Garrido群$$G^{(p)}_{WG}=G^{(p) \ast } \cdot G^{ \ast }$$および,これらに同型な73の$$\textrm{Van der Waerden-Burckhardt }$$群,$$G_{WB}^{(p)}=G^{(p_{1}) \ast } \cdot G^{(p_{2}) \ast }$$(非自明な正規古典部分群を含まない)で補充できる.既知の群 $$(4^{(2)}m^{(2)}m^{(2)})^{(4)}=4^{(2)} \oslash m^{(2) \ast }$$, $$\left( 4^{(2)}2^{(2)}2^{(2)} \right) ^{(4)}=4^{(2)} \oslash 2^{(2) \ast }$$,$$\left( \overline{4}^{(2)}2^{(2)}m^{(2)} \right) ^{(4)}=\overline{4}^{(2)} \oslash m^{(2) \ast }$$を見本として(参照p.243),新しいWittke-Garrido群を得ることが出来る.例えば;
$$\left( 4^{(4) \pm }mm^{(2)} \right) ^{(4)}=4^{(4)} \oslash m$$,
$$\left( 4^{(4) \pm }22^{(2)} \right) ^{(4)}=4^{(4)} \oslash 2$$,
$$\left( \overline{4}^{(4) \pm }2m^{(2)} \right) ^{(4)}=\overline{4}^{(4)} \oslash 2$$,
$$\left( \overline{4}^{(4) \pm }2^{(2)}m \right) ^{(4)}=\overline{4}^{(4)} \oslash m$$
あるいは,新しいVan der Waerden-Burckhardt群 
$$\left( 4^{(4)+}m^{(2)}m^{(2)} \right) ^{(4)}=4^{(4)} \oslash m^{(2)}$$,
$$\left( 4^{(4)+}2^{(2)}2^{(2)} \right) ^{(4)}=4^{(4)} \oslash 2^{(2)}$$,
$$\left( \overline{4}^{(4)+}2^{(2)}m^{(2)} \right) ^{(4)}=\overline{4}^{(4)} \oslash 2^{(2)}$$,
$$\left( \overline{4}^{(4)+}2^{(2)}m^{(2)} \right) ^{(4)}=\overline{4}^{(4)} \oslash m^{(2)}$$
部分群$$G^{(p_{2}) \ast } \subset G^{(p)}_{WG}$$は,最後に決まった色を保存する;群$$G_{WG}^{(p)}$$中の色置換の型$$G^{(p) \ast }$$は,始めの点のとり方に依存する.

koptsik-ch11-4★

色対称空間群(Belov:Белов)Б 
-古典空間群(Fedorov: Федоров)Фの拡大として,あるいは,並進群Tの拡大として-

古典Fedorov群に対する色対称空間群は,結晶点群に対する色対称結晶群の関係と同じである.色対称概念の創始者に敬意を表して,我々はこれをBelov(Белов)群と呼ぶことにする.これらの3次元群においては,運動演算$$\phi _{i} \in Ф$$と反対称演算$$ш_{i} \in Ш$$に加えて,さらに,我々が結合された変換として定義した色運動に出会う.
$$б_{i}^{(p)}=ф_{i}1^{(p)}=1^{(p)}ф_{i}$$
あるいは,特別な場合に,
$$б_{i}^{(p)}=ф_{i}p_{i}=p_{i}ф_{i}$$
ここで,$$p_{i}$$は色恒等群$$1^{(p)}=\left\{ p_{1},p_{2}, \ldots ,p_{n} \right\} $$も含む色置換であり,幾何学的変換と両立する.従って,p.203に与えたФ-空間群とШ-空間群の演算目録は,色対称変換で補充される.
$$\begin{array}{@{\,} ccccc @{\, } }
1^{(p)} & 2^{(p)} & 3^{(p)} & 4^{(p)} & 6^{(p)} \\[0mm]
\overline{1}^{(p)} & m^{(p)} & \overline{3}^{(p)} & \overline{4}^{(p)} & \overline{6}^{(p)} \\[0mm]
\tau ^{(p)} & 2^{(p)}_{1} & 3^{(p)}_{1} & 4^{(p)}_{1} & 6^{(p)}_{1} \\[0mm]
& a^{(p)}_{} & 3^{(p)}_{2} & 4^{(p)}_{2} & 6^{(p)}_{2} \\[0mm]
& b^{(p)} & & 4^{(p)}_{3} & 6^{(p)}_{3} \\[0mm]
& c^{(p)} & & & 6^{(p)}_{4} \\[0mm]
& d^{(p)} & & & 6^{(p)}_{5} \\[0mm]
& n^{(p)} & & &
\end{array}$$

演算目録の拡大に伴って,色対称空間群は2様の解釈ができる:すなわち,Fedorov群$$Ф$$を,演算
$$1^{(p)},\overline{1}^{(p)},\tau ^{(p)};2^{(p)},2_{1}^{(p)},m^{(p)},a^{(p)},b^{(p)},c^{(p)},d^{(p)},n^{(p)};$$
$$ ;4^{(p)},\overline{4}^{(p)},4_{1}^{(p)},4_{2}^{(p)},4_{3}^{(p)}$$
の冪によって生成される巡回群により拡大したものと見るか,並進群$$T$$を有限結晶色付き群$$G1^{(p)},G^{(p)}$$(または,これらと同型な法による群$$G^{(p)}(\textrm{mod}G_{1}^{ \ast })$$)と,補助的に一次元並進の有限巡回置換(法による群)
  $$\tau ^{(p)}(\textrm{mod}\tau )=\left\{ \tau ^{(p)},\left( \tau ^{(p)} \right) ^{2}, \ldots ,\left( \tau ^{(p)} \right) ^{p}=\tau \equiv 0(\textrm{mod}\tau ) \right\} $$;
によって拡大したものと見るかである;群$$T$$との積では,並進と色並進$$T_{\tau ^{(p) } }$$の3次元中心化群(трехмерную центрированную группу; threedimensional centered group)を定義する.ここの考察では,第二の方法をとることにし,Б-群で正規商(指数$$p=3,4,6,8,12,16,24,48$$のFedorov部分群)の存在する場合だけに限る.
   この条件の下で,明らかに,1840の色中性(混合)のBelov群が,次の3つのカテゴリーに存在する:$$p<n, p=n, p>n$$ (参照p.242)
$$\mit\Phi 1^{(p)}=\mit\Phi \otimes 1^{(p)}$$   ($$\mit\Phi 1^{(p)}=TG1^{(p)}=TG \otimes 1^{(p)}$$)
(数$$1840=230 \times 8$$は,Fedorov群の数を,群$$1^{(p)}$$型の数に乗じ得られる.)これらのすべての群は,すでに学んだように,結晶離散体が,位相(色)変化するような如何なる性質も持つことを許さない.
   色群(部分群$$1^{(p)}$$を含まない)の導出は,1969年にA.M.Zamorzaev(Заморзаев)の研究により初められた.彼は,3-,4-,6-色の空間群の数を数え上げ,対応する色格子を得た.真性色群(собственно цветные группы; true colored-symmetry groups)は2つのカテゴリーに分けられる:色並進を含まない群と色並進を含む群.その上,両場合とも,さらに共型群と非共型群に分かれる.
   始めは,群のすべてのタイプの例を研究しよう.
図214に,4つの単斜(моноклинных; monoclinic) 4色群(色並進を含まない)の対称元の投影を載せた:1つは共型,3つは非共型である.これに加え,相当する単位胞中の一般点に置いた非対称図形(4面体)の同価系の投影も載せた:《+》と《-》の符号によって,図面に斜交した軸bに沿った4面体の座標を記す;軸$$a,c$$は図面内にあり,軸$$c$$は2回(単純またはらせん)軸の方向に一致させる.この2回軸は,図面で両側あるいは片側の矢羽で標される;軸$$a,b$$は$$c$$と直交する.
   共型群$$P(2^{(2)}/m^{(2)})^{(4)}$$は,ベクトル基底$$\left\{ a,b,c \right\} $$によって定義される並進の不変部分群(инвариантнои подгруппы; invariant subgroup) $$P$$と色対称類(цветного класса; colored-symmetry class) $$\left( 2^{(2)}/m^{(2)} \right) ^{(4)}$$との半直積と見なすことが出来る.
$$P(2^{(2)}/m^{(2)})^{(4)}=P \oslash (2^{(2)}/m^{(2)})^{(4)}$$
言い換えるなら,$$P(2^{(2)}m^{(2)})^{(4)}$$は,群$$\left( 2^{(2)}/m^{(2)} \right) ^{(4)}$$の3次元周期の集合である.直交変換$$g^{(p)}$$(単位胞の左上隅をよぎる対称元に相当する)を並進$$\tau $$に乗じることで,これを確かめよう.積$$\tau g^{(p)}$$に関する定理の証明は,演算子に対する表現を持ち込まずに(ダイヤグラム法によって),単位胞の左上隅を原点に持つ青い4面体の運動を追いかけながら,純幾何学的な方法で行なおう.
   積$$a \cdot 2^{(2)}=2^{(2) \bullet }$$を示そう.実際,色回転$$2^{(2)}$$の作用により,原点の青い4面体は,単位胞の左上隅の黄色に移動する;並進$$a$$の作用により,黄色の4面体は,単位胞の下部に平行移動する.最終的に,始めの上にある青い4面体は,単位胞の下にある黄色の4面体に移動する.これは,演算$$2^{(2) \ast }$$の作用と等価である.全く同様にして,次の積がわかる.(積の実行は,右から左へ次々に行う)
$$c \cdot m^{(2)}=m^{(2) \ast }$$, $$c \cdot \overline{1}^{(2)}=\overline{1}^{(2) \ast }$$,  etc.
結果として,始めに選んだ単位胞の頂点を通る元の組から導いた全ての対称元の各集合は,群$$P(2^{(2)}/m^{(2)})^{(4)}$$を決定することになる.
   非共型群に対しても,変換の相当する積は同様にして得られる:
$$a \cdot 2_{1}^{(2)}=2_{1}^{(2) \ast }, c \cdot m^{(2)}=m^{(2) \ast }, c \cdot \overline{1}^{(2)}=\overline{1}^{(2) \ast }$$; 群$$P\left( 2_{1}^{(2)}/m^{(2)} \right) ^{(4)}$$において
$$a \cdot 2^{(2)}=2^{(2) \ast }, c \cdot b^{(2)}=b^{(2) \ast }, c \cdot \overline{1}^{(2)}=\overline{1}^{(2) \ast }$$; 群$$P\left( 2^{(2)}/b^{(2)} \right) ^{(4)}$$において
$$a \cdot 2_{1}^{(2)}=2_{1}^{(2) \ast }, c \cdot b^{(2)}=b^{(2) \ast }, c \cdot \overline{1}^{(2)}=\overline{1}^{(2) \ast }$$; 群$$P\left( 2_{1}^{(2)}/b^{(2)} \right) ^{(4)}$$において
群$$P\left( 2_{1}^{(2)}/b^{(2)} \right) ^{(4)}$$に対して証明を行い,残りは読者の練習としよう.演算$$2_{1}^{(2)}$$の作用の下で,左上隅の青い黒い4面体は,上の黄色緑色の4面体の位置に移動し,並進$$a$$の作用で,それは,単位胞の下側へ移る.全く同じ,4面体の始めの状態から終わりの状態までの変換が,単位胞のパラメータbの底から1/4の所に置かれた,色螺旋回転$$2_{1}^{(2) \ast }$$で記述できる.従って,$$a \cdot 2_{1}^{(2)}=2_{1}^{(2) \ast }$$.同様に,演算の積$$c \cdot b^{(2)}$$では,青い黒い4面体が,映進面$$b$$の平面で反射した結果,1/2レベルの赤い青い4面体の位置に移動する;その後ベクトル$$c$$で右へ移動し,演算$$b^{(2) \ast }$$と等価となる.$$c \cdot \overline{1}^{(2)}=\overline{1}^{(2) \ast }$$となることもわかる.
   結局,考察している非共型群の中で,変換の組
$$\left\{ 1,2_{1}^{(2)},\overline{1}^{(2)},m^{(2)} \right\} $$,$$\left\{ 1,2^{(2)},\overline{1}^{(2)},b^{(2)} \right\} $$,$$\left\{ 1,2_{1}^{(2)},\overline{1}^{(2)},b^{(2)} \right\} $$は,言葉本来の意味での点群をなしていないにもかかわらず,これらの変換の並進への積は,一般則を満たす.このために,非共型群Бнесも,並進群$$T$$を演算の組$$G^{(p)}(\textrm{mod}T)$$で拡大したものと見なすことが可能である. 
$$Б=T \circ G^{(p)}(\textrm{mod}T)$$
これらはまた,空間群の国際記号のなかに再現されている.演算の組を,我々は,場合によっては,共型空間群の上位の点群に同型な法による群$$G^{(p)}(\textrm{mod}T)$$と呼んでも良い.(参照p.208,217他)
   検討してきた例は,色置換を含まない各々のБелов群Бが,あるФедоров群Ф(共型あるいは非共型)に同型であることを示している:
$$Б_{сим}=T \oslash G^{(p)} \leftrightarrow T \oslash G=Ф_{сим}$$,$$Б_{нес}=T \circ G^{(p)}(\textrm{mod}T) \leftrightarrow T \circ G^{T}=Ф_{нес}$$
故に,$$Б$$群はそれに同型な(Федоров; Fedorov)群$$\mit\Phi $$と《点》群$$G^{(p)}$$または$$G^{(p)}(\textrm{mod}T)$$(あるいは,Б群と$$\mit\Phi $$群に共通な部分群$$Ф*=Б\cap Ф$$)を与えるなら,完全に決定される.
   色置換$$\tau ^{(p)}$$を含むБелов群のカテゴリーに考察を移行しよう.置換とベクトル$$\tau ^{(3)},\tau ^{(4)},\tau ^{(6)}$$で生成される色置換の1次元の群(図215)を定義しよう.定義に従って,並進群で群演算となるのは,ベクトルの加法演算である.ベクトル$$\tau ^{(3)}$$の3つの和は,並進群$$T$$にある古典的並進ベクトル$$\tau $$を与える.
   色巡回置換$$(\tau ^{(p)})^{p}=\tau $$の長さは,次の等式で決定される.
$$\left( \tau ^{(3)} \right) ^{3}=\tau ^{(3)}+\tau ^{(3)}+\tau ^{(3)}=3\tau ^{ \ast }=\tau \in T; \tau ^{(3)} \in T_{\tau ^{(3) } }$$
$$\left( \tau ^{(4)} \right) ^{4}=\tau ^{(4)}+\tau ^{(4)}+\tau ^{(4)}+\tau ^{(4)}=4\tau ^{ \ast }=\tau \in T; \tau ^{(4)} \in T_{\tau ^{(4) } }$$
$$\left( \tau ^{(6)} \right) ^{6}=\tau ^{(6)}+\tau ^{(6)}+\tau ^{(6)}+\tau ^{(6)}+\tau ^{(6)}+\tau ^{(6)}=6\tau ^{ \ast }=\tau \in T; \tau ^{(6)} \in T_{\tau ^{(6) } }$$
ここで,$$T_{\tau ^{(p) } }$$は置換および色置換を示し,記号$$T$$は,純粋並進の群である.添え字は,中心化色並進(центрирующий цветной перенос; centering colored translation)である.$$\tau ^{ \ast }$$はベクトル$$\tau ^{(p)}$$の長さに等しい古典ベクトルである.明らかに,群$$T_{\tau ^{ \ast } }$$と$$T_{\tau ^{(p) } }$$は同型であり,共通の(超構造superstructural сверхструктурную)部分群$$T$$を持つ:
$$T_{\tau ^{ \ast } } T_{\tau ^{(p) } }$$, $$T=T_{\tau ^{ \ast } } \cap T_{\tau ^{(p) } }$$
定式化された両命題は,3次元の場合も成立する.3次元並進格子のベクトル基底$$\left\{ T=a,b,c \right\} $$に,中心化色並進$$\tau ^{(p)}$$を加えるなら,次の3条件を満たすとき,色並進格子$$T_{\tau ^{(p) } }=\left\{ a,b,c,\tau ^{(p)} \right\} $$を得る.
1) 色巡回置換の長さを決定するベクトル$$P_{\tau ^{ \ast } }=\tau =\left( \tau ^{(p)} \right) ^{p}$$は,格子$$T=\left\{ a,b,c \right\} $$に属さなければならない.
2) 中心化ベクトル$$\tau ^{(p)}$$の方向は,両格子$$T=\left\{ a,b,c \right\} $$と$$T_{\tau ^{(p) } }=\left\{ a,b,c,\tau ^{(p)} \right\} $$が同一の計量系に属すように選ばれなければならない.
3) ベクトル変換$$\tau ^{(p)} \to -\tau ^{(p)}$$は,色ベクトルの符号が変わると,色巡回が逆になるので,禁じられている;逆色ベクトルを見いだす次の規則は正しい:$$(\tau ^{(p)})^{-1} \to -\tau ^{(-p)}$$,$$\tau ^{(p)} \cdot (-\tau ^{(-p)})=\tau ^{0}=1$$
   最後の条件により,ベクトル$$\tau ^{(p)}$$の符号を変える対称心のある結晶群は,色格子を作ることが出来ない.変換$$T_{\tau ^{(p) } }=\left\{ a,b,c,\tau ^{(p)} \right\} $$は,対称心$$\overline{1}$$およびベクトル$$\tau ^{(p)}$$に垂直な軸$$2$$や平面$$m$$を含まない群$$G, G', G^{(p)}$$とのみ結合できる.基本として14のBravaisБравэ格子を採用し,それらを2-,3-,4-,6-色ベクトル$$\tau ^{(p)}$$で中心化すると(条件1-3は守る),最も高い空間対称$$Б_{сим}=T_{\tau ^{(p) } } \oslash G$$を持つ76の色格子が得られる.これらの格子は;3つの(triclinic триклинных)三斜:$$P_{\tau ^{(p) } }1$$;22の単斜(monoclinic моноклинных):$$6P_{\tau ^{(p) } }2, 6P_{\tau ^{(p) } }m, 5B_{\tau ^{(p) } }2, 5B_{\tau ^{(p) } }m$$; 30の(orthorhombic ромбических)斜方:$$9P_{\tau ^{(p) } }mm2, 6C_{\tau ^{(p) } }mm2, 6B_{\tau ^{(p) } }mm2, 3I_{\tau ^{(p) } }mm2, I_{\tau ^{(p) } }222, 5F_{\tau ^{(p) } }mm2$$; 10の(tetragonal тетрагональных)正方:$$6 P_{\tau ^{(p) } }4mm, 3 I_{\tau ^{(p) } }4mm, I_{\tau ^{(p) } }\overline{4}2m$$;5つの三方(trigonal тригональных):$$3 R_{\tau ^{(p) } }3m, 2 P_{\tau ^{(p) } }31m$$;5つの六方(hexagonal гексагональных):$$3 P_{\tau ^{(p) } }6mm, 2 P_{\tau ^{(p) } }\overline{6}m2$$;1つの立方(cubic кубическая):$$I_{\tau ^{(p) } }23, I_{\tau ^{(p) } }\overline{4}3m$$;格子(lattice решетка)になる.表19に,全格子に対する,3-,4-,6-色の元の上位の空間群の国際記号を導いてある.格子の(color index цветность)色指数pは,生成色置換の色指数$$p_{1}$$と$$p_{2}$$の積で決定される:$$p_{1} \times p_{2}>6$$に対しては,色置換(цветные переносы)は独立ではない.表中の頭文字で,単純基底\textrm{\textsl{p } }および
$$R=\left\{ a,b,c \right\} , B=\left\{ a,b,\displaystyle \frac{(a+c)}{2} \right\} , C=\left\{ a,\displaystyle \frac{(a+b)}{2},c \right\} , $$
$$, I=\left\{ a,b,\displaystyle \frac{(a+b+c)}{2} \right\} , F=\left\{ a,\displaystyle \frac{(a+b)}{2},\displaystyle \frac{(a+c)}{2} \right\} $$
の古典Bravais格子$$T \subset T_{\tau ^{(p) } }$$を標す.(Главная ось principal axis)主軸は菱面格子以外は$$c$$軸に沿って,菱面格子(ромбоэдрическая решетка trigonal lattice)ではベクトル$$a+b+c$$に沿ってとる.下添字は,群$$T_{\tau ^{(p) } }$$に移行したとき,基底ベクトルのうちどれが色ベクトルで置き換えられるかを標している.
   記号$$T_{\tau ^{(p) } }G$$G中で,上位の群$$G$$をその部分群(同一の計量系に属す)で換え,全ての群$$G$$をそれと同型な反対称群$$G'$$と色群$$G^{(p)}$$で換えると,全ての次の型の共型群$$Б=T_{\tau ^{(p) } } \oslash G, Б=T_{\tau ^{(p) } } \oslash G', Б=T_{\tau ^{(p_{1}) } } \oslash G^{(p_{2})}$$が作れる.群$$G, G', G^{(p)}$$を対応する法による群で置き換えると,型$$Б=T_{\tau ^{(p) } } \circ G^{T}, Б=T_{\tau ^{(p) } } \circ G^{T'}, Б=T_{\tau ^{(p_{1}) } } \circ G^{(p_{2})}(\textrm{mod}T)$$の非共型群が得られる.ここにあげた全部の群の他に,色並進を含まないような群がまだ存在することに留意しよう:共型$$Б=T \oslash G^{(p)}$$と非共型$$Б=T \circ G^{(p)}(\textrm{mod}T)$$である.

   同型定理は,色並進(цветных переносов colored translations)のあるBelov群に対し,次のような3項記号:
$$Б-\left| \displaystyle \frac{T_{\tau ^{ \ast } } }{T_{\tau ^{(p) } } } \right| G$$ あるいは $$T_{\tau ^{(p) } }G-\left| \displaystyle \frac{\left\{ a,b,c,\tau ^{ \ast } \right\} }{\left\{ a,b,c,\tau ^{(p)} \right\} } \right| G$$
および,$$G$$を$$G^{(p)},G^{T},G^{(p)}(\textrm{mod}T)$$で置き換えた同様な記号表現を提供する.
   これらの記号によると,容易に,Б群の対称元を作ることができるし,他の必要な情報を見つけることも出来る.一例として,図216に,次の3項記号で定義される色並進を含む2つの群の投影を示す:
$$P_{a^{(3) } }1-\left| \displaystyle \frac{\left\{ 3a,b,c,a \right\} }{\left\{ 3a,b,c,a^{(3)} \right\} } \right| 1$$ および $$P_{c^{(3) } }2-\left| \displaystyle \frac{\left\{ a,b,3c,c \right\} }{\left\{ a,b,3c,c^{(3)} \right\} } \right| 2$$
空間群$$Б=T_{\tau ^{(p_{1}) } } \cdot G^{(p_{2})}$$の色特性は,生成元の色特性$$p_{1}$$と$$p_{2}$$の積あるいは最小公倍数であることを,もう一度強調しておく.ある条件を実行するときに,$$p$$-色群は,$$p=3,4,6,8,12,16,24,28,48$$の全ての数に対して存在するから,考察中の群の類の生成元$$p=3,4,6$$の色特性による制限は必ずしも必要ではない.例えば,結晶点群が,同時に$$\tau ^{(3)},\tau ^{(4)},\tau ^{(5)}$$を許すなら,この群は,$$\tau ^{(p)}$$も許す$$p$$は任意の有限数).これは,$$p>6$$のときに色格子と群を導くための道を開いている.
   章の要点をまとめるにあたり,色群の導出-古典群の正規(不変)拡大-は,以下に帰着することを記憶しておこう.
1) 生成群内に正規商$$G^{ \ast } \vartriangleleft G \leftrightarrow G^{(p)}$$を探す.
2) 商群$$G/G^{ \ast }$$の具体的な色実現を,それに同型な群$$G^{(p) \ast }$$あるいは法による群$$G^{(p) \ast }(\textrm{mod}G_{1}^{ \ast })$$の型に作ること
3) 生成群$$G^{ \ast }$$を$$G^{(p) \ast }$$あるいは$$G^{(p) \ast }(\textrm{mod}G_{1}^{ \ast })$$に《乗じる》.
このような道筋で,$$p=3,4,6$$の場合に,巡回商群によって,817のBelov群$$Б^{(p)}$$が得られる.群$$2/m, 222, mm2$$と同型な色群によって実現される非巡回商群は,形$$Б(^{2}Б^{2})$$で標される1843の4色Belov群を生じる;これらの各々の群は2重(двукртной two-fold)の反対称群と見なせる.群$$622, 6mm, \overline{6}m2, \overline{3}m$$に同型な非巡回色群は,群$$32, \overline{3}m$$に同型な非巡回色商群は,3-色群と反対称群の積の形$$Б(^{3}Б^{2})$$で標される278の6-色Belov群を生じる.
   Belov群を数え上げる際に重要なのは,2つの群$$Б_{1}$$と$$Б_{2}$$が同一と見なされるのは,結晶学的に同一,つまり,これらの群に同型なFedorov群$$Ф_{1}$$と$$Ф_{2}$$が,(собственным двидением)固有運動$$S$$(必要なら,相似変換と結び付けられる)により互いに変換$$Б_{2}=SБ_{1}S^{-1}$$され,同型$$Ф_{1} \leftrightarrow Ф_{2}$$の幾何学的変換に結合した色置換群は,ユニタリー色再規格化(единой перенормировкой цветов)で互いに変換されることである.
   全く同様な方法で,結晶学的色数$$p=8,12,16,24,48$$の3次元Belov群を,拡大により得ることが出来る.実際,古典群の規約表現(неприводимых представлений)の表を用い,不変商$$G^{ \ast } \vartriangleleft G$$を見出し,色生成群$$G^{(p) \ast }$$と$$G^{(p) \ast }(\textrm{mod}G_{1}^{ \ast })$$を作ることが出来る.巡回色置換群による群$$Б^{(p)}$$は,Ф群の1次元複素表現(одномерными комплексными представлениями)と関係がある;群$$Б(^{2}Б^{2})$$の形は,2つの1次元交流表現(одномерных знакопеременных представлений)の直和に関係がある;群$$Б(^{3}Б^{2})$$の形は,交流表現(знакопеременных представлений)を用い,1次元複素表現の正則継続(по регулярному продолжению)により作られる.(次節にある対応する研究文献参照)表現手法は,KoptsikとKuzhukeev(1972)により,2942の3,4,6色Belov群を導くときに用いられた.(参照レジメ) 
   3次元Belov群の内に,2-および1-次元色空間群は,部分群として見出すことが出来る. 15の2-次元巡回色群(двумерных цветныхциклических групп)は,(винтовые оси)らせん軸31,32,41,42,43,61,65,62,64と(плоскости скольэящего отражения)映進面dおよび,並進群Rを含むFedorov群の平面への一般化された投影により,最初に得られた(BelovとTarkhova, 1956).これらの群の単位胞内で,これらの対称元に結ばれた図形は,3,4,6の階層(уровнях)に分布している;これらの階層に対し色を割付け,平面上への投影のときに階層の色を保存する.ここで引用した研究[Belov,Tarkhova(1956)]は,多色対称の概念の発展の端緒であった.次節の図234に,15のBelovの2次元色群の図解として色モザイクを掲載する. 

koptsik-ch11-5★

対称性理論の限界.他の一般化. 
   紙数不足のため,近年生じた古典対称の他の一般化の詳細には,立ち入ることが出来ない.進歩の根幹的領域のみを列挙し,主要な研究文献リストを挙げるにとどめよう. 
   A.V.Shubnikov(А.В.Шубников)により,1945年に多重反対称(кратной антисимметрии)の概念,1960年に相似対称(симметрии подобия)の概念が提起された(図217).両概念とも,発展的に研究され,A.M.Zamorzaev( А.М.Заморзаев)とその門人(A.F.Palistrant,E.I.Sokolov,E.I.Galyarskii)により,対応する一般群(обобщенных групп)を導くに至った.これらの研究やN.V.Belov(Н.В.Белов)学派の研究により,反対称(антисимметрии),多重反対称(кратной антисимметрии),色対称(цветной симметрии)の概念は,対応する一般化群の形に統合された.色対称の概念は,Niggli,Wondraschek,Wittke,Van der Waerden, Burckhardt, Pawley, Mackay, Zamorzaevの研究(1959-1971)により,さらなる展開があった.一連の研究により,正規商でない古典部分群を含む色対称群を得る方法が指摘された. 
   Van derWaerden -Bruckhardtの群$$G_{WB}^{(p)}$$は,3項記号$$G/H'/H$$で定義されるが,ここで古典群$$G \leftrightarrow G_{WB}^{(p)}$$;指数$$p$$の部分群$$H' \subset G$$は,性質(色)$$i$$を保存している部分群$$H_{i}^{(p_{1})} \subset G_{WB}^{(p)}$$に同型対応する;正規商$$H=G \cap G_{WB}^{(p)}$$(古典部分群$$H \vartriangleleft G^{(p)}$$を作っている)は,すべての共役部分群(сопряжунных подгрупп)の共通部分(пересечением)によって決定される$$H= \cap gH'g^{-1}, g \in G$$.色群$$G_{WB}^{(p)}=g_{1}H_{i}^{(p_{1})} \cup g_{2}^{(p)}H_{i}^{(p_{1})} \cup \ldots \cup g_{p}^{(p)}H_{i}^{(p_{1})}$$は,部分群$$H_{i}^{(p_{1})}$$を,剰余類(смежных классов)の代表系(системы представителей) $$G^{(p)^{\ast} }=\left\{ g_{1},g_{2}^{(p)}, \ldots ,g_{p}^{(p)} \right\} $$で拡大し表現され,一般には群を成さない.$$G_{WB}^{(p)}$$で作用する長さ$$p$$の置換は,$$g_{i}$$を左から乗じたときの左剰余類$$g_{k}H'$$の置換である:
$$g_{i}^{(p)}=g_{i}p_{i}=p_{i}g_{i}, p_{i}=\left( \begin{array}{@{\,} cccc @{\, } }
g_{1}H' & g_{2}H' & \ldots & g_{p}H' \\[0mm]
g_{i}g_{1}H' & g_{i}g_{2}H' & \ldots & g_{i}g_{p}H'
\end{array} \right) $$
   (квазисимметрии)擬対称 P-symmetryのZamorzaev群は,対応する図形の一般点が,それぞれ1色に塗られる場合には,今まで見てきた色群のすべての型を包含する.このようなすべての群$$G^{(p)}$$をその生成群$$G$$から,次の手段により導くことができる:
1)$$G/H \leftrightarrow P/Q$$となるような正規商$$H \vartriangleleft G$$と$$Q \vartriangleleft P$$(ただし,$$H=G^{(p)} \cap G=G^{ \ast }$$は$$G^{(p)}$$の古典的部分群.$$Q=G^{(p)} \cap P$$は色置換の部分群)を探す.
2) 同型$$G/H \leftrightarrow P/Q$$の確立と同型対応する剰余類$$gH \leftrightarrow \varepsilon Q$$の対積(попарным перемножением)を作る.
3) 得られた積を集める:$$G^{(p)}= \cup gH \cdot \varepsilon Q$$
   この説明枠外に,Wittke-Garrido色対称群と複素関数のEwald-Bienenstock対称群が存在する.これらの場合には,色変化の規則は,変換だけでなく,図形中の点の取り方にも依存する,すなわち,対応する色変換は局所的となる. 
   B.N.Delone(1959-1961)の一連の論文で,stereohedra стереоэдровの一般理論(空間の凸多面体выпуклые многогранникиへの正則分割правильных разбиенийの理論)が基本的に完成した.平面に対するこの理論は,よく知られたShubnikov-Laves定理に基づき,純トポロジー的に作られた;全部で46種のпланигоны planigonへの平面の分割разбиенияが導かれた.3次元空間のDirichlet stereohedra(第1 Brillouinゾーンに相当の完全な理論は),により,任意に与えられたFedorov群に対して,stereohedraを導出するアルゴリズムの課題に完成した.一般型のstereohedraに対しては,B.N.Deloneが一般定理を証明した: n次元Euclid空間Euclidean евклидоваを凸多面体выпуклые многогранники(完全に面を接するような)で規則的に分割するトポロジー的に異なった分割の数は任意のnに対して有限である.このとき,完全な面を接するという要請は,非常に重要である(Zamorzaev1965).
   多次元幾何空間の対称性課題は活発に進展中である.最低位系の4次元のFedorov群,全ての点群,4次元Bravais格子は導出が完了した(T.Roman,1962;C.Hermann,1949; A.Hurley,1951; A.Hurley & H.Wondratschek,1967; A.Mackay & G.Pawley,1963;A.Zamorzaev,1963;A.Zamorzaev & B.Tsekinovskii,1968; J.Neubuser, H.Wondratschek & R.Bulow, 1971;H.Wondratschek etal.,1969;N.Belov & T.Kuntsevich,1971 1970;Рыжиков,1971).Fedorov群を非Euclid空間で導びくことが開始された(Makarov,1968).
   次のモノグラフ(Faddeev & Kovalev(19611968),Miller & Love(1967),Zak, Casher, Gluck & Gur(1969),Bradley & Cracknell(1971))に,Fedorov空間群とShubnikov空間群の規約表現理論неприводимых представленийと共通表現理論corepresentations копретставленийが基本的に完成している.その結果は,対応する行列群の指標characters характеровの表として記述されている.
   アフィン変形の群の導出は,Viola(1904),Wulff(1909)により早くから着想され,Mikheev(1961),Nalivkin(1951),Dubov(1970),Zabolotnii(1973)によりさらに発展し,いわゆる(homology; групп гомологии)ホモロジー群,(curvilinear symmetry; групп кливолинейной симметрии)群の型となった.これらの群(色群と同型)の導出は,まだ終わっていないとはいえ, E.S.Fedorovによる結晶学的限界(кристллографических пределов)の理論から広がったアフィン変形の概念は,結晶の動的対称性(динамической симметрии)の研究と古典群を動的群の時間平均とする解釈に道を開いた.(локально-аффинных)局所的なアフィン変換のモジュラー群は,幾何学的に非一様な物体(実際の結晶構造)の対称の解析で役立つであろう.
   以上は,最近の対称性理論の進歩のあった主要領域のいくつかを示したに過ぎない.我々のテーマ外にある多数の重要な結果には全く言及しなかった.ここで触れた問題のもっと完全なレビューは,Koptsik(1967), Zamorzaev(1970), Delone(1971)及び、群論とその応用の専門書に見られる.

   達成された具体的結果の豊富さと,現在も増大しつつある対称性理論の自然科学への応用と関連して,その限界に関する問題を提起するのは当を得ている.H.Weyl(1934,1952)により与えられた最も一般的定義によると,対称性理論は,数学及び物理学的対象の自己同型automorphisms автоморфизмовの理論-すなわち,自己変換群групп автоморфных преобразованийの理論と一致する.この基礎には,等価の公理аксиома равенства axiom of equivalenceが有る.これによると,第3のものと等しい2つのものは互いに等価である.或る対象を不変に保存する変換の集合は対称群を成すということの基礎が,ここにある.ここから生じる対称理論の応用の広いことと,その限界を知ることができる.なぜなら,自己同型変換は対象物間の等価эквивалентностиと順序порядкаのすべての関係を尽くしている訳ではないからだ.(この議論に関してはShreider(1971)の本を見よ)
   対称性理論のどのような一般化も,基本的な群公準を保っている;それらは,等価の概念を相対的等価というより広い概念で置きかえる方向に進化する.よく知られた群をその同型あるいは準同型表現,拡大により置き換えて,抽象群の具体化を探し,新しい自己同型を探す方向に進化する.このような探索の科学的価値を評価しながら,既知の対象物で,同値関係や新しい自己同型を見出すことは,より深い構造水準の研究になることを充分に語り尽くした.
   対称性理論の新しい発展は,半群(semigroups)の理論である(参照:レジメ).
対称理論の具体的応用に,最後の章を充てよう.

koptsik-ch12-1

12. 科学と芸術における対称性
保存則.物理系の対称化と非対称化.複合系に対する対称原理.
-完全系構築の法則,構造の法則を研究する手段としての対称性-

   本書を通しここまでに,実に多種多様な物質的形態-有限あるいは無限のもの,空間に周期のあるもの,あるいは連続なもの-の対称性を学習し来たった.幾何学的対象物の構造が複雑になっても,対称変換の基本的要請-図形は変形なしに自分自身上に変換される-は,常に守られていた.直交変換(回転,鏡映)と並進は,図形の計量特性を保存するので,直交群と運動群に注目した.この基本的な要請ー無変形ーは,古典群から反対称や色付対称群へ移行した前章においても,古典群から新しい群への同型写像で,色付空間の構築をしたために破られることはなかった.
   色付対称群への移行は,科学研究と芸術創造における対称性理論の概念と手法の適用可能性を著しく拡大する.考察対象物の計量特性が,変形の過程で保存されるという拘束要請を緩和すると,これらの可能性はさらに増加する.このような要請緩和により,例えば,アフィン,射影,トポロジー的な変形で,保存される図形の特性を,学ぶことが出来るようになる.言い換えれば,相当する変形で変わらない不変量の命題の集合(公理,定理,これらより導出される結果)として,アフィン,射影,トポロジー幾何を構築できる.
   考察中の幾何学空間のすべての点に,色特性量を付与,あるいは,そこでのスカラー,ベクトル,テンソル量の値を定義するなら,このようにして得られた物質空間(あるいは,スカラー,ベクトル,テンソル場)に対する一般化された結合変換の群が定義できる.これらの群を,物質的対象物の対称群と見なすのは自然である.例を一般化し,自分自身の上への写像=自己同型変換の作る最も対称性の高い群を,任意の完全系をなす構造的対象物―相対的に等価な要素で構成されている―の対称群と呼ぶ.このようにして,構造的対象物の構成の法則として,あるいは,もっと正確に,考察中の系の構造的完全さが保存される1:1変換の群として対称性を定義する.
   自然界には構造のない対象物はない.対称性の概念は,相対的に等価な,相互に結合している要素で構成される系に適用される.幾何学的な完全系の等価な要素は,定義された関係で互いに結合している点であったり,直線,平面,表面,図形であったりする.物質的対象物における等価な完全系の要素であるのは,素粒子や反粒子,-電子,陽子,中性子,等々-;位相特性のみが要素相互に異なるこれらの《色》変調;等価な原子,イオン,分子,等々;物理場の力線,等々である.これらの要素は,定義された規則で互いに結合した完全系をなす複合体(系)を形作る.そして,これら複合体はさらに複雑な物質系を構成する要素となる.
   系の不変な様相として現れる対称性カテゴリーの十分な一般化,全体を等価(何らかの関係で)な部分へ分割する原理的な可能性は,現代の自然科学および芸術における対称性概念に対する,かくも広汎な価値を有する.ここでは,物質的対象物のみならず実世界の構造を反映している概念や理論の系の対称性にも言及する.これについては,(Вейль; Weyl) ワイルの著書《シンメトリー》の序文によく記されている:「対称性は,外部とは結び付いていない物体,現象,理論:地磁気,女性のベール,偏光,自然淘汰,群論,不変性と変換,みつばちの巣箱での労働習性,空間の構成,飾瓶の絵柄,量子物理,スカラベコガネムシ,花弁,X線回折図形,ウニの細胞分裂,結晶の平衡外形[訳注:理想形のこと],ロマネスク寺院,雪片,音楽,相対論:の間の面白くも驚嘆すべき類縁関係を確立する」(Нъюмен; Newman, ノイマン,1956).
   対称性概念(つりあいの意)は,古代ギリシャの哲学者,数学者から,彼らの宇宙の調和研究と結び付き発した。調和のカノン(時代とともにその概念は変化した)に従い,古代彫刻家,画家,建築家達は,傑作を創造した.それにもかかわらず,対称性についての学問が,現代科学の形式を備えたのは,群の概念の出現(Галуа; Galois, ガロワ,1832)以降のことである。20世紀の初頭には,結晶の対称性の理論が,対象変換の古典群の形式をとり,最も精緻な発展をとげた(フェドロフ,シェンフリーズ,Федоров,Шенфлис; Fedorov,Schonflies, 1891).結晶学と結晶物理学の発展後に,群論的手法は,物理学全体や他の自然科学に適用されるに至った.対称性の手法は,現代科学の理論的研究の強力で効果的な道具となった.
   対称性手法の応用例として,結晶物理の例をとり,考察しよう.この選択は,対応する群をすでに知っていることと,フェドロフの言葉を借りれば,結晶は,原子分子レベルの物質の構造構成の多種多様性を現し《自己の対称性を閃かせる》ことによる.
結晶について成り立つ内容は,(適当な変形をすれば)対称的な内部構造を有する他の対象物にも拡張することができる.
   結晶の対称性を示す点群または空間群が実験的に決定されたら,そこで可能な物理特性の最小の対称性も決定されたと言える.特に,周知のように,点群 は結晶多面体の理想形(多面体のすべての面に結晶化物質の供給が等しく行われる条件下で,わずかに過飽和の溶液から成長した結晶はこの形)の対称性を記述できる.
   全く同様に,空間群$$Ф_{k}$$は,結晶の内部構造:単位胞中の原子の同価な系の相互配置:を記述する(p.177,192参照).
   結晶学や結晶化学での対称性は,形態的・構造的な分類記述,発生的系統や適当な特徴基準による結晶の分類統合のための基礎を与える.全く同様に物理学では,素粒子,原子分子のスペクトル,基準振動,等々の分類;これらの対称性分類は,対応する構造要素上で許容される何らかの変換群に基づいている.分類の課題は,どの科学分野でも最初の課題であり,構造不変性を見出すことのできる対称性理論は,不可欠な手法である.
   しかし,これが最も重要な側面と言う訳ではない.結晶物理でもっと重要なのは,結晶の対称要素に対し,座標系を一意に関連付けることであり,これにより,一般には測定の方向に依存する物理特性(非スカラー特性)の記述の一意性が確保される.規約(表20,p.176参照)に従い軸を選べば,方位;
$$ r=x_{1}a_{1}+x_{2}a_{2}+x_{3}a_{3} $$ または  $$ [x_{1}:x_{2}:x_{3}]=[p:q:r] $$
に沿って,結晶はこれこれの物理特性を示すと明確に特定できる.種々な結晶面(例えば,劈開面,熱膨張楕円体ellipsoid面,光学屈折率楕円体indicatrix面,等々)も,
$$ hx_{1}+kx_{2}+lx_{3}=1 $$   または  $$ (h k l) $$
により,同様に,明確に特定できる.結晶学のハンドブックには,平面の結晶学的座標$$ (h k l) $$ は,この平面の座標軸に対する切片の逆数となることが示されている.
   このようにして,同一物質の結晶の物理特性の測定は,標準様式で選定した同一の座標のときに比較できる.この要請を満たさない測定は結晶物理学的な価値がない.
   結晶の対称群$$ G_{k} $$ を知れば,(特定な方位に沿っての)物理特性の測定範囲を,対称的に独立な立体角内「訳注:非対称要素」に限定できる.測定方位の選択は,対称図形を,対称的に独立なあるいは対称的に同価な領域に分割する数は,対称群の位数に等しいという理論に基づきなされる.例えば,立方体,六角形プリズムでは,そのような領域は,それぞれ1/48,1/24である(図218).結晶の特性が,対称的に独立な球面三角形の立体角内で測定されれば,この角外の方向での測定は必要がない.これは,異方性(すなわち測定の方向で物理特性が異なる)の記述のために必要な測定の数を,大いに減じる.しかし,まだこれで全てではない.
   結晶の対称群(物理量の対称群に密接に結び付いている)は,各特性を規定する独立な定数の数を決定できる.言いかえれば,結晶の注目した特性を完全に規定するために必要となる(異なる方向の)いくつの測定が必要かを,述べることが出来る.測定の数は,考察中の特性の性質と対応する物理量の変換を支配する法則に依存する.

 

koptsik-ch12-2

 

変換則と物理量の対称性(一様連続体の近似)
反対称と色付き対称の極限群 

   結晶のスカラー特性は,測定の方位によらないので,1つの数により定義される.例えば,均一で一様な結晶の温度・密度は,巨視的なサンプルに比べ十分小さい体積要素であるが,単位胞よりは遥かに大きいような"点" の全てで同一である.
   誘電体結晶(焦電性pyroelectric,強誘電性ferroelectricと呼ばれる)は,その構造に起因する自発分極(外部電場が存在しなくても分極している)を持つ.対称性$$1$$の結晶中の分極ベクトル$$P$$は,3つの独立なパラメータ:$$P_{1}, P_{2}, P_{3}$$で決定される(図219a).対称性$$m$$[z軸に垂直な鏡映面]の結晶では,生じるベクトル$$P$$は,2つの成分$$P_{1}, P_{2}$$で完全に決定される(図219b).成分$$P_{3}=0$$となる訳は,平面$$m$$内にない斜めのベクトルには,鏡映同価なベクトルが必ずあるからである.
軸性[回転]対称類$$2,3,4,6,mm2,3m,4mm$$の結晶では,生じるベクトル$$P$$は,1つのパラメータ$$P_{3}$$で記述される(図219c).$$\overline{1}$$ のように対称心のある結晶類では,焦電性はない;すなわち$$P=0$$である.
   極性ベクトルの変換則$$r'=\left[ D|0 \right] r=Dr$$ を思いだそう(P.204参照).この法則で,$$r$$ を$$P$$ で置き換え:$$P_{i}'=D_{ij}P_{j}$$ と行列形式で書く.例えば,軸性群$$2$$における2回軸$$//X_{3}$$の周りの180°回転を,行列$$D$$のあらわな形式を用い,対称操作の行列積を行うと,以下の結果を得る.
$$\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1}' \\[0mm]
P_{2}' \\[0mm]
P_{3}'
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
-1 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & -1 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 1
\end{array} \right) \left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1} \\[0mm]
P_{2} \\[0mm]
P_{3}
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
-P_{1} \\[0mm]
-P_{2} \\[0mm]
P_{3}
\end{array} \right) $$
軸対称のため,系の180°回転後, 
$$\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1}' \\[0mm]
P_{2}' \\[0mm]
P_{3}'
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1} \\[0mm]
P_{2} \\[0mm]
P_{3}
\end{array} \right) $$ ,すなわち,$$ \left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
P_{1}'=-P_{1}=P_{1}=0 \\[0mm]
P_{2}'=-P_{2}=P_{2}=0 \\[0mm]
P_{3}'=P_{3}=const
\end{array} \right. $$

さらにもう1つ,2階の極性テンソルで記述される特性例:誘電体に誘起される分極現象(図220)を考察する.結晶中の変位ベクトル$$D$$は一般には印加される電場$$E$$方向と一致しない(等方媒質では一致する).これらの極性ベクトルの成分$$D_{i}とE_{j} $$との関係は,
$$D_{i}=\varepsilon _{ij}E_{j}$$  または,$$ \left\{ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
D_{1}=\varepsilon _{11}E_{1}+\varepsilon _{12}E_{2}+\varepsilon _{13}E_{3} \\[0mm]
D_{2}=\varepsilon _{21}E_{1}+\varepsilon _{22}E_{2}+\varepsilon _{23}E_{3} \\[0mm]
D_{3}=\varepsilon _{31}E_{1}+\varepsilon _{32}E_{2}+\varepsilon _{33}E_{3}
\end{array} \right. $$ (1)
係数$$\varepsilon _{ij}$$は,誘電率テンソルの形で,べクトル$$D$$と$$E$$を結び付ける.一般に,要素の対称性$$\varepsilon _{ij}=\varepsilon _{ji}$$ があり,9つではなく6つの独立なパラメータをもつ.
これから先は,テンソル$$\varepsilon _{ij}$$ の行列を,簡単化して,非ゼロの独立なパラメータのみの行か列の形式に書くことにする:
$$\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
\varepsilon _{11} & \varepsilon _{12} & \varepsilon _{13} \\[0mm]
\varepsilon _{12} & \varepsilon _{22} & \varepsilon _{23} \\[0mm]
\varepsilon _{13} & \varepsilon _{23} & \varepsilon _{33}
\end{array} \right) =\left( \varepsilon _{11},\varepsilon _{12},\varepsilon _{13},\varepsilon _{22},\varepsilon _{23},\varepsilon _{33} \right)     $$
$$\varepsilon _{ij}$$を係数とする2次の表面
$$\varepsilon _{11}x_{1}^{2}+\varepsilon _{22}x_{2}^{2}+\varepsilon _{33}x_{3}^{2}+2\varepsilon _{12}x_{1}x_{2}+2\varepsilon _{13}x_{1}x_{3}+2\varepsilon _{23}x_{2}x_{3}=1$$
は,対称テンソルに一意に関係づけられている;この表面は誘電率楕円体(ellipsoid),あるいは一般に,観察される効果の特性を明確にする物理特性の屈折率楕円体(indicatrix)である.結晶の対称群$$G_{k}$$ は,この表面の形(3軸あるいは1軸性の楕円体,あるいは,球)と結晶物理軸 $$X_{1}, X_{2}, X_{3}$$に対する楕円体の主軸$$X_{1}', X_{2}', X_{3}'$$ の方位を決定する.群$$G_{k}$$ は,実験的に決定しなければならない$$\varepsilon _{ij}$$ の独立な数も決定する.これを理解するために,テンソル成分$$\varepsilon _{ij}$$ の変換式を
$$\varepsilon _{i'j'}=\chi (D)D_{i'i}D_{j'j}\varepsilon _{ij}$$        $$i', j', i, j=1,2,3$$             (2) 
と書く,ここで,$$D_{i',i}=\textrm{cos}(X_{i}', X_{i})$$ ,$$\chi (D)$$ は極性テンソルでは+1,右辺の総和は繰り返される$$i,j$$ に対し,1から3で行われる.項の和を取り,6つの未知数を求めるのに9個の方程式の冗長系( 3つの方程式$$\varepsilon _{i'j'}=\varepsilon _{j'i'}$$は,この場合は成立しない;非対称テンソルの一般の場合には,成立しない)を得る.
   読者諸君にこの手順を実行するのを残しておき,上記の等式系の行列を導くのに他の手法を使う-3次元空間の座標変換の直交行列の(自分自身との)直積(p.241).行列$$D$$の自分自身との直積は,
$$D^{2}=\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
D_{11} & D_{12} & D_{13} \\[0mm]
D_{21} & D_{22} & D_{23} \\[0mm]
D_{31} & D_{32} & D_{33}
\end{array} \right) \times \left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
D_{11} & D_{12} & D_{13} \\[0mm]
D_{21} & D_{22} & D_{23} \\[0mm]
D_{31} & D_{32} & D_{33}
\end{array} \right) =\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
D_{11}(D_{ij}) & D_{12}(D_{ij}) & D_{13}(D_{ij}) \\[0mm]
D_{21}(D_{ij}) & D_{22}(D_{ij}) & D_{23}(D_{ij}) \\[0mm]
D_{31}(D_{ij}) & D_{32}(D_{ij}) & D_{33}(D_{ij})
\end{array} \right) $$
ここで,$$(D_{ij})$$は$$3 \times 3$$行列で,例えば
$$D_{23}(D_{ij})=\left( \begin{array}{@{\,} ccc @{\, } }
D_{23}(D_{11}) & D_{23}(D_{12}) & D_{23}(D_{13}) \\[0mm]
D_{23}(D_{21}) & D_{23}(D_{22}) & D_{23}(D_{23}) \\[0mm]
D_{23}(D_{31}) & D_{23}(D_{32}) & D_{23}(D_{33})
\end{array} \right) $$ ,等々.
例えば,$$2 /\!\!/ X_{3}$$軸まわりの180°回転の行列$$D$$($$D_{11}=D_{22}=-1, D_{33}=1$$,残りの行列要素はゼロ)を知れば,テンソル$$\varepsilon _{ij}$$ の空間でのこの回転を記述する$$D^{2}$$を見出せる.すなわち,対称群$$G_{k}=2$$ に対して,変換式$$\varepsilon _{i'j'}=\chi (D)D^{2}\varepsilon _{ij}$$ は以下の形となる:
$$\left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
\varepsilon _{1'1'} \\[0mm]
\varepsilon _{1'2'} \\[0mm]
\varepsilon _{1'3'} \\[0mm]
\varepsilon _{2'1'} \\[0mm]
\varepsilon _{2'2'} \\[0mm]
\varepsilon _{2'3'} \\[0mm]
\varepsilon _{3'1'} \\[0mm]
\varepsilon _{3'2'} \\[0mm]
\varepsilon _{3'3'}
\end{array} \right] =\left[ \begin{array}{@{\,} ccccccccc @{\, } }
1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & -1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 0 & 0 & -1 & 0 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & -1 & 0 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & -1 & 0 \\[0mm]
0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 1
\end{array} \right] \left[ \begin{array}{@{\,} c @{\, } }
\varepsilon _{11} \\[0mm]
\varepsilon _{12} \\[0mm]
\varepsilon _{13} \\[0mm]
\varepsilon _{21} \\[0mm]
\varepsilon _{22} \\[0mm]
\varepsilon _{23} \\[0mm]
\varepsilon _{31} \\[0mm]
\varepsilon _{32} \\[0mm]
\varepsilon _{33}
\end{array} \right] $$

テンソルの置換対称性と結晶の2回対称性を考慮して,$$\varepsilon _{i'j'}=\varepsilon _{ij}$$,
$$\varepsilon _{1'1'}=\varepsilon _{11}$$
$$\varepsilon _{1'2'}=\varepsilon _{12}$$
$$\varepsilon _{1'3'}=-\varepsilon _{13}=\varepsilon _{13}=0$$
$$\varepsilon _{2'1'}=\varepsilon _{21}$$
$$\varepsilon _{2'2'}=\varepsilon _{22}$$
$$\varepsilon _{2'3'}=-\varepsilon _{23}=\varepsilon _{23}=0$$
$$\varepsilon _{3'1'}=-\varepsilon _{31}=\varepsilon _{31}=0$$
$$\varepsilon _{3'2'}=-\varepsilon _{32}=\varepsilon _{32}=0$$
$$\varepsilon _{3'3'}=\varepsilon _{33}$$

行列$$D^{2}$$の4,7,8行,4,7,8列を抜き取り,$$9 \times 9$$行列から,対称テンソルの変換則を完全に記述する$$6 \times 6$$行列に移行する.この行列を2つの行列の対称化積(あるいは対称化平方)と呼び$$D^{(2)}$$と標記する.
   群$$G=\left\{ g_{1},g_{2}, \ldots ,g_{j} \right\} $$ の同形な行列群$$\left\{ D_{1}(g_{1}),D_{2}(g_{2}), \ldots ,D_{j}(g_{j}) \right\} $$ は,行列表現$$G$$ を作る.この表現は,$$3 \times 3$$行列$$D_{j}$$が点の配置の変換のみでなく3次元空間のベクトル成分を変換するので,ベクトル表現と呼ばれる.
   群$$G$$の群$$\left\{ D_{1}^{2}(g_{1}),D_{2}^{2}(g_{2}), \ldots ,D_{j}^{2}(g_{j}) \right\} $$ による表現は,ベクトル表現の平方あるいはテンソル表現と呼ばれる.この術語を用いれば,誘電率テンソル$$\varepsilon _{ij}$$はベクトル表現 $$\left\{ D_{1}(g_{1}),D_{2}(g_{2}), \ldots ,D_{j}(g_{j}) \right\} $$の対称化された平方により変換される.テンソル量の定義自体は,成分の変換を支配する法則を特定すること,すなわち対応するテンソル表現の特定に基づいている.
   各32の結晶群に対する表現$$\left\{ D_{1}^{2}(g_{1}),D_{2}^{2}(g_{2}), \ldots ,D_{j}^{2}(g_{j}) \right\} $$ から,これらの群のどれに対しても,群$$G_{k}=2$$ に対して行ったのと全く同様に,テンソル$$\varepsilon _{ij}$$ の形を決定できる.テンソル$$\varepsilon _{ij}$$ の行列は,成分$$\varepsilon _{ij}$$ が対応する座標 $$x_{i}x_{j}$$の積と同様に変換されることに注目すれば,もっと速く決定できる.この方法を用い,方位$$m \bot X_{3} $$の群$$G_{k}=m $$に対し,テンソル$$\varepsilon _{ij}$$の行列の形を見出すことにする.この平面での鏡映により,座標$$x_{1}, x_{2}$$ は保存され,座標$$x_{3}$$は符号を変える: $$x_{1} \to x_{1}, x_{2} \to x_{2}, x_{3} \to -x_{3} $$
従って,座標の積は以下のように変化する: 
$$x_{1}x_{1} \to x_{1}x_{1}, x_{1}x_{2} \to x_{1}x_{2}, x_{1}x_{3} \to -x_{1}x_{3}, x_{2}x_{1} \to x_{2}x_{1}, x_{2}x_{2} \to x_{2}x_{2} $$
$$x_{2}x_{3} \to -x_{2}x_{3}, x_{3}x_{1} \to -x_{3}x_{1}, x_{3}x_{2} \to -x_{3}x_{2}, x_{3}x_{3} \to x_{3}x_{3} $$
この変換は対称変換であるので,変換の前後で,成分$$\varepsilon _{ij} \leftrightarrow x_{i}x_{j}$$ は等しい.従って,群$$m$$の行列$$\varepsilon _{ij}$$ が,群2に対するものと同じ形となる:$$(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{12}, \varepsilon _{22}, \varepsilon _{33})$$
   以下のリストに,結晶学的な群に対する誘電率テンソルの一般形を与える:
三斜晶系$$G_{k}=1, \overline{1} :(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{12}, \varepsilon _{13}, \varepsilon _{22}, \varepsilon _{23}, \varepsilon _{33})$$
単斜晶系 $$2, m, 2/m  :(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{12}, \varepsilon _{22}, \varepsilon _{33})$$
直方晶系 $$2, 222, mmm :(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{22}, \varepsilon _{33})$$
三方晶系,正方晶系,六方晶系$$:(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{22}=\varepsilon _{11}, \varepsilon _{33})$$
等軸晶系 $$23, m\overline{3}, 432, \overline{4}3m, m\overline{3}m :(\varepsilon _{11}, \varepsilon _{22}=\varepsilon _{11}, \varepsilon _{33}=\varepsilon _{11})$$

全く同様に,軸性ベクトルに対するテンソル不変量(対応する群の変換により変わらない行列)を見出すことが出来る.テンソル成分の変換則で,第1種の変換(回転,並進)に対しては,$$\chi (D)=+1$$ ,第2種の変換(鏡映,反転)に対しては$$\chi (D)=-1$$ とする所が異なる.
   テンソル本来の直方晶対称は,テンソル行列の一般形を保存する直交変換の最も対称性の高い群により決定されるのだが,もとの結晶の対称性よりも高くなる可能性があることに注意しよう.例えば,立方晶系に対し,誘電率楕円体は対称性$$ \infty \infty m$$ の球に縮退する.3方晶系,正方晶系,6方結晶に対しては,1軸性誘電率楕円体は対称性$$ \infty /mmm$$である.残りの結晶に対しては,誘電率楕円体は,対称性 $$mmm$$の3軸性である.これは,楕円体(図220)をprincipal axes主軸$$X_{1}', X_{2}', X_{3}'$$に参照することにより理解出来る:群$$mmm$$ のすべての変換は,テンソル行列$$(\varepsilon '_{11}, \varepsilon '_{22}, \varepsilon '_{33})$$を保存する.さらに低い対称性の結晶系では,結晶物理主軸$$X_{1}, X_{2}, X_{3}$$ に対する楕円体の方位を標示するために,パラメータが(これらの3つ以上に)増える.

   均一なテンソル場の対称群の中で,極限キューリーCurie群(図74)に加えて,反対称と色付対称群のlimiting orthogonal極限直交群に出会う.
   7つの中性と7つの2-色のlimiting antisymmetry極限反対称群が,拡大の理論により得られる:
$$ \infty 1', \infty 221', \infty mm1', \infty /m1', \infty /mmm1', \infty \infty 1', \infty \infty m1',$$
$$ \infty /m', \infty 2'2', \infty m'm', \infty /m'mm, \infty /mm'm', \infty /m'm'm', \infty \infty m' $$
これらの群の具体化としての物質図形は,キュリーCurie群に対するそれらと同じ形を持つ.中性群では,図形の全ての点は中性,2-色群では,2色である(2色は,各点ごとに,混合されたり塗り分けられたりする).反対称の磁気的解釈では,電気,磁気,Poyntingポインティングベクトルは,それぞれ,磁気対称の極限群$$ \infty mm1', \infty /mm'm', \infty /m'mm$$を持つ(図221).反対称の極限群の導出では,読者はShubunikov(1958,1959),Sirotin(1962),Koptsik(1966)による扱いを参照するとよい. 
   この系列に,無限個の色付極限群(colored limiting groups)が存在し:
$$ \infty 1^{(p)}, \infty 221^{(p)}, \infty mm1^{(p)}, \infty /m1^{(p)}, \infty /mmm1^{(p)},$$
$$ \infty \infty 1^{(p)}, \infty \infty m1^{(p)}; $$
$$ \infty ^{( \infty )}, \infty ^{( \infty )}m^{(2)}m^{(2)}, \infty ^{( \infty )}/m, \infty ^{( \infty )}/mm^{(2)}m^{(2)},$$
$$ \infty ^{( \infty )}2^{(2)}2^{(2)}, \infty ^{( \infty )}/m^{(2)}, \infty ^{( \infty )}/m^{(2)}m^{(2)}m^{(2)} $$
$$ \infty ^{( \infty )} \infty ^{( \infty )}, \infty ^{( \infty )} \infty ^{( \infty )}m^{(2)} $$
色付群の具体化となる典型的な図形は,Curieキューリー図形の周りに色調が連続的に変化(虹のように)する色紙を接着すると得られる. 
例えば,単色光線がコーンの頂点からその底面へ通過すると,色は,コーンの回転にともない,自然のスペクトル順に変化する.コーンが回転するなら, 
群の系列$$ \infty ^{( \infty )}(1), \infty ^{( \infty )}(2), \ldots , \infty ^{( \infty )}(n)$$,静止しているコーンには,系列$$ \infty ^{( \infty )}m^{(2)}m^{(2)}(1), \infty ^{( \infty )}m^{(2)}m^{(2)}(2), \ldots , \infty ^{( \infty )}m^{(2)}m^{(2)}(n)$$ を得る
[ここで,(1),(2),(n)は,古典的軸性部分群である;色付コーンの群が,部分群$$n$$を含むなら,1回転で色サイクルは$$n$$回繰り返すことを意味する].
底をシリンダーとし,その周りに色サイクルを一回貼りつけ,群$$ \infty ^{( \infty )}/mm^{(2)}(1)$$ (静止したシリンダー),$$ \infty ^{( \infty )}/m(1)$$ (回転シリンダー)を得る.
色が連続的に,シリンダーを1周(円周に沿い)するのみでなく,すべての生成元に沿い変化するなら,対称性$$ \infty ^{( \infty )}/m^{(2)}m^{(2)}m^{(2)}(1)$$(静止時),$$ \infty ^{( \infty )}/m^{(2)}(1)$$(回転シリンダー),$$ \infty ^{( \infty )}2^{(2)}2^{(2)}(1)$$(ねじれシリンダー)の2回の色シリンダーを得る.
これらの全てで,部分群$$1$$を$$n$$で置き換えると,オリジナルのものから群の無限系列が導びける.色シリンダーの群は,古典的部分群$$nmm,n22$$, あるいは,何らかの性質を保存する部分群の系列に形式化できる.
色極限群の最後の2つは,全点が$$ \infty $$-色で,かつ,中性でない球で具体化される:各点の色は,セクターに沿って分布するか,あるいは,混合されずに層をなして互いに重畳され,同様に群$$ \infty ^{( \infty )}$$ と$$ \infty ^{( \infty )}m^{(2)}m^{(2)}$$ ではコーンのチップに分布する.群$$ \infty ^{( \infty )} \infty ^{( \infty )}$$ では,球の直径は群 $$ \infty ^{( \infty )}2^{(2)}2^{(2)}$$でのように捩れている.一方,群$$ \infty ^{( \infty )} \infty ^{( \infty )}m^{(2)}$$では,捩れがない.極限群の別の解釈では,初期に見たすべての図形でのように,1つの固定色は,一般点のすべてに帰属せしめられる.捩れたシリンダーの対称性は,もっと完全には2回色反対称群により記述される.
$$\displaystyle \frac{ \infty ^{( \infty ) } }{m'^{ \ast } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m'^{ \ast } }\displaystyle \frac{2^{(2) } }{m'^{ \ast } }$$
ここで*星印はシリンダー底部の周囲の順序で,色の順序を変え,′ダッシュは捩れの方向を変える.
   さらに,中性群では,色同一部分群$$1^{( \infty )}$$は冪によって異なることに注意する.具体化に加え,言及したように,古典的なCurieキューリ群,反対称の極限群,Waerden-Burckhardt群,Wittke-Garrido群,およびこれらの許容される積(p.248,256参照)により記述される色図形がある.すべての有限色付き群(結晶学的および非結晶学的の位数の)は,これらの極限群(本書で初めて掲載した)の部分群である.完全構造対象の物理で,極限色付き群は通常の極限直交群よりも役割が低いわけではない.